最終話 変わること、変わらないこと
——季節は流れ、次の春。
冬を越え、暖かな陽差しが窓の外から差し込んでいる。
「よし、荷物はこれだけか?」
「うん」
俺と小百合は部屋に並ぶダンボール箱の山の前にいた。
入学が決まった大学近くの部屋に、俺と小百合は引っ越したのだ。
「これから夢の大学生活だね」
「うん……本当に夢みたい。光くん頑張ってたよね」
少しハードルは高かったけど小百合が勉強を手伝ってくれたおかげで、無事俺も同じ大学に入学できた。
俺は過酷な日々を思い出し、身震いをする。
「小百合があんなに鬼だとは思わなかった」
「そ、ソウカナ……ごめんね?」
「いや、ありがとう。おかげでこうやって一緒にいられるのだし」
「うん!
というか、もう追い越されそうだから、これからは光君が教えて?」
「ううん、二人でがんばろう」
小百合を見つめると、相変わらず頬を染めて俯く。
この様子は、小百合と再会した頃からまったく変わらない。
「これからも一緒にいられるんだよね?」
「もちろん。ずっと一緒だ」
俺は小百合を抱きよせ、キスをする。
「光くん、こんなに幸せでいいのかなって思う」
「まだまだ、これからだよ?」
俺はそう言って改めてダンボールの山に向き合った。
「ほんと……バカみたいだったね、私」
「そう?」
「うん。あの時、遠距離恋愛を心配していたのが——」
「バカだったのは俺の方だ。もう不安にさせないから。頑張るから」
「うん。私も」
付き合っていても、気持ちがすれ違うことだってある。
好きだからこそ、言えないことがある。
互いの気持ちが永遠に続くなんていう保証はどこにもない。
でもだからこそ、大切なことがある。
それは変わらないことではなくて——。
「じゃあ、まず最初の頑張りで、この山を片付けますか」
「うん、光くん!」
こうして俺たちの新しい生活が始まった。
そして大学を卒業して……。
きっと、結婚をして……家族として過ごしていく。
小百合とは、小さな頃からずっと知っている。
一時期、会わない時期もあったけど……きっとそれは俺たちにとって必要なことだったのだろう。
人はいつでも変わっていく。でもそれは、きっと悪いことだけじゃない。
俺は、改めてそう思うのだ——。
以上で完結になります。
18歳以上の方に限りますが、本小説のR18バージョンを別のサイトに連載しております。
・メインヒロインのみのR18シーンを追加した純愛版があります。
・BAD ENDありバージョンもありますが、ヒロインに思い入れがある人は脳が破壊されるので純愛版のみにした方がよいかもしれません。
【作者からのお願い】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
完結のお祝いで、 ↓の★★★★★評価 を押していただけると嬉しいです!