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第7話 森のスローライフpart3

「うわー!?」


 次の日。


 俺はログハウス前で驚きの声を上げていた。


 起きたら、ログハウス全体がうねうねと動く怪しいツタ植物に覆われていたのだ。

 けばけばしい色の花がそこら中に咲き、食虫植物のようなものまで散見される。


 どうしてこうなった!?


 時は少し戻って……



 ▽



 朝。


 いつもの時間に、自然と目覚める。

 昔から、朝はきっかり同じ時間に目覚める体質なのだ。


 一瞬、自分が今どこに居るのか分からなかったが、思い出した。

 昨日作った、ログハウスの個室に居るのだ。

 そしてここには、あのクソヒゲ国王たちの力も及ばない。突然課される任務も無い。


 まさに安住の地。


「だからかな。久々に落ち着いて寝れた気がする……」


 ベッドはちょっと堅かったが。

 うーんと伸びをする。と、ここで周囲が妙に暗い事に気づいた。


「森の中だからかな?」


 窓の外を見る……が、なにか緑色の良く分からないもので覆われて外が見えない。


「なんじゃこれ?」


 外に出て確かめてみるか、と扉を開けて部屋を出た。


「おはようございます」


 リビングに行く途中の廊下で、エリサさんに遭遇。


「おはよう、アシェリーは?」


「……あの方は朝は狂暴ですので」


 そういやそうだった。

 揺すって起こすと、最上級の火炎魔法が飛んでくる。


「昨日の朝、0距離で撃たれたよ」


「……よく生きてますね。さすがは勇者といったところでしょうか」


「驚いたけどね。吹っ飛ばしてかわしたよ」


「ああ、雲に穴を空けたのがそれでしたか。おかげで魔王様を見つけることが出来ました」


 頭を下げられた。

 妙なのろしもあったものだ。


「アシェリーって昔からああなの?」


「お城に居た頃、何度も城の5分の1が吹っ飛ぶという事態が発生しまして。


 なので、魔族選りすぐりの魔法使いが苦労して練り上げた……


 『対火炎魔法特化防御結界』をお部屋に展開。


 そのおかげで、近年は被害が最小限度に食い止められていたのですが」


 なるほど。

 今回の場合、起こしに行こうにも行けないという訳か。


 下手をすれば、ログハウスは内部から吹っ飛ばされることになる。というか全焼する。


「しかし、それ以外にも問題が」


 そうそう。窓の外が見えないのだ。

 リビングへ行き、テラス部分の大きい窓から外を見ようとすると……


 緑色の巨大なツタがうねうねしている!?


「なんじゃこりゃ!?」


「分かりません。魔界の食人植物にやや似ておりますが」


 魔界にはこんなのが自生してて人を食うのか。物騒だな……


 それはともかく、テラス部分はやや空間が空いてるのでそこに出て、

 アイテムボックスから愛剣を取り出し、片っ端から切り払う。


 ようやく森の風景が目の前に現れた。

 外に出て、ログハウスがどうなってるのかを見ると……


「うわー!?」



 ▽



 どうしてこうなった。


 俺とエリサさんが途方に暮れていると(エリサさんは変わらず無表情だが)、アシェリーが自力で起きてきたようだ。


「おあよう」


 ふらふらとテラスの解放部分から出てくる。

 あれ、黒いドレスじゃなくてなんか寝間着っぽいのを着てるな……?


「わたくしが持ってきたものです。こんなこともあろうかと」


 さすがである。準備が良い。


「ベッドに敷くリネンや毛布などもありましたが、勇者様は必要でしたか?」


「……寝る前に言ってほしかったよ」


「なあにぃこれえ!?」


 アシェリーが改めてログハウスの惨状を見て叫んだ。


「あたしたちの家がキモイうねうねに包まれてる! グロハウス!!」


 うおおい火炎魔法を発動させようとしてるんじゃない!


 慌てて後ろから羽交い絞めにする。まだ半分寝ぼけてるな。

 落ち着け。家ごと消し炭になる。


「とりあえず、家に傷をつけないように剣で切り払うよ。


 エリサさんはアシェリーを見てて」


「了解しました」



 ……なんとか全部のうねうねを切り払い、ログハウスは元の姿を取り戻した。



「謎ツタのせいで破損してるところもなさそうだし、とりあえずログハウスは無事だ」


「よかったー。勇者ちゃんたちのグッジョブが台無しにならなくて」


「魔王様自身が危うく台無しにしそうになりましたけど」


「うっ……」


 しかし、これは魔獣の森の植物の特性なのだろうか。

 毎朝、雪下ろしならぬツタ払いしなきゃならないのは面倒だなあ。


「おや」


 エリサさんが何かに気づいたようだ。

 行ってみると、地面に巨大な足跡が刻まれていた。


「これは……ドラゴンの足跡だな」


「分かるのですか」


「以前、倒したことがあるんで。この森にも生息しているんだな」



 勇者として働きだして3年ほど。

 そのころ短い期間ではあるが、俺はパーティを組んでいた。

 当時は【全体鼓舞】のスキルが発現したばかり。


 そのスキル効果の規模は今と違って4~5人程度だった。

 しかしそれを活かさない手はないと、当時A級冒険者の一団が俺に割り当てられた。


 そんな時に、皆で戦い倒したのが、王都の南東にあるダンジョン内部に居た……


 ラーヴァドラゴン。



「赤く燃えるような竜麟が特徴の、炎を吐く狂暴なドラゴンだった。


 当時は俺も駆け出しで、相当苦戦したもんだ。


 この足跡は、そいつのものにそっくりだ」


「なるほど」


「ドラゴンって、この大陸のあちこちにそれぞれの巣を作ってるわよね。


 そして、少しずつテリトリーの拡大を図っている。


 あたしたちが地上に出た時にも遭遇したわ」


 まじか。魔族領にも居たんだな。


「空を飛ぶ、青い竜麟のスカイドラゴンだったわ。


 魔軍三傑が総がかりでなんとか倒したけど。だいぶ苦戦したみたい」



 これで2体、この世界のドラゴンは既に倒されてるわけか。


 ドラゴンは、モンスターにおけるヒエラルキーの頂点に立つ存在。

 何かの使命を帯びているという噂もあるが、今のところクソ強いモンスター以上の感触はなかった。



「しかし、ここにもドラゴンが居るとなると……


 なんとかしなきゃならないな。落ち着いてスローライフが送れない。


 たぶんログハウスの謎ツタもそいつの仕業だろう」


「それは許されざるだわ……絶対に吹っ飛ばさなきゃ」


「ドラゴンは、時々見境なく地上を荒らす災害の一つでもあるからな。


 ぶった斬っておいて損はない」


 アシェリーがめらめらと燃え、俺は愛剣を取り出す。


「朝ごはんの前に、竜討伐と行こう」


 出来たばかりの、我が家のために。

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