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死神の英雄記  作者: わにわに
第二章 旅立ち

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11話 修行

 自分自身のことながら、違和感は持っていた。

 普段の俺なら実力の伴っていないダンジョンに嬉々として挑もうとするか?2階層で魔物の大群に襲われたときも、それでも目的地に向かおうとするか?ゴーレムにももう少し慎重に挑んでいたのではないか?()()()()()()()()()


 心とは必ずしも精神のみで操れるものでは無い。身体もまた、心のありように大きな影響をもたらしている。

 例として挙げれば思春期。意味も無く感情が溢れ、訳も無く自信と不安が混在し、合理性の無い衝動的な行動もしてしまい後々に何故あのときあんなことを!と後悔する甘酸っぱい時期。

 そんな思春期特有の心の爆発は身体の急激な成長によるホルモンバランスの変化も大きな要因となっている。そしてサッチとの会話で気付かされた、いや自覚出来た、が正しいか。俺の身体は今まさに、()()()()()()()なのだ。


 いざ自覚してみるとこの世界(こっち)に来てからの様々な行動にも妙に納得がいく。年老いた精神が思春期の衝動(リピドー)に翻弄される……悪くない、実に悪くない。

 が、とはいえこのままだと間違い無く遠からず死ぬ。ゴーレムとの戦闘でも一歩間違えたら死んでたしな。理性でもって衝動に手綱をつければいい話ではあるが、自身から湧き出た好奇心を潰せる程俺の理性は強くない。

 ならば解決策は一つ。突発的な好奇心に駆られても死なぬよう、強くなればいいだけだ。


「……ここらでいいか。『取り出し』」


 今いるここは森の中。位置的にはアロナ町の先にあるクアト町とエルフの里の中間あたりだろうか、ダンジョンの近くで修行し万一にでも発見されたら面倒くさそうなので少し離れた。


 森の少し拓けた場所にテントを張り、準備完了。


「さぁ、修行の時間だ!」








 文字通り命を懸けたダンジョン探索、そこで俺が得たものは魔石と素材のみでは無い。

 金にはならぬ、金では買えぬ収穫。あのダンジョンのスケールは俺に気付きをもたらしてくれた。


「『ファイアボール』」


 詠唱と共に掌から放たれた火球、眼前で轟々と燃えている拳大のそれをじっくりと観察する。


 1分、2分、


「……やはりか」


 熱くない。いや、熱自体は感じるが。

 もう夏と言っていい季節、そんな季節に目の前で何分と燃え続けている炎にしては感じる熱が余りにも弱い。

 かと言って内包している熱が弱いかというとそんなこともなく、


「ほっ」


 火球をそこらの木に放る。着弾した火球は10m近い高さの木を瞬く間に炎塊にした。


「『ウォーターレイン』」


 ここから導かれる結論は一つ。

 先程出した火球は()()()()()()()()

 見た目も特性も本物の炎さながら、しかし術者には熱を伝えない便利炎……さしずめ魔力物質、と言ったところか。それが火球の正体だ。

 空間を作り、地形を作り、生物までも作る。魔力とは極めればここまで辿り着けるのかと感嘆したものだが、自分達もまた無意識のうちに似たような事をやっていたのだ。そしてこの発見は魔法を使う上で、果てしなく大きい。なにせ「魔法とはこういうもの」という枷が外れたのだから。

 あとはイメージ次第、どこまで思い込めるかが鍵となる。


「とりあえずこの森でやることをまとめるか」


 スキルの習熟、魔力量の増加、魔力コントロールの修練は従来通りに、新たに生存・戦闘の要となるような新魔法開発にも着手、最低5種は作りたい。

 それと魔力感知の習得も。ゴーレムが俺の魔法に反応すらしなかったのは魔力感知によるものだろう、ゴーレムにも可能であれば俺にも可能な筈だ。そして魔力感知は習得出来れば生存・戦闘の両面において強力なアドバンテージとなる。


「冬までには終わらせたいな」


 やることは山積みだ。しかし同時に未来を想うと口角も上がる。

 逸る気持ちを抑えつつ、先ずは魔力を練っていく。

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