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第6話 幼馴染みと一緒に帰る時間が増え、彼女に次第に惹かれていく。俺の気持ちは……。

 

 俺は小百合と一緒に高校から帰る日々が続いていた。

 小百合に声をかけていた柄の悪い連中の姿を最近は見かけなくなっている。


 あの連中に角田がいたら平気でいられなかったろうけど、幸い姿を見ることはなかった。

 絵里がいるのに声をかけているとしたら、相当なクズだろう。

 さすがに、それはないようだ。



「あいつら、もうすっかりいなくなったな」


「うん。もう安心して一人で帰れるね。光くん、ありがとう」


「いやいや、一緒に帰ってるだけで何もしてないけどな。それに、まだ安心しない方がいいと思う」


「そうかな?」



 俺は小百合と一緒に帰るのが日課になってから、毎日が楽しくなった。

 歩く距離が多少増えたけど、それ以上に小百合と話すと元気が出る。

 だから、この関係が終わるのが惜しいと感じて始めていた。


 元カノの絵里が刺激を与えてくれる存在だとしたら、幼馴染みの小百合は癒やしを与えてくれる。

 今の俺は彼女の懐かしくも優しい声に癒やされていた。


 だったら、俺が言うべきことは——。



「もし小百合さえ良かったら、これからも一緒に帰らないか?」


「え……光くん私のために無理してない? 私は大丈夫」


「無理なんてしてない。俺は小百合と一緒に帰りたい」



 断られる気はしなかったけど、それでもちょっとだけ緊張する。

 遠慮なんかしないで欲しいけど。


 しばらく俯いていた小百合が顔を上げる。

 少し瞳が潤んでいるけど、大丈夫かな……。



「……じゃあ、これからもお願いできたら嬉しい、かな?」



 小百合は頬を染め、俺を見て言った。


 よかった。

 いい返事が貰えて。

 こうやって頼ってくれたことが今までなかったから、なおさら嬉しい。



「じゃあとりあえず、小百合に彼氏ができるまでで」



 そう言うと、ちょっとむっとした顔になる小百合。

 しまった。余計な一言だったか?



「もう。それより、光くんに彼女ができる方が早いよ」


「そうか? 俺は全然だよ。小百合は時々告白されてるって噂聞いてるぞ?」


「時々って事はないけど……断ってる。たぶん……ううん、私には……好きな人がいるから」



 一瞬、胸がズキッとした。

 好きな人……誰だろう。

 少しだけ嫉妬してしまう。



「好きな人か。そいつは幸せ者だ」


「えっ? もう……光くん……」



 何か抗議しつつも、力がない小百合の口調。

 何を言いたいのか分からない。



「な、なんだよ?」


「なんでもない」



 でも、以前は気付かなかったろう、小百合の気持ち。

 辛い恋愛の経験が、気付きを与えてくれる。


 小百合はもしかして……俺のことを気にしてくれている?

 俺は小百合のことを考える時間がどんどん多くなっていった。



「それでね……光君。ちゃんと聞いてる?」



 再会した時より小百合はよく話し、よく笑うようになっていた。

 疎遠になっていたのが嘘みたいだ。

 俺は小百合と話すことが楽しく、このままずっと一緒にいたいと思ってしまう。



 だいたい、俺は絵里と別れて半年も経っていない。

 実は俺が惚れっぽくて節操ない男だとしたら?

 そんな浮ついた気持ちだとしたら、小百合に失礼だと思う。

 思うのだが……。


 小百合が誰か他の男とつきあうというのも今一つ想像がつかない。

 俺は、小百合の好きな相手を知りたくなった。



「なあ、小百合の好きな人って——」



 誰? と聞こうとしたところ、俺たちに話しかけてくる男がいた。



「おっ、細川じゃないか?」



 声をかけてきたのは、俺と同じ三年でバスケ部キャプテンだった山本だ。



「おう、久しぶり」

「ふぅん。最近細川が明るくなってきたって聞いていたけど、なるほど、千石さんのおかげか」



 山本は小百合と同じクラスだ。



「うん、小百合のおかげかな」


「ちょっと心配してて、一人にしておこうと話しかけないようにしてたんだが、もう大丈夫そうで何より」


「そうか、俺は心配かけてたのか」


「当たり前だ。細川が振られてから見てられなかったわ。あまりに酷くなるようなら、さすがに声をかけただろうけど」



 そうだったのか。

 引退してからはあまり話しかけられないと思っていたが、山本だけは俺を気遣ってくれていたんだな。



「千石さん、こいつ最近鼻歌まで歌ってるらしいぞ?」


「なっ。山本、それは言うな——」



 小百合の前ではそんな姿見せないようにしていたのに。

 山本のヤツ……。



「そうなの? そういえば子供の頃もよく歌ってたよね?」



 くっ。小百合もかよ。



「マジで? 笑えるわ。それに子供の頃ねぇ。もしかして細川と千石さんって幼馴染みとか?」


「ああ。そうなるな」



 山本は、最近女子生徒にちょっかいをかけてくる奴らがいるらしいと教えてくれた。

 まあ、この前小百合に手を出そうとしてた奴らだよな。



「まあ、オレの親が警察関係者の知り合いの親にコネがあるから、何か事件でもあったら相談に乗るし頼ってくれ」


「それってほとんど他人だろ?」


「うっ。そうだな……まあ、でも……お前ら……」



 山本は俺と小百合の顔を交互に見た。



「ちょっと悔しいけどお似合いだよ。これからも仲良くなー」



 山本は風のように素早く手を振って去ってしまった。

 帰る方向同じだったはず。

 一緒に帰ればいいのに。



「山本君っていい人だよね」



 小百合はすこし笑って、楽しそうに話す。



「伊達にキャプテンをやってたわけじゃないよな」


「クラスでもまとめ役してて……結構人気なんだよね」



 うーん、もしかして小百合の好きな人って山本なのか?

 確かにアイツが小百合の彼氏になるのなら、納得できるかもしれない。

 でも、モヤモヤするな……。


 さっきしかけた話を聞こうにも、タイミングを外したような気がする。

 また明日にでも聞いてみるか。

 そう思ったのだが——。



「今日もありがとう」


「うん。じゃあ、また明日——」


「あのね、もう私は大丈夫だから、明日からは、もう……一人で帰れる。

 もう、一緒に帰らなくても大丈夫だよ」


「えっ?」


「今までありがとう」



 小百合の家まで着いたとき、急に彼女は(うつむ)いて言った。

 もう、終わりなのか?


 小百合がそう言うのなら従うべきだろうか?

 でも……本当にそれでいいのか?



【作者からのお願い】


この小説を読んで


「主人公ヘタレんなよ」


「続きが気になる!」


「この先どうなるの!?」


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【NTRタイムリープ】幼馴染みを寝取られ俺は死んだ。でも、時間がまき戻ったので全てをやり直す。〜今さら奪おうとしてももう遅い

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