第34話 試験前夜(2)
明け方。
外はまだ暗い時間に俺は目を覚ました。
早くに眠ったため、起きても良いんだけど……トイレに行きたくなって目が覚めた。
俺の腕の中に小百合がいる。
部屋は真っ暗に近いけど、目が慣れていてぼんやりと小百合の顔が見える。
すう、すうと静かな寝息を立てている。
幸せそうな寝顔に見えた。
さて……彼女を起こさずにトイレに行くのはかなり大変そうだ。
俺は細心の注意を払って腕を引き抜いて、トイレに行った。
そして戻って、布団に入り腕枕を戻す。
すぅ……すぅ……。
小百合はよく眠っているようで、起きなかった。
前も思ったのだけど小百合の寝顔はずっと見ていても飽きない。
可愛らしく幸せそうなその表情をずっと見ていたいと思う。
それにしても、人の温もりって落ち着くし癒やされるというか……。
また……眠く……。
☆☆☆☆☆☆
その日、変な夢を見た。
誰かに、といっても小百合しかいないはずなのだけど、触られて、妙に気持ちい感覚と、柔らかさに触れているような夢。
そして、激しい放出感が……。
☆☆☆☆☆☆
ブーッブーッブーッ!
スマホが朝を告げるように振動しているの気付く。
朝だ。
部屋の中が明るくなっている。
腕の中にいたはずの小百合がいなくなっている。
慌てて起きると、部屋の中には小百合のパジャマがあり彼女の荷物もあった。
小百合は俺だけを残して、起きて部屋から出たようだ。
俺はふと、夢のような出来事を思い出した。
そういえば俺の下半身はどうなっている?
結果、どうにもなっていなかった。
朝の生理現象も見られない。大人しい感じだ。
ものすごい放出感があって漏らしたのかと思ったけど、別になんともなっていない。
うーむ?
あの生々しい感覚は……でもまさか小百合があんなことをするハズ無いよな。
俺は夢だと思い込むことにした。
今日は試験本番の当日だ。
すごい夢を見たせいか? なんだか頭がスッキリとしている。
まるでストレスが全部吐き出されたような……。
制服に着替えてキッチンに向かうと、小百合と母さんが弁当を作っていた。
なんだかキャッ、キャッと楽しそうに話をしている。
俺が「おはよう」と声をかけると、二人が振り返る。
「おはよう、光君」
「あら、おはよう。朝ご飯食べちゃいなさい」
小百合は制服の上に母さんから借りたエプロンをしていた。
卵焼きを焼いている。
香ばしいお腹が減る匂いと、ジューという良い音がする。
ああ、小百合のエプロン姿、初めて見るな。
なぜか幸せすら感じる。
「あら、千石家は甘い卵焼きなんだ」
「はい。光君も甘いのも好きと言ってました」
「へえ……そんなこと一言も聞いてないけど?」
母さんの視線が怖いので、俺は気付かないふりをして焼いた食パンを口に放り込んだ。
俺が全部食べ終わる頃、弁当の方も完成したようだ。
「はい、光君。お弁当出来たよ」
「ありがとう……俺より先に起きて作ってたの?」
「うん。試験会場で食べよ?」
「うん。嬉しいなあ」
俺は地味に感動していた。
嬉しい。早く食べたい。
さゆりも元気そうで、体調は万全に見える。
肌がテカテカしているように見えるくらい調子が良さそうだ。
俺はふと、夜のことを思い出し小百合に小声で聞いて見る。
「小百合、夜というか明け方のことだけどさ、俺に——」
「えっ……? えーっと……ううん、何もしてないよ?」
小百合は俺の質問に食い気味に答える。
そうだよな……。
まあ気持ちよかったし。なんか身体が軽いくらいだし。
今日はこれからのことに集中しよう。
俺たちはついに試験当日を迎えた。
二人とも、万全の体調で実力を発揮できたと思う。
適度な緊張もあったし、小百合がいてくれたおかげで緊張しすぎることも無かった。
そんな調子で、試験自体は瞬く間に終わったのだった。
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