第39話 卒業・幼馴染みの初めて(3)
「その……あのね……光君は気持ちよかったのかな?
私で……よかったのかな?」
何かと思えば。
自信が無いというよりどう感じたのか訊きたいのだろう。
「正直に言うと、気持ちよすぎて……その、初めてかも。こんなに早かったのは」
「初めて? そっか。
やっぱり光君、かわいい」
小百合はにっこりと満足げに笑った。
とても無邪気な顔をしていた。
「光くん。どうしよう?」
「小百合? どうしたっ? 大丈夫か?」
「……こうやって……光くんとくっついて……離れたくないって思って」
「……ふふっ」
何かあったのかと焦ったけど、小百合の言っている意味が分かりほっとする。
「俺も離れたくない」
「でも、そろそろ親が帰ってきそう」
今は外は真っ暗で、もうすぐ八時になる。
ゆっくりしすぎた。もうこんな時間だ。
小百合にとっては今日が初めてだし、最後までできないかもしれないと俺は思っていた。
でも、今では俺より小百合の方が元気そうだ。
「不思議。知らない光くんをいろいろ知ったような気がする」
ちょっとからかうような小百合の口調に俺は反撃する。
「俺も知らない小百合をいっぱい見たよ。
色々恥ずかしがるとこがすごく可愛かったし、びくびくって……」
「も……もう! 知らないっ!」
小百合は、すねて俺と反対方向を向いてしまった。
ただそれでも、俺の腕は解放してくれないようだ。
こうやって恥ずかしがる小百合の姿は、とても新鮮に感じるし、とても可愛い。
よくよく考えると、互いの裸は子供の頃に見ているし、一緒に布団で寝ることも何度もしてきた。
もちろん、子供の頃と今では外見も内面も変わっている。
多分ずっと……小百合は今日のように恥ずかしそうにするのだろう。
それが本当に可愛いと思う。
今は本格的にすねてるわけじゃない。
そういうフリだというのも分かっている。
俺は背中から小百合を抱き締め身体を密着させる。
すべすべした滑らかな肌が俺の胸に吸い付くようにして触れる。
「小百合は元気そうだな」
「うん。全然平気。光くんの方が疲れているような……?」
機嫌を直した小百合が俺の方を向いて抱きついてきた。
「そうだね。さすがに疲れた」
「じゃあ……もうちょっとこのままでいよ?」
「うん」
そのタイミングで、プルルルル……とスマホが鳴る。
布団から出ずに、手を伸ばして俺に抱かれたまま確認する小百合。
「どうした?」
「えーっと……お父さんとお母さんね……光くんのご両親と飲み過ぎたみたいで……帰れないからこのまま近くのホテルに泊まるって」
「え……? じゃあ帰ってこないって事か?」
「光君もいるから大丈夫だろ? だって」
俺のスマホも通知ランプが光っているので確認する。
父からのメッセージが来ていた。
『光。千石さんの家に小百合ちゃんといるんだろ?
だったら、今日は帰ってこなくていいぞ。
っていうか帰るな。絶対にだ』
ととと父さん。
小百合が、俺に甘えながら聞いてくる。
「光くん、今日泊まって行く? ……だめ?」
「うん、泊まって行くよ」
即答すると、小百合は満面の笑みを浮かべた。
「じゃあ、もう少し休んだら、晩ご飯作るね」
「無理しなくていいよ?」
「ううん、大丈夫。作らせて?」
「じゃあ、二人で一緒に作ろっか!」
「うん!」
その晩、一緒に作った食事に舌鼓を打ち、そして一緒にお風呂に入った。
互いに恥ずかしさで真っ赤になる。
さっきは裸で抱き合っていたのに不思議だねって言いあった。
こうして過ぎていく卒業式の日。
二人にとっての初めての時間が過ぎていったのだった。
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