7話 激突!ストーンゴーレム
『岩人形』
その名前は知っている。
何冊か買い、目を通したダンジョン関連の本。その内1冊を除く全てにその名が載っていたからだ。⋯⋯残念なことに姿形も本に載っていた絵にそっくりだ。まず間違い無いだろう。
採掘エリアに稀に現れる、魔石を核とする魔石の番人。
危険度は、A⋯⋯と書かれていたが、この階層にとっては危険度S、いやSSでもおかしくない存在だ。なんせ⋯⋯、
「ったく、聞いてねえぞこんなもん!!」
本に書かれてあったストーンゴーレムの発生域は第4階層〜。そこでも危険度Aを冠する魔物が何故第2階層にいんだよ!!1ヶ月間放置されたことで魔石が熟成でもされたのか!?
⋯⋯魔石に熟成なんてあるのか?
「っとお!?」
思考が逸れ始めた俺を他所に岩の巨人が足を1歩、前に出す。
それだけで、ドズン!!と小さな地鳴りが起こる。
まるで巨大な岩を地面に落としたような⋯⋯ってそのままか。こんなんがいたんじゃ、そりゃあ魔物も近づかない訳だ。
「とりあえず逃げるか!」
巨人が入り口の反対側から出現したのは救いであった。身体は巨人に正対しつつも足に魔力を全力で込め、後方に跳躍する。した。その時、
「⋯⋯ん?」
巨人が付近の岩を両手で掴んだ。俺より遥かに大きな岩、3mはあるだろうか。
そして、
「やべっ!!」
それをこちらにぶん投げた。
どうやらその岩は俺に向けて投げられた訳では無いらしい。岩は俺の頭上を通過し、部屋の入り口に轟音と共に着地した。丁度入り口を塞ぐ形だ。
「⋯⋯見事なコントロールで」
投げられた岩を見て、巨人と戦う決意を固める。
てか閉じ込められちゃったら戦うしかないもんなぁ⋯⋯。背を向けて岩を壊すのを見守ってくれるような優しい奴ならそもそも俺を閉じ込めたりしない。
「とは言え、どうすっかね⋯⋯」
どうするもこうするもカタログに頼るしか無い気はするが。
2階層の魔物ですら苦労したのに、4階層の強敵相手に自力で勝てる見込みなど無いだろう。試すだけ時間の無駄だ。
「でも1回試してみるか。『ウォーターボール』」
どっし、どっしと地鳴り混じりに向かってくるゴーレムの肩部分に、俺は魔法を撃ち込んだ。
ストーンゴーレムは岩同士がくっついて出来ている。が、完全にくっついている訳では無い。人間で言うところの関節部分には小さくない隙間があるのだ。おそらくは関節の代わりに魔力を流して岩を操作しているのだろう。
それならばこうして肩部分にあたる岩と岩の隙間に水を入れ、
「『フリーズ』」
凍らせて隙間を無くせば動きを阻害でき⋯⋯
パキン
駄目だ氷が粉々に割れてしまった。結構な魔力を込めたのだがゴーレムが少し動いただけで粉々に割れてしまった。⋯⋯少し悲しい。
「『カタログ』」
今の出来事を見なかったことにした俺は、気を取り直してあの商品を探しページを捲る。
いい気になるなよストーンゴーレム、本番はここからだ!