第10話 幼馴染みの元に向かう俺が潰してしまったもの(1)
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「今歩いているけど……もうすぐ家に着く。じゃあ……待ってるね」
小百合は電話を切ろうとしていたが、俺は胸騒ぎを感じた。
「ううん、このまま話そう」
「う、うん?」
しかし……。
もうすぐ着くと言っていたはずの小百合だが、なかなか家に着く様子がない。
「どうした?」
「ちょっと……いつも通ってる道が通行止めになってて……遠回りして帰ってる」
「そ、そうか」
「……きゃっ?」
「ん? どうした?」
プツッ。
小百合との通話が唐突に切れてしまった。
何かあったのか?
嫌な予感がする。俺は小百合の家に向かって走り始めた。
一体何事だ?
走っている最中、スマホに通話があった。
山本からだ。
「どうした?」
「千石さんが、どこかの生徒だと思うが、数人の男に連れて行かれるのを見た。とりあえず追いかける。河崎駅の近くだ。細川も早く来い!」
山本の声だ。
それだけで、通話は切れてしまった。
いやな予感が的中した。
でも、山本の声に俺は励まされる。
河崎駅はさっき小百合と話していた駅だし、十分ほど走れば着くだろう。
誰であろうと小百合に手を出すヤツは許さない。
俺は頭に血が上っていた。
それに気付かないほどに。
俺は全速力で走って駅前に向かう。
しかし、到着したときには、その周囲には誰も見当たらない。
この近くであることは間違い無いだろう。
しかし、方角が分からなければ……。
キンコン。
そう思っていたところに、スマホの通知音が鳴る。
小百合からだ。
メッセージアプリを開くとそこには、写真が一枚添付されていた。
小百合が、両手を縛られベッドに寝かされている。
そして睨むように、手前を見ていた。
恐らく、彼女を拉致した者が撮影したものだろう。
小百合の瞳は強い光が灯っている。
負けない……信じている。そう訴えるような強い光が。
俺はその小百合の意志にも励まされる。
絶対に助ける!
写真のみで、特にメッセージは無かった。
俺を焦らそうとしているのだろう。
写真の明るさや周囲の明るさから想像すると、たった今撮影されたもので間違い無い。
そもそも、連れ去られたという山本の連絡からさほど時間は過ぎていない。
写真から想像するに、どこかの廃工場のようなところだ。
少なくとも普通の家では無さそうだ。
それだけでも十分なヒントだった。
工場や会社の建物がある方向に俺は向かう。
この辺りはずっと住んでいて、庭みたいなものだ。
なんとなく、あの辺りじゃないかと場所を思い浮かべることさえできる。
しばらく走ると、再び通知音が届いた。
最初の写真の到着から五分も経っていない。
小百合のブレザーが脱がされ、上着はブラウスだけになっている。
なるほど、撮影者の性格の悪さがにじみ出ている。
そうか、少なくとも連れ去ったのは俺と小百合のことを知っているヤツなのだろう。
俺になんらかの関わりがある。
まあ、十中八九角田だろうなぁ。
さっき、絵里も俺と小百合の関係を知っているようなことを口走っていたし。
小百合は相変わらず強い表情をしていた。
あまり気丈が過ぎると先立って暴力を受けるかもしれない。その前になんとかしなければ。
着信がある。
山本だ。
「細川、今どこ?」
「駅の近く。たぶん、そっちに向かっている」
「おお、朗報だな。ここのGPS位置情報を送る。
奴らを見つけて様子を窺ってたんだが、そろそろ千石さんが危ない」
「分かった。警察へは通報したか?」
「もちろん。だが、待っていられない。時間を稼ぐ。お前が恐らく一番ガタイが良く強い。援軍、期待してるぞ……骨は拾ってくれ——」
そこで通話が切れた。
送られてきた位置情報は、すぐ近くの工場を指していた。
予想通りだ。
この辺りは元々住んでいる所の最寄り駅で土地勘はあった。
別の駅だったら、こうもうまく行かなかっただろう。
位置情報を頼りに走り……古びた建物に着く。
その建物は事務所と工場部分で荒れ方が違っていた。
事務所の方は今でも人が使っているのかもしれない。
だが入り口はなく、工場側から入るようだ。俺は工場の方に向かった。
工場は鍵が壊されており、一歩を踏み入れた。
奥の方から言い争う声が聞こえる。
山本たちだ!
内部は埃っぽくもなく意外と綺麗になっている。
俺は騒がしい方向に急いで走り出す。
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