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死神の英雄記  作者: わにわに
第一章 異世界
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20話 遠征開始

 遠征当日、サージの町表門には俺も含め32人の冒険者が集まった。キトの森には奇襲対策の為、徒歩で向かう。

 全員いることを確認したエマが、出発の合図を出した。


 集まった冒険者達の中に、ワムの姿は無い。


「ワムは⋯⋯やっぱり来ないのか」


「あいつもコツコツ型だからな。お前のイカれた作戦には付き合いきれないってよ」


 呟く俺に隣のヒューがそう返す。


「そんなにイカれた作戦か?」


「いや、実際面白い作戦だと思うぜ。エマもメアリーもジェシカもサンドラも、そう思ったから乗ったんだ。イカれてるのは、あんな作戦を思いつくお前の頭の中だな」


「⋯⋯褒め言葉として受け取っておくよ」


「あぁ、最上級の褒め言葉だ」


 ニヤと笑い、ヒューは隊列の先頭に移動した。俺も最後尾に移り、エマ達と作戦の打ち合わせをしながらシアン平原へと進む。







「⋯⋯ひどいねこりゃ」


 2時間後、シアン平原に到着した俺達を待っていたのは、凄惨な光景だった。

 ゴブリンによって燃やされたキャンプ、その残骸の上には辛うじて原型を留めている冒険者の死体が5つ置いてある。おそらくゲイル達だろう。

 ヒューの合図で隊は1度足を止め、全員で黙祷を捧げる。


「よし、進むぞ!ちゃんとした供養は敵討ちが終わってからだ!」


 ヒューの言葉に隊は、心が通じ合ったかのように、オウ!と同調した。目の前の死体を見て皆感じるところがあったのだろう。あの弄ばれたかのような死体を見て、誰一人として弱気にならないのは流石精鋭冒険者達と言ったところか。

 森の200m手前に到着したところで、皆で今回の拠点になるキャンプを張る。キャンプとはいえ簡易的なものだ。20分程で完成した。


「補給班5名はここで待機、残りは早速キトの森へ向かうぞ!第一の目的はゴブリンの駆除じゃない、罠の発見、そして解除だ!忘れるなよ!」


 そう叫びながらキトの森へ突入するヒュー達28名。俺達()()()はそれを見送った後、しばしの休憩へと入る。


「ヒュー気合い入ってたね〜」


「いつもは余裕そうにしてるのに今日はこんな顔してたね!こんな!」


 ヒューの顔真似をして(おど)けるジェシカ。女子のノリだな。

 話を合わせてもいいのだが、今回ヒューには損な役回りをさせている。フォローくらいはしてやらないと可哀想だ。


()()()()()を知ってるのはあの中でヒューだけだからな。演技しながら27人をまとめなきゃいけない、そりゃあ力も入るさ」


「うわジンくんヒューに優しい〜!こんな危険な作戦考える人とは思えな〜い!」


「からかうのはやめなよジェシー、ジン困ってるじゃん」


「え〜ドラもジンくんの味方〜?」


「当たり前でしょ、ジン若いし顔いいもん」


「うわ、出たよドラのイケメン好き」


 補給班には俺とエマ、メアリーの他に、今回追加で入ったジェシカとサンドラがいる。

 ジェシカとサンドラは双子らしい。シルバー級の26歳だ。しかし童顔に小柄な体躯も相まって、見た目には10代に見える。ジェシカは赤の、サンドラは青のリボンをそれぞれ着けているのだが、それがまたブロンドの髪に良く似合い、まるで人形のようだ。


 若く見え、腕も立つ。今回の作戦にはぴったりだ。ぴったりなのだが⋯⋯、


「暇だからジンくんなんか面白いことやって〜」


「ジン、終わったら1杯どお?奢るからさ」


 ⋯⋯性格に難ありだな。








 ―――――一方(いっぽう)その頃、キトの森探索班。


「罠発見!」


「よし、4人チームになって解除にあたれ。2人が解除、2人が奇襲警戒な」


「了解!」


 ヒューの指示に従い、冒険者達は着々と罠の解除を進めている。


「しっかし罠だらけだな。ちっとも前に進まねえ。⋯⋯なぁヒュー、安全策とはいえ、ここまで徹底する必要があるのか?」


 前に進むことより罠の解除と奇襲警戒を優先した結果、牛歩のようになっている進軍速度。そのじれったさに、冒険者の一人が愚痴をこぼす。


「まぁ気持ちは分かるけどな、ゆっくりいこうや。ゲイル達が殺されたせいで、上から全員生還を何よりも優先するようにって言われてるんだよ。それに、ゴブリン達を駆除した後も森は使うしな」


「⋯⋯しょうがねえけどよ、この調子じゃ何日かかることやら⋯⋯」


「さすがに森全体にここまでの罠は張れねぇだろ。それに罠解除の手際も良くなってきてる、進みは速くなる筈さ」


「9時方向ゴブリン発見!!」


 急に飛び込んで来た知らせにヒューがその方向を見ると、遠くに偵察らしきゴブリンが2匹見えた。発見した冒険者を含めた数人が矢を射るも、残念ながらそれは当たらず、ゴブリンは闇の中に姿をくらませてしまう。


「追うか!?」


「追うな!!」


「でもむざむざ群れに報告させていいのか!?」


「報告されたところで奴等に出来る事も俺達のやり方も変わらねぇよ。いいか、焦るな。俺達のすべきことは、一歩ずつ、確実に、堅実に奴等を追い詰める事だ」


 ヒューらしからぬ発言に、ヒューの人となりを知っている冒険者達は驚きを(あら)わにする。


「ヒューお前⋯⋯変わったな」


「こっちは30人近くの命を預かってんだ。変わらなきゃ駄目だろうよ」


 本当はただの受け売りだがな。ヒューは内心そう呟き、探索の再開を皆に促す。


「ゆっくりいこうや。ゆっくり、な」

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