表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/40

第17話 これが噂に聞く修羅場というものなのだろうか?


 いつものように小百合を送ってから家に帰ると、父が低い声で話しかけてきた。



「なあ、光。最近、五木さんの娘さんとどうしてる? さっき連絡があってな、お前と一緒に会食に誘われたんだが?」


「えっ、絵里のところと?」


「ああ。最近、その絵里さんだったか、あまり家に来なくなったようだが、どうしているんだ?」



 そろそろ現状を伝えた方がいいのだろう。

 俺は、はっきりと言う。



「もう別れたよ。会ってない」


「やっぱりそうなのか。じゃあ、断る方向で考えた方がいいのかも知れないな」


「えっ? 仕事の話? いいの?」


「ああ、お前に嫌な思いをさせてまでするような仕事は無い。特に()()()()()は面倒だからな」



 父さんは、どこか遠い目をしてしみじみと言った。



「……もしや父さんも苦労を……?」


「あらあら、何のお話かしら?」



 母さんが参戦してきた。

 言葉は柔らかいが、目はギラついている。

 途端に顔色が悪くなる父さんだが。



「すまん、電話だ」



 あ。

 逃げた!



 しかし、その電話は千石家、つまり小百合の親からの電話だったらしい。

 千石家とも仕事の付き合いがある。



「すまん、光。やはり会食には行くことになった」


「え?」


「どうしてもと言われてしまってね。まあ、この際ハッキリとこちらも言うことにするよ。ちなみに、小百合ちゃんとは今でも仲良くやってるのか?」


「あ、うん。今一緒に帰ってるし、仲はいいと思う」


「付き合ってるのか?」


「い、いや、そういうわけじゃ……」



 父さんからそう言われると、正直照れてしまう。



「なるほどなぁ。分かった。もう少ししたら出ようと思うから、着替えてきてくれ。あまり気取らないでもいいけど落ち着いた服がいいかもな。制服が無難だな」


「ええ? 今から?」


「ああ。光もご指名だ」



 俺は父さんと久しぶりに一緒に出かけた。



 ☆☆☆☆☆☆



 そして大きい家……というよりは、お屋敷みたいなところに着いた。

 料亭?

 こういうところに来るのは初めてだ。


 迎えにきた人に案内される。



「光はこの先の部屋に」


「え? 父さんと一緒じゃないの?」


「ああ。いろいろ難しい話になりそうだし、()()()()は別の部屋だ」



 なんだか嫌な予感がする。

 その予感は的中し……。


 畳の純和風の部屋。

 壁には掛け軸が飾られている。

 何か書いてあるけどぐにゃぐにゃしていて読めない。


 低いテーブルと座椅子がある。

 ドラマでよくある、偉い人が食事をしながら悪巧みをする部屋だった。



「細川君!」


「やっぱり……」



 部屋には、絵里が一人で座っている。

 俺は、その正面に座った。



「こんばんは。また会えて嬉しいな」



 絵里はドレスのような白いワンピースを着ていた。

 ちょっと部屋の雰囲気と合わない気がする。


 前会ったときは酷い有様だったけど、今は腫れなど怪我は見られず顔色もいい。

 軽く化粧もしているみたいで、気合いが入ってるようだ。


 道ですれ違えば多くの男が振り返りそうな外見だが、俺が心が動かされることはなかった。



「もしかして絵里が段取りをしたのか?」


「どうしてそんな怖い顔をしてるの? そんなこと私ができるわけ無いでしょ」



 じゃあどうしてこんな状況になるんだよ。



「それに……私……。別れたし」

「角田と?」



 絵里は、俺が角田の名前を出したところで一瞬顔をしかめた。

 もうその名前は聞きたくないのだろう。



「うん。私を殴ったりしたこと全部話したら、大変なことになったみたいで」


「そうか」


「だからね、また細川君とつきあってもいいかなって。細川君と別れて、あなたの良さがよくわかったっていうか」



 まただ。今さら、何を言っているのか。

 別れたからどうだというのだ。俺には関係ない。

 俺は溜息をつきながら冷めた目で絵里を見る。



「お料理の準備ができました」



 着物を着た女性が、料理を運んできた。

 三人分の料理を並べていく。



「「三人分?」」



 絵里と同じタイミングで質問してしまった。



「はい、もう一人お連れ様がいらっしゃると……」


「え? そんなの頼んでない」


「絵里……やっぱりこの場をセッティングしたのは……」


「あっ……」



 急に絵里が黙り込む。

 俺はその顔を睨みながら、料理が並べられるのを待った。



「こんばんは……あっ、光君」



 そこに小百合がやってきた。


 もう一人というのは小百合のことだった。考えてみれば当然だ。

 小百合は、料亭の女性に座る場所を聞き、俺の隣に座る。


 すると、絵里が俺に聞いてきた。



「え……誰?」


「幼馴染みの小百合だよ」


「なっ。じゃあ、この子が……むっ」


「光君、こちらの方は?」



 小百合が俺を見る目は優しい。

 しかし、小百合が五木を見る目には炎が宿っていた。



「えっと、小百合、この人は五木絵里と言って——」


「細川君の彼女よ」


「元だろ、元」



 小百合に誤解させないようにしっかり訂正する。

 まあ、今さら大丈夫だろうけど。



「はじめまして、五木さん。光君と親しくさせていただいている千石小百合と申します」


「なっ! 親しくって——」



 先制攻撃をしたのは、なんと小百合だった。絵里は焦っている。

 そんな様子に少し笑いそうになった。


 だけど、小百合が絵里に向けて挨拶をした瞬間、この部屋に稲妻を見たような気がした。

 きっと幻だと思うのだけど。


 いったい何が起きているんだ?

 これはもしかして……これって……噂に聞く修羅場……?


 い、いや……俺は二股なんてしてないし違うよな。

 それにしては、この部屋のピリピリした空気は一体何だろう?


 小百合の初めて見る戦闘モードに、俺は釘付けになった。

 優しい幼馴染みの真の姿を、俺は見ることになる。


【作者からのお願い】


この小説を読んで


「幼馴染みVS元カノ……!?」


「続きが気になる!」


「この先どうなるの!?」


と少しでも思ったら、ブックマークや、↓の★★★★★評価 を押して応援してくれると嬉しいです!


あなたの応援が、更新の原動力になります!


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ブックマークと★★★★★評価を入れて頂けると、作者への応援になります!

執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


【NTRタイムリープ】幼馴染みを寝取られ俺は死んだ。でも、時間がまき戻ったので全てをやり直す。〜今さら奪おうとしてももう遅い

↑新作です! こちらもよろしくお願いします!!

― 新着の感想 ―
[良い点] 引っ込み思案で臆病な性格の印象が強かった小百合の性格が急に変わってて良いですね。 [気になる点] 優柔不断で意志薄弱。 ハッキリしないから、コウなる。の典型みたいな? 今までの主人公の心理…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ