表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/40

第19話 元カノとの最後の時間を過ごす。

お知らせ:

※18歳以上の方に限定されますが、本小説のR18バージョンを別のサイトに連載しております。



 絵里は勝利を確信している。

 その自信は一体どこから来るのか?


 小百合が先に帰った意味を理解していないんだ。


 俺ははっきりと言うことにした。



「ごめん。もう、絵里と付き合うことは考えられない」


「えっ? どうして? 角田とちゃんと別れたし……細川君誰とも付き合ってないんでしょ?

 それに、私のこと、まだ好きな気持ちがあれば大丈夫大丈夫」


「もう、絵里のことは吹っ切れたよ」


「えっ……? もうって……?」


「うん。っていうか、とっくの昔に」



 そこまで言うと、絵里は俯いた。



「だったら、これから……これからまた、最初から——」


「無理だよ」


「どうして?」



 そんなことは決まっている。

 こういう人は自分が何をしたのか分かっていないのだ。


 前はそうで無かったはずなのに。

 いつからこうなってしまったのだろう。



「もう、絵里を信じられないからだよ。

 あの時、絵里と付き合っている時、お互い本気だと思っていて、多分それは本当のことで、お互いに真剣だったと思う」


「う、うん……」


「だけど、絵里は変わってしまった。他に好きな人ができた、そう言って俺の元から去っていった」


「それは悪かったわ。だから、こうやって元に戻ろうとしてるのよ?」



 元に戻ろうとしているのは、アイツがDVなど振るう男だったからだろ?

 しかも……本当に最低な奴だと。

 そうじゃなかったら、絵里はこうして俺とよりを戻そうとしただろうか?


 違うような気がする。



「もう無理だよ。君が他の男と一緒になったと考えて吐き気がした。今でも正直キツい。

 もう、俺の中の……俺が好きだった絵里は死んだんだ」



 絵里の瞳が潤み、涙が流れようとしていた。



「そ、そんな……私は……まだいるわ」


「そうだ。でも、もう俺が好きだった頃の絵里じゃない。

 君自身だけじゃなく、他の男にって考えただけで、無理なんだ。

 付き合っても同じ事を繰り返す」



 多分付き合っても。

 その言葉に、絵里は顔を上げた。



「もう、同じ事は繰り返さないから。大丈夫よ」


「その言葉を、もう俺は信用できないんだ」


「そ、そんな……いや……いやだ。また、付き合おうよ? また、あなたの家で……抱き合ったりしよ?」



 もう俺は絵里に何も感じなかった。

 彼女のこんな姿を見ても、心が動かない。


 もし俺の心が動くとしたら……。



「絵里、俺にはもう好きな人がいる」


「……っ!」


「それは君じゃない。もう無理なんだよ」


「やだ。そんなの知らない。確かにさっきの子は可愛いかもしれないけど、私の方が……あの女と私を比べて——」



 そこまで言って絵里はハッと表情を変え言葉が止まった。

 散々比較し、小百合にボロ負けしたのは絵里自身だ。


 しかし絵里はめげなかった。



「——いや、だとしても。私との幸せな時期だってあるでしょう?

 また、そうやって幸せな時を過ごすことだってできる」


「確かに、付き合い始めや体を重ねたときは幸せだった」


「でしょう? だったら……」


「でも、それは……もう思い出なんだ」


「思い出……そんな……」



 俺の意思が変わらないことを少しずつ理解してきているようだ。



「これからは、小百合のことを考えて生きていたい」


「う……そんな……いや……いやだ。私は細川君のことが好き。好きだから……諦められない」


「絵里に振られたとき、俺だって簡単に諦められなかったさ。でも時間がなんとかしてくれる」



 しばらく、沈黙が部屋を支配した。


 ふと、スマホを見ると連絡が入っていることに気付く。

 父さんからで、親同士の話し合いは終わったとのことだ。


 俺を待ってくれているらしい。

 ただ、急ぐ必要は無いとの連絡だった。


 絵里が口を開く。



「……でも、まだ付き合ってないでしょう?

 ひょっとしたら、細川君の一方通行かも知れない。

 例えば、千石さんに他に好きな人がいたりするかもしれない。もしそうなら、私と……」



 今の状況で、想像ができないことだ。

 俺は、小百合が俺に好意を持ってくれていると確信している。

 それが、自惚(うぬぼ)れではないことも。


 もし仮に絵里の言うとおり、俺の一方通行だったら。

 じゃあ、その時はずっと一人で過ごすのも悪くないかも知れない。



「もし、もし小百合に振られても、諦めるつもりはない」


「え……そんなに……?」


「それに、もし仮に俺の思いが届かなくても、絵里に戻るつもりはないんだ。決して」



 俺は絵里の未練を断ち切るように、すっと立ち上がった。



「じゃあな。話は終わりだ。俺も帰るよ」


「そんな、待って……まだ話は終わってない」


「俺からはもう話すことは何も無い」


「やだ。私の気持ちはどうなるの? 私は……私はやっぱり細川君が好き。大好き。だから、待って……?」



 絵里は部屋を出ようとする俺の足に縋ってきた。

 俺は、その指を……手を解いていく。



「もし……もし、小百合に会う前だったら」


「俺のことをずっと見ていて、

 俺のことを誰より知っていて、

 でも、控えめで」


「自分の気持ちを押し殺して生きてきた幼馴染みの女の子に、会っていなかったら……」


「人の思いに、人の気持ちを想って涙を流す幼馴染みに会っていなかったら……」


「少しは考えたかもしれないな。

 俺は弱かったし、絵里に頼っていた部分は確かにあった」


「……」


「でも、もう俺は変わってしまった。絵里が変わったように」


「……じゃあ……もう……遅いってこと……?」


「うん。もう、絵里の知っている俺はどこにもいないんだよ」


「イヤ……いやだ……。うわあぁぁぁぁん——」


「さようなら。絵里」



 俺は泣きじゃくる絵里を置いて部屋を出た。

 好きな人を失う気持ちを、少しでも感じて貰えたらいいのだけど。

 同じ間違いを繰り返さないためにも。



 料亭の人に案内されて外に出た。

 そこには、夜の空を見上げた、父さんが静かに待っていた。



「まあなんだ……。色々あるとは思うが……。

 お前、泣いているのに気付いているか?」


「え……」


「一つだけ教えてやる。

 一人の男が本当に幸せにできるのは、たった一人の女だけだ。それだけ覚えておいてくれ」


「……うん」



 父さんはくしゃくしゃっと照れ隠しのように俺の頭を撫でた。



「さあ、帰ろう」



 父さんの心遣いが、嬉しかった。



【作者からのお願い】


この小説を読んで


「壊れたものは、元に戻らない」


「続きが気になる!」


「この先どうなるの!?」


と少しでも思ったら、ブックマークや、↓の★★★★★評価 を押して応援してくれると嬉しいです!


あなたの応援が、更新の原動力になります!


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ブックマークと★★★★★評価を入れて頂けると、作者への応援になります!

執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


【NTRタイムリープ】幼馴染みを寝取られ俺は死んだ。でも、時間がまき戻ったので全てをやり直す。〜今さら奪おうとしてももう遅い

↑新作です! こちらもよろしくお願いします!!

― 新着の感想 ―
[良い点] やっと主人公になってくれた。 良かった。 スッキリしました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ