4話 ギルド
程なくして俺達はギルドへと辿り着いた。
「到着!ここがこの町のギルドだよ!」
「聞いてはいたけどでっかいな〜」
例えるならグラウンド付きの学校といったところか。グラウンド部分は市場に近い。奥に見えるのは倉庫と解体場だろうか。
そして目の前にある校舎部分もこれまた大きい。5、いや6階建てか?周りに見える建物が平屋や精々2階建てなので余計に存在感が増している。
「そりゃ町の中心の一つだし!」
少し自慢気に言うアンナ。
「素材買取所はどっちだ?」
「こっちだよ!」
グラウンドの方を指差しながら歩くアンナの後ろに続く。どうやら奥の倉庫らしき建物が素材買取所のようだ。
町に向かう道中、ギルドについても簡単に教えられた。
冒険者への依頼受け付けや素材の売買、住民向けの役所手続き等をしているそうだ。他にも風呂や服屋、地下には酒場もあるのだとか。商売上手だな。
「オゥ!アンナちゃん!どうした今日は男連れかい?」
「こんばんはクロさん!紹介するね、今日からあたしの弟分になったジン君!んでジン君、この人は魔物素材買取所のクロさん!顔に似合わず良い人だよ」
「『顔に似合わず』は余計だろ!ジンか、オゥ覚えとくぜ!よろしくな!」
「こちらこそよろしく!」
買取所に着くと、猪型の獣人が出迎えくれた。
アンナから聞いていなかったら町に入った瞬間アホ面を晒していたであろう。この世界では一口に『人』と言ってもさまざまな種族がいるらしい。
俺やアンナのような人間種、クロさんのような獣人種、他にもドワーフ種やエルフ種、竜人種等、それぞれの種族でメインの国こそ違うものの特段歪み合いなども無く、こうして共存しているとか。⋯⋯ただ一つの例外、魔人種を除いて。
「んで今日の持ち込みはそこの首無しホーンウルフだけか?」
「うんにゃ」
アンナ背負っていたリュックを下ろし、そこからポンポンと納品物を取り出していく。
「他にもホーンウルフの角と牙、それからシチミ草30本にゴマダケ12本、そして最後にトリフの実っ!!しかも3つ!!」
「ホーンウルフにトリフの実か!こりゃまた大漁だな!!」
「ブロンズクラス、ですから」
「いよっ!稼ぎ頭!!」
これみよがしに髪をかきあげるアンナにそれを持ち上げるクロさん。二人の上機嫌さが伝わってくる。
茶番も終わり、クロさんは納品物に目を通すと、
「よし!状態も良好!そんじゃ計算するぜ、まずシチミ草30本が900ゼニ、ゴマダケ12本が960ゼニ、ホーンウルフの牙が合わせて2,000ゼニ、胴体は諸々ひっくるめて10,000ゼニ、角は⋯⋯これはいいな戦闘傷も無い。よし、20,000にオマケで4,000、合わせて24,000ゼニ!そして最後にトリフの実が3つで18,000ゼニ!合計で55,860ゼニだ!問題無いかい?」
「問題無し!それでお願い!」
「オゥ!」
クロさんは金貨を5枚、銀貨と銅貨は10枚1束にし、6束ずつ机に置く。銀貨の最後だけは少し欠けているが。
金貨が1枚10,000ゼニ、銀貨が1枚100ゼニ、銅貨が1枚1ゼニか。アンナがそれをざらっと小袋に入れると、
「ありがと!またねクロさん!」
「オゥ!ボウズも元気でな!」
「クロさんも元気で!」
俺達は買取所を後にした。
「次はどこに行くんだ?」
「冒険者登録所!の前に〜、まずはジン君の着替え買ってからお風呂かな。はいこれ」
言ってアンナは金貨を1枚、俺に渡す。クロさんの前で渡さなかったのは言うまでもなく気遣いだろう。
「⋯⋯助かる」
「いいっていいって!⋯⋯あ、着いたよ!」
汗や汚れもそうだがなにより血抜きも兼ねてホーンウルフを担いでいた為、服には少なくない血が付いている。風呂には服の洗い場もあるらしいが、そもそもこれは前の世界の物だ。詳しい人間が見れば繊維の細かさに気付くだろう。今は汚れのおかげもあり目立って無いが着続けるのは良くない。
服屋で安物の着替え一式と靴、リュック、財布用の小袋を買い、浴場へ向かう。
「じゃあ30分後ね!」
「了解」
石鹸で身体を洗い、湯船に浸かる。
「あ゛〜〜〜〜〜〜⋯⋯⋯⋯⋯」
身体が溶ける⋯⋯
「あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜⋯⋯⋯⋯⋯」
意識が飛びそうになる⋯⋯
「あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
30分後、風呂場を出るとアンナと目が合った。どうやらアンナもちょうど上がったところらしい。
「お〜ナイスタイミング」
軽鎧を脱ぎ、服装もややラフなものに変わっている。まだ少し湿気の残っている滑らかな長い赤髪は後ろでかるく結ってある。火照りの残った頬と合わさって、とても艶やかだ。
「どうしたの?」
「ん?なんでも。⋯それよりいよいよ本命だな」
「そうね、次こそとうとう⋯⋯」
「「冒険者登録!!」」
「は〜いジン・スミキ君ね〜。冒険者やったことは〜?」
「無い、と思う。」
受付の気怠い口調に若干テンションが下がる。
「おもう〜?ま〜いいやぁ、やってたらわかるし〜。それじゃ〜ここに手ぇ〜かざして〜」
気怠い口調の受付が差し出したのは金属のようなもので作られたプレートだった。縁にはなにやら不思議な紋様が掘ってある。ここに手をかざすのか?
『ヴゥン』
「少しのあいだそのままね〜」
手をかざすと青い光が手を包む。なんだこれは!?驚いていると次第にその光は弱まり、ついには消える。
「はいおっけ〜。初めての登録だね〜。じゃ〜ストーンクラスから〜」
気怠い口調の受付が先端に石の付いたペンダントを渡してきた。石には番号が振ってある。
「それじゃ〜ついでにスキル鑑定もする〜?」
「スキルって?」
「え〜!?スキル知らないの〜!?今までどこで生きてきたの〜!?」
目をまん丸くして驚く受付、これもこの世界の常識だったのか。すかさずアンナがフォローを入れる。
「スキルっていうのは平たく言うと『才能』ね。後から発現する場合もあるけど大抵の場合は生まれつき備わってる」
生まれつき才能がわかるのか。なんとも残酷だな。
「へ〜。みんな何かしら持ってるものなのか?」
「そんな訳ないじゃな〜い、10人に1人くらいよ〜。ちなみにわたしも持ってな〜い」
気怠い口調の受付が口を挟んでくる。
「10人に1人か」
「その中でもさらにピンキリだけどね〜。でど〜お?やる〜?」
「鑑定結果は他の人間にも見えるのか?例えば君とか」
指差された受付は、「ほぅ」と少し感心した顔をした。すぐに意図に感づくとは、気怠そうにしてても優秀なのかもな。
「安心してい〜よ〜。本人にしか見えない仕組みだから〜。けどそんな心配するなんて君やるね〜。うん、冒険者向いてると思うよ〜」
「そりゃどうも」
スキル鑑定した事のあるアンナが横から何も言って来ないということは、本人にしか見えないというのは本当なんだろう。「これ握って〜」と差し出された野球ボール大の球を握る。ボールの表面にはさっきのプレートともまた別の紋様がびっしりと刻み込まれている。
「『スキル』って言えば目の前にスキル名が浮かび上がってくるよ〜。なんにも浮かんでこなかったらスキルが無いってことだね〜」
「ふーん」
「心配だったらそこの隅っこいく〜?」
「別にそこまではしないさ。君を信用するよ」
信用しているのはアンナだが。
「ドキドキだね!」
横にいるアンナもそわそわしている。あまり時間を食っても仕方がないし早速鑑定してみよう。
「んじゃいくぞ、『スキル』!」
『ヴゥゥン⋯⋯』
その言葉を発すると球が青く光り、目の前に文字が浮かんできた。そこに書いてあったのは⋯⋯、
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『スキル』
・言の賢者
→全言語解読可能。また賢者補正により全属性魔法適性大アップ。
・カタログ
→呼べば手元に現れるカタログ。買い物可能。
・倉庫
→物の出し入れができる収納用の倉庫。
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⋯⋯⋯⋯なんじゃこりゃあ。
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