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死神の英雄記  作者: わにわに
第一章 異世界
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10話 談笑

 帰りの馬車の中、クリスが叫ぶ。


「ジン、お前の正体はガーゼ草の精霊だ!!」


「しつこいなぁ、なんで精霊が自分の宿り先の草を摘むんだよ」


「じゃあジン、お前の正体はガーゼ草摘みの精霊だ!!」


「なんで頑なに精霊なんだよ、せめて人にしてくれよ」


 どうやら俺は初の採取でガーゼ草の1日での採取記録を大幅に更新してしまったらしい。

 新人しかやらない仕事を採取経験者がやったのだ、種を明かせば当たり前の結果なのだが、それを知らないクリスの興奮は未だ尚冷めやらない。面倒くさい。


 ⋯⋯アイアン級、ブロンズ級へのランクの上げ方、アンナの歳でブロンズ級になるにはどういう経緯を辿ったのか、討伐依頼に書いてあったモンスターの強さ、特徴やダンジョンには行った事があるか等、馬車の中で聞きたい事は山程あったのだが、とても聞ける雰囲気では無くなってしまった。


 こうならないよう30本程集めて終わろうかとも思いはしたが、ランクを上げるのに最適な方法は実績を積むことだろう。ランクの上げ方を聞く為にランクが上がらないよう動くというのも本末転倒だ。

 素材買取所に着くまで実績を聞かれないよう祈りはしたのだが、その賭けにはあっさり負けた。





「なんだぁその量!?!?!?見た事ねぇぞ!?!?」


 素材買取所のクロさんから同じようなリアクションをもらう。




「87本ー!?!?!?なにそれどうやったのジン君!?!?」


 酒場で先に着いていたアンナからも同じようなリアクションをもらう。




「大した事じゃないよ」


「「大した事だよ!!!!」」


 2人から同じリアクションをもらう。⋯⋯もういいだろ。








「ところでアンナは今日なにやってたの?」


「今日はねー、ジメノ湿原ってとこでキックフロッグって魔物の討伐依頼があったから受けてきた」


「キックフロッグかー、あいつらすばしっこいから大変だったろ」


「ゲイルさんとかとチーム組んでの討伐だったからそうでもなかったよ。やっぱシルバー級は違うね〜」


 知らない言葉がポンポン出てくる。


「報酬は?」


「ふふ〜ん、5匹討伐でなんと1人30000ゼニ!」


「かぁ〜っ!やっぱジメノ湿原は違うなー!」


 ガーゼ草採取はあれだけ騒がれても金額としてはキャンペーンを駆使してようやく8700ゼニ、一方討伐依頼はポンと30000ゼニか。安全な所でいくら頑張っても、所詮は誰にでも出来る仕事ということだ。


「そんな美味いなら俺も行ってみたいな」


「ジン君はまだ無理だよ〜。危険な場所だから1歩間違えば死ぬし、そもそもストーン級だから入れない」


「そうだぞ!俺ですらまだ数回しか入ったこと無いんだから!」


 やはりストーン級というのがネックだ。この知らない世界、どれだけ好奇心を揺さぶられてもストーン級であるうちは行ける場所が極端に限られてしまう。どうにかしてさっさとアイアン級には上げないとな。

 そしてランクを上げるためにも、当然上げた先で死なない為にも、俺にとって今必要なのは⋯⋯


「にしても87本ってほんと一体どうやったの??あたしの最高記録が45本だよ?ほぼ倍じゃん!」


「そうだぜ!どうやったんだよ!?俺にも方法教えてくれよ!」


「方法ったってなぁ⋯⋯下を向いて歩いてるとたまに違和感を感じるんだ、そこを探せば大体ガーゼ草がある。それだけだよ」


「ほらやっぱジンはガーゼ草の精霊だ!!」


「だから人間だって⋯⋯てかクリス声が大きい、もう酔ってんのか?」


「酔いが早いのは心を許した証拠だ!喜べジン!!」


 アンナがいるから気が大きくなってるだけだろ、と呆れながらアンナを見ると、その目が優しいものになっていることに気づく。

 俺とクリスが仲良くなったことが嬉しいのだろう。やはりアンナは良い奴だ。


「ん?なあにジン君?」


「いや⋯⋯ガーゼ草のキャンペーンって明日もやってるかな?」


「キャンペーンが始まったら1週間はやると思うよ」


「そりゃいい、キャンペーンのうちに採れるだけ採るか」


「ねぇ、明日はあたしも付いてっていい!?」


「もちろん」


「やったー!」


「俺も!ジンのやり方盗んでやる!!」


「盗めるもんならね。で、アンナ⋯⋯ガーゼ草のキャンペーンが終わったら、魔法の特訓しないか?」


 そう、今の俺に必要なのは魔法だ。


「そうだね!賛成!クリスも来る?」


「え?⋯⋯いや、俺はいいや。魔法は⋯⋯苦手だ」


 魔法の話題になった途端、あれだけ大きかったクリスの声がか細くなる。よっぽど苦手なのか。


「もー!そんなんじゃいつまでたってもブロンズ級になれないよ?」


「魔法が使えなくてもブロンズにはなれらぁ!」


「シルバーは?」


「うっ⋯⋯ブロンズ級になれたら魔法の練習も始めるよ⋯」


「レザー級のときもそう言ってたけど結局やってないじゃん」


「それは⋯⋯その⋯⋯⋯」


 クリスの口がとうとう塞がる。⋯⋯アンナってクリスに対しては結構厳しいよな。


「なぁクリス、なんでそこまで魔法を覚えたがらないんだ?使えた方が絶対便利じゃん」


 身につけていなくてもわかる、魔法を使えるかどうかでやれる事の幅は相当変わってくるだろうに。


「⋯⋯俺も最初は頑張ってたさ、けど、その⋯感覚ってのがどれだけ時間かけても全くわかんねぇんだ。そのうち嫌んなってよ⋯⋯」


「我流でやろうとするからじゃん。フレディ先生んとこ行きなよ」


「あの人怖ぇもん⋯⋯」


「確かに厳しいけど、クリスがふざけるから余計怒られるんだよ?」


「ふざけてねぇって、ちょっと飽きてきたところを目ざとく見つけるんだよあの人は」


 やんちゃ坊主みたいな言い訳だな。実際似たようなものだろうが。


「今度の特訓もその先生の所に行くのか?」


「そのつもりだよ」


「げぇ〜⋯⋯⋯⋯改めて俺はパスで」



 その後は料理に舌鼓を打ちながら明日の集合時間等を決め、しばらくの後解散となった。








 宿に帰るとモフレズさんが迎えてくれた。


「ジンか、仕事はどうだった?」


「順調だったよ」


 金にも少し余裕ができたので、モフレズさんに3日分の宿代1500ゼニを渡す。


「順調なのはいい事だ。だが命も大切にな」


「あぁ、肝に銘じとく」




 ドアを閉め、早速スキルの特訓を行う。昨日はやりすぎて寝不足になったからな、今日は短めに。


 先ずはリュックから朝に買った短剣を取り出す。

 その短剣を手に持ったまま、


「『倉庫』」


 そう唱えると手の中にあった短剣が瞬時に消える。

 次は目の前の空間に意識を集中させ、


「『取り出し』」


 唱えるとそこから短剣が落ちてきた。短剣はそのまま地面に落ち、「カラン」と乾いた音を立てる。


「ふぅ、まだまだだな」


『言の賢者』と『カタログ』。この2つはスキルとしての形が完成されすぎていて俺の関与できる余地はおそらく無い。それに対し、『倉庫』は少し違うようだ。出来ることは出し入れだけだが、その方法にはある程度自由がきく。


 特に重要なのは『取り出し』だな。入れるときは触ってなくてはいけないが、出すときは少し離れた場所にも出せるようだ。

 限界は1.5m先くらいか?しかし⋯⋯


「いちいち集中しなきゃいけない様じゃ実践では使い物にならない。瞬時に取り出せるようになるには練習あるのみ、か」



 倉庫、取り出し、倉庫、取り出し、倉庫、取り出し、倉庫、取り出し⋯⋯


 暫く練習を重ね、最後にカタログに目を通した後、今日は早めの眠りについた。

作品を読んで下さり、ありがとうございます!!



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