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第12話 幼馴染みの元に向かう俺が潰してしまったもの(2)



 最奥の部屋に人の気配があり、躊躇無く立ち入った。

 何人か、学生服姿の男たちが見えた。



「……細川! 来たか!」



 少し顔を腫らした山本と、それを囲む俺と同期のバスケ部員。味方だ。

 対するように、角田らの仲間——他校のバスケ部員がいた。奴らは敵だ。


 奥のベッドの上には小百合の姿が見えた!



「光君!!」



 小百合の瞳がキラリと輝く。

 強い光は失われていない。


 その表情を見ただけで、間に合ったのだと理解する。

 ブレザーは脱がされたようだが、ブラウスのボタンは外されていない。

 少し髪が乱れているが、それくらいだ。


 だけど……。

 それを知ってもなお、俺の中の熱は止められなかった。怒りが止まらない。

 小百合に何をしようとしたのか。それを考えると、頭の奥が痺れた。



「お前らぁ……!!」



 俺は無我夢中で駆け出す。三歩で最大速度に到達、何人か押しのける。

 さらに塞ぐように立っていた大男に体当たりをし、無我夢中で腕を振った。

 ギリギリのところで理性を押しとどめ、威嚇に留めるつもりだった。


 しかし……。


 大男が「グエっ」とうめき、よろめく。

 そいつを突き飛ばすと視界に小百合の姿が見えた。


 彼女の顔がぱっと明るくなる。彼女を腕に抱き締める。

 決して離すつもりはない。

 


「小百合、無事か? 何かされてないか?」

「うん、大丈夫……というか、光君が一番乱暴だよ?」

「えっ?」



 振り返ると、何人か倒れている。

 無我夢中で障害物を排除したのは確かだけど……ひどいな。

 誰がやったんだ?


 俺だ……。



「おい、細川……にらみ合いをしている途中にお前が入ってきたんだが、一気にぶち壊したな」



 山本が嬉しそうに言う。

 そこにいた一同があっけにとられていたように見えた。


 近くにうずくまっている男がいる。

 角田だ。



「ぐ……うぉぉお」



 苦しそうにうめいている。目には涙を溜めている。何をそんなに痛がっているんだ?


 そういえば、さっきはバスケの試合中するように、フル加速したっけ。

 広いとは言えない部屋で、我ながら無茶をした。怪我をしてもしょうがなかったろう。


 バスケでは三歩でフル加速なんて当然のことだ。

 全盛期よりは衰えているとは言えまだその加速力は健在だった。


 そういえば突き飛ばす直前、俺の右膝が角田の股間の辺りに直撃していたような……気がする。

 ……なにか柔らかいものが、ぐにゃりと潰れるような……嫌な感触を思い出した。


 あ、あれかな? 急所が潰れちゃったかな?


 い、いや……。わざとじゃないし。


 俺はついバスケの試合中のように両手を挙げ、反則(ファール)してないぞアピールをした。

 確かに試合中、ぶつかり股間に衝突して倒れる奴はいたが、ここまで痛がっているのは見たことがない。



「ぐ……うお……」


 もしかしたら……本当に股間の急所が潰れちゃったのか?

 まあ、どうせろくでもないものだ。小百合に危害を加えようとする全てのものは潰れた方がいい。


 怪我を負わせたのなら、障害事件として俺は罰を受けるのかもしれない。

 でもまあ、小百合を襲ったのだ。恐らく角田が首謀者なのだろう。だったら、その報いを受けるべきだ。

 その上で俺に非があるなら、 どんな罰も受けてもいい。



「おい、お前らどうするのこれ?」



 殺気立つ角田の仲間の男たち。

 リーダーが倒されてはメンツも何も無いだろう。



「いや、ウチの学校の女生徒を拉致した、お前らこそどうすんの? お前ら……お前ら、千石さんに何をしようとしていたんだ?」



 肩をふるわせ、山本が返す。

 その言葉に、確信犯的な意識があったのだろうか。奴らは怯み、口をつぐんだ。


 山本に加え、同期のバスケ部員の顔が見える。

 そっか……あいつら、みんな助けに来てくれたんだな。


 しかし、互いにケリを付けないと引き下がれない状況だ。

 角田はまだ倒れたまま起き上がれないでいる。



「角田、大丈夫か?」



 奴らの仲間が駆け寄って聞いているが、角田は痛みを堪えるのに必死の様子で返事をしなかった。

 ぐううう、と唸っている。相当痛いみたいだ。

 両手で股間の辺りをずっと押さえている。


 俺たちを睨む角田の仲間たち。



「お前ら、タダじゃ——」



 その時——。

 ウーウー、というパトカーのサイレンが聞こえた。


 警察だ!

 さて、どうしようかと考え始めた俺だったが、すぐに数人の大人、警察の人たちが部屋に入ってきた。



「お前ら全員、動くな!」



 角田の仲間のも、俺たちも、誰一人として警察には逆らわなかった。



 ☆☆☆☆☆☆



 事情を話すために全員が警察署に向かうことになった。


 小百合は特に怪我はないものの、手首に縛られた痕ができていた。

 痛そうだ。

 本当に腹が立つ。



「小百合、その痕……大丈夫? 残ったりしないかな?」


「うん。全然平気だよっ」


 小百合はそう言って、手をパタパタと振って見せた。



「光君は? どこか痛くない?」



 小百合は俺の身体をペタペタと触ってきた。そして俺の顔を見て、心配そうにして瞳をうるうるとさせている。

 いや、俺なんかより小百合は自分の身体に気をつかって欲しいんだけどね。



「全然。なんともないよ」


「そっか。光くん、ありがと、ね」


 

 小百合は、はにかみながら俺に言った。

 元気そうだけど、怖かっただろうし少し心配だ。後でちゃんとケアしないとな。



 事情聴取はその日の深夜まで及んだ。

 俺たちは小百合が拐われたことを伝え、あの場にいたことの正当性を主張する。


 山本は同期のバスケ部員も呼んだ上、警察も呼んでいた。

 彼の親の警察関係者の——ナントカを通じて連絡を取っていたようだ。実にナイスだ。


 コネがあったのは本当だったのだろう。

 彼には感謝をしないといけない。


 小百合が拉致された場所は、警察署からかなり距離がある。

 到着を待っていたら、ひょっとしたら小百合は今頃……。

 俺はブルブルと顔を横に振り、もしもの世界は考えないようにした。



 角田だけは警察署に姿を見せなかった。

 それほど大きな怪我ではないはず。ひょっとしたら病院にでも行ったのかもしれない。


 もちろん、同情などしない。


 小百合は先に家に帰されたらしく、俺が解放されたときには既にいなかった。

 LINEに「先に帰るね、また明日、話そうね」、とメッセージが入っていた。了解のスタンプを送る。


 俺も両親に迎えられて帰宅。

 怒られるかと思ったけど父も母も全く怒らなかった。


 ただ一言、父は「よくやった」と褒めてくれたのだった。


【作者からのお願い】


この小説を読んで


「潰れたのって……」


「続きが気になる!」


「この先どうなるの!?」


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【NTRタイムリープ】幼馴染みを寝取られ俺は死んだ。でも、時間がまき戻ったので全てをやり直す。〜今さら奪おうとしてももう遅い

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