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死神の英雄記  作者: わにわに
第一章 異世界
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12話 聴取

 ゴブリンの死体を担いでキャンプに戻りはじめたところで、他の冒険者達が駆けつけてきた。


「凄い悲鳴が聞こえたぞ!大丈夫か!?ってゴブリン!?」


「あぁ、襲われた。返り討ちにしたけどね」


「魔法を使った形跡も無い⋯⋯お前よく倒せたなぁ」


 口調から察するに、やはりゴブリンは近距離戦では厳しい相手なのだろう。これを機にレザー級に上がれないものか⋯⋯後で一度聞いてみるか。


「と、とりあえず俺達はダッシュでキャンプに報告するから!ガーゼもなるべく急いで来いよ!」


 気弱そうな冒険者はそう言うと、まるで逃げるかのようにキャンプへ走る。他もほとんどはそいつの後に続き、2人だけが俺の側に残った。


「⋯⋯あいつ等なんであんな慌ててんだ?もう死んでんのに」


「ばっかお前!ゴブリンの仲間が襲ってきたらどうすんだよ!」


「あぁそういうことか。⋯⋯お前等は付いてかなくていいのか?」


「ばっかお前!冒険者仲間を見捨てていけっかよ!」


「そっちも?」


「そんなとこだ。⋯⋯ゴブリンと一度手合わせしてみたいってのもある」


「ばっかお前!物騒なこと言ってんじゃねーよ!俺は逃げるぞ!ゴブリンが出てきたら!」


「護ってくれんじゃないのかよ」


 ツッコミこそ入れたが、なるほどこの2人は根性があるようだ。名前を聞いて損はないだろう。


「クロックだ!ガーゼ神お前は?」


「ガーゼ神はやめろ。ジンだ、よろしく」


「バーガンだ、よろしくガーゼ神」


「怒るぞ?」


 ツンツン頭がクロック、無骨なマッチョがバーガンか。よし覚えた、機会があれば一度飯でも誘ってみるか。







 キャンプに戻ると、ガジを筆頭にシアン平原にいた冒険者全員がキャンプの前に集合していた。ガジが話しかけてくる。


「それがゴブリンか、どれちょっと見せてみろ。⋯⋯綺麗に殺したな」


「楽に倒せた訳じゃないけどね、紙一重だった」


 これは謙遜では無い。もしゴブリンのリーチがもう少し長ければ、もしくはゴブリンの知能がもう少し高ければ⋯⋯()()を使うしか無くなっていた。


「だろうな、剣だけでゴブリンを楽に倒せる奴なんてアイアン級にもいねーよ。しかしゴブリンか⋯⋯面倒なことになったな」


「そんな大事になるほどの魔物なのか?」


「シアン平原にとってはな。⋯⋯とりあえず馬車の手配はしてあるから、全員で町に帰るぞ。詳しい事情は馬車の中で話す」


「わかった」



 馬車乗り場には既に3台の馬車が到着していた。シアン平原関係者は全部で13人、新たに護衛として乗ってきた冒険者が2人、人数に対し馬車が余ったので、3台目の馬車は俺とガジの貸し切りとなった。


「町に着いたら俺と一緒にギルドへ報告しに行くぞ」


「それはいいが、その前に詳しい事情とやらを話してくれ」


「ああ⋯⋯ゴブリンはな、一匹一匹は大したこと無い。つっても新人じゃ普通は太刀打ち出来ない魔物ではあるけどな⋯⋯改めて、よくやったジン」


「ありがとう」


「で、続きだ。一匹一匹は大したこと無いゴブリンだが、あいつ等は魔物には珍しく、群れで行動するんだ」


「群れ?」


「あぁ、人間みたく集落めいたものを作り、そこを拠点に行動する。見た目とは裏腹に知能が高いんだよ奴等は」


 そういえば俺が殺したゴブリンも、ボスに怒られるとか言っていたな。


「群れで行動するとなると、危険度も変わってくる。1人の冒険者に対し、チームで襲ってくるからだ」


「なるほど、確かにチームで襲われてたら結果は逆だったろうな⋯⋯そう考えるとゾッとするね」


 ()()を使えばそれでも対処は出来たであろうが。


「そういう事だ。残念だが、()()()()()()()()()()()は、ゴブリンの駆除が完了するまでは閉鎖だろうな」


「新人にとっては辛いな」


「しょうがない。命あっての物種だ」




 町に到着すると、数名のギルド職員が俺達を迎えに来ていた。

 その中には冒険者手続きのときに見た、気怠い口調の受付もいる。⋯⋯目が合うなり手を振ってきたが、無視する。


「なんで無視するのさ〜!」


「まだそこまでの仲じゃ無いからな。会うのすら2度目だろ」


「うっわ相変わらずケチだね〜」


「いいから持ち場に戻れよ」


 俺が言うと、気怠い口調の受付はニヤリと笑う。


「ここがわたしの持ち場だよ〜!」


「⋯⋯は?」


「改めまして。イース大陸、ギルド本部所属のエマ・メインズと申します。本件はサージの町周辺で起きたものなので、本来であればサージ町所属の職員のみでの解決が妥当ではあります。が、私は本件を重く受け止め、例外措置ではありますが、本件の総責任者として携わる運びとなりました。ってなわけでよろしくぅ!」


 ウインクしてきやがった。⋯⋯だっる。










 俺はエマ同伴の下、ギルド4階へと向かう。

 他の関係者は別の場所で事情聴取されるらしい。


「まさか、あんたがお偉いさんだったとはな」


「お偉いさんって程でも無いよ〜、ギルド職員としてはまだ新人みたいなもんだし〜。そんなことよりジン君凄いね〜!」


 歩きながらゴブリンの死体を眺めるエマ。行儀悪いな。


「たまたまタイミングが合っただけだよ。一歩間違えば俺が死んでた」


「いやそうじゃなくて〜、もちろん倒したのも凄いけどさ?そんなことよりここよここ〜!」


 心臓の刺し傷を指差し、興奮するエマ。物騒な奴だな。


「これって刺した後捻ってるよね?この一手間で傷が広がるから、致命傷になる確率もぐんと上がるんだけどさ〜⋯⋯普通新人じゃそこまで気が回らないよ?特に突然の戦闘じゃ!」


「⋯⋯何が言いたい?」


「褒めてんのにそんな疑わないでよ〜!⋯⋯まぁジン君が()()()()()()()()()()気にはなるけど〜、別にそこ深堀りする気もないし〜。だから単純に褒めてんのこれは〜!」


「ふぅん」


「うわ信じてなさそ〜、もっと仲良くなろうよ〜!」


 仲良く、と言われてもなぁ。怪しさしかない。⋯⋯ぶつけてみるか。


「俺からしたらエマがなんでそんなに仲良くなりたがってるのかが謎でしかないからな。今回の件だってゴブリンを倒したのが俺だとわかったから手を挙げたんだろ?」


「えへ、バレちゃった〜?」


「そりゃバレるだろ⋯⋯」


「まぁそのあたりも含めて、4階についたら腹割って話しましょうや〜!」


「そっちが腹割ってくれたらね」




 ギルドの表には、また別の職員がいた。エマは、「はい、これ」と、その職員にゴブリンの死体を渡し、そのまま2人で4階へと上がる。


「もうゴブリンは見なくていいのか?」


「ゴブリン持ったまま4階に上がるのもちょっとね〜。なんか臭い移りそうだし⋯⋯」


「俺の服も汚いけど、それはいいのか?」


「仲良くなりたい人に対して、「ちょっと君汚いよ」とか言える訳ないじゃん〜」


 汚いのは否定しないのか。


 4階に着く。俺の聴取部屋は奥の方にあるらしい。

 エマが扉を開けると、そこは豪勢な応接間だった。アンティークな置物や絵画が、品を漂わせている。

 ⋯⋯確かに、こんな部屋にゴブリンの死体は似合わないな。


「いい部屋だな」


「ジン君は功労者だからね〜。新人冒険者でここに入れるなんて中々無いことだから、味わった方がいいよ〜」


「職権濫用は?」


「ちょっとだけ」


 してんのかい。


 ゆったりとした椅子に腰掛け、先ずは聴取から入る。

 ゴブリンと出会った経緯、戦闘の模様、前後の森の様子等、出来るだけ細かく伝えた。クロックとバーガンが俺を護衛した事も含めて。


「ふむふむ、なる程〜。はい、よく分かりました〜!」


「本当に分かったのか?」


「失礼な〜!今の話である程度状況は掴めました〜!」


「例えば?」


「今回のゴブリンはまず間違いなく群れで動いてるね。野良のゴブリンってのもいるんだけど、野良ゴブリンなら自分の命が一番だから、無駄な戦闘は避けて森に逃げる。襲ってきたってことは、守らなきゃいけない群れがある証拠だね。そしてその群れも、仲間が殺された事に気付いたね。群れゴブリンは拠点からある程度離れる場合、絶対に1匹じゃ行動しないから。拠点はジン君が会敵した場所の近くにあったと推測できる。それならゴブリンの悲鳴に気付いたと考えるのが自然。今頃慌てて拠点移動、それと罠の準備にとりかかってるんじゃないかな」


「へぇ、凄いな」


 やはり優秀は優秀なのか。


「仲良くしたくなった〜?」


「それはならない」


「ケチ〜!⋯⋯じゃあ仲良くなる為に、本題に入りますか〜」


 本題は聴取だろ。


「ジン君と仲良くしたい理由だよね〜、それはね〜⋯⋯」


「それは?」


「ジン君が期待のルーキーだからだよ!今から唾つけときゃジン君が大物になったときにさ、「わたしが育てました!」って言えるじゃ〜ん?そしたらわたしの株も上がるってわけ〜!」


 あっけらかんと言うエマ。嘘はついていない様だが⋯⋯うんこみたいな理由だ。少しくらい誤魔化せよ。


「⋯⋯だから本部の人間の癖に冒険者登録受付なんてやってたのか」


「そゆこと〜!そしたらスキル持ち、性格も冒険者向きなルーキーが現れてさ〜、名前覚えとこ〜ってしてたら、2日後にはガーゼ草めっちゃ採る新人が現れた!ってギルドでも話題になってて〜、その2日後にはゴブリンをソロ討伐!こんなん仲良くしたくなるよね〜!」


 ⋯⋯隠さないクズさに頭を抱える。が、エマは利用できる人間であることも確かだ。なにせ本人がそれをアピールしているのだから。


「⋯⋯なぁエマ」


「な〜に?期待のルーキー」


「自分が唾つけた期待のルーキー、大物ルーキーにする気は無いか?」


 首元の冒険者タグを見せ、エマに言う。


「レザー級に上げてくれ。ゴブリンを剣のみで討伐、実績としては悪くない筈だ」

口語では基本敬語は使わない、けど仕事上では丁寧語として使うこともある。

そんな世界と捉えて下さいお願いします。




作品を読んで下さり、ありがとうございます!!



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