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第45話 最後の戦いpart1

 決戦の火ぶたが切られた。


 俺は剣で、アシェリーは火炎魔法で。

 それぞれの一番得意の武器で、魔王を僭称するカールティックと相対する。


 以前のカールティックなら、魔王一人で楽勝だったが。

 今のカールティックは、別人のような強さで俺たちに襲い掛かって来た。


「なにこれ!? 


 聖杯の魔力で補強されてるとはいえ、前とは段違いだわ!?」


 アシェリーの火炎魔法が、ことごとくカールティックの氷魔法で相殺されるのだ。

 なおかつ、俺の剣技を風と土の魔法を同時展開して、ことごとくガードしている。


「こいつ、魔軍三傑の能力を全て使えるようになっている!?」


 風の障壁、土の鎧。

 剣が押し返されたり、体に通らずダメージにならない。


「カールティックの固有スキルは、【同化】。


 おそらく、それを使って他の二人を吸収したんだわ!」


 おいおい……仲間じゃなかったのか。

 手段を選ばなさそうなやつだったが、そこまでするか。


「そして、他の二人の魔法とスキルをも使えるようになってる!」


「その通り……おおおおおおおおおおおおお!」


 カールティックが雄たけびを上げた。

 大気がビリビリと震え、城の壁も振動してパラパラと一部が崩れた。


「うっ!?」


「きゃ!?」


 突然の恐怖にとらわれ、俺とアシェリーの動きが止まってしまった。 

  

「これがボウマンの【威圧】さ! しっかり、効くようだな!」


 カールティックが最上級の氷魔法を発動させ、こちらに放ってきた。

 向こう側が見えないくらいの、多数の氷の槍が飛んでくる。


「う、おおおおお!」


「ん……んんー!」


 全魔力を振り絞り、なんとか硬直から体の自由を取りもどす。

 アシェリーの火炎魔法と、俺の連続斬りで飛んできた氷槍を全て叩き落した。


「……ち、さすがにこれくらいでは仕留められねえか。

 

 おい、もっと魔力をよこせ!」


 カールティックがリネットに、指を妙な形で動かして合図した。

 リネットが聖杯を掲げ、魔力を引き出す。

 

 カールティックがそれに手を掲げると、聖杯からの魔力がどんどん流れるように吸われていく。


「あれはトリシュの【魔力吸収】だわ。魔力量が格下のものから魔力を吸収する……


 今回は聖杯から出た、持ち主の居ない魔力を吸収してるみたい」


「なら、まず抑えるべきはトリシュだな」


 顔を見合わせ、うなずきあう。

 

「……大丈夫?」


 リネットに対して強い行動に出る事が出来るか、アシェリーが気遣いを見せた。


「大丈夫。ゆっくり話し合ってる場合でもなさそうだしな」


 アシェリーが俺に【行動加速】をかけてくれた。

 俺もアシェリーに【全体鼓舞】をかけ、戦力の増強をはかる。


「んっ!?」


 急に俺の動きが早くなり、魔王の力が増大したことに戸惑いを見せるカールティック。


 リネットの方に回り込む俺を阻止しようと、注意がそれた隙に、アシェリーが火炎魔法を撃ちこむ。


「この……!」


 カールティックが手を向けて【魔力吸収】で火炎魔法を吸い込んだ。

 さすがに直撃はまずいと判断したようだ。


 だがアシェリーは連続して火炎魔法を撃ちこんでくる。


「これは、ハーフパワー! 


 最大の一発じゃなく、連続で発動させることを優先したか!」


 カールティックが引っかかってしまったと舌打ちした。

 その間に、俺はリネットの元へ走り寄った。


「リネット!」


「勇者様……」


 熱に浮かされたような目で、聖女がこちらを見てきた。


「今すぐ、聖杯を渡すんだ!」


 おそらく説得は不可能と考え、俺はいきなり聖杯に手を伸ばした。

 だが……


 バチン! と火花が散り、俺の手は弾かれる。


「これは、聖女の神聖魔法『アイギスの反射盾』!」


 しかも、聖杯からの魔力供給でかなり強く強化されている。

 俺の剣技で割れるかどうか。割ったとしても、聖杯の魔力で即修復されてしまうだろう……


「魔王が倒されるまで、ご辛抱ください……


 それまでは、聖杯を渡すわけにはまいりません……!」


 リネットは強い決意を示すように、しっかりとした口調で言った。


 ここで時間を取られれば、強化されたカールティックがアシェリーを捉えるかもしれない。

 そうすれば、アシェリーすら【同化】される恐れがある……


「なら……【アイテムボックス】」


 俺は空間収納のスキルを発動させた。


「きゃっ!?」


 リネットと周囲の空間ごと、アイテムボックスに強制収容した。

 これで聖女も聖杯も、外界から隔絶される。


「何ぃ!?」


 突然、魔力が寸断されたカールティックが狼狽の表情を見せた。

 その隙をついたアシェリーの火炎魔法が、連続して着弾。


 よろめいたところを、俺の剣が切り裂いた。


「うごおっ!」


 だが浅い。

 かろうじて風と土の魔法がカールティックを守った。

 

「今だ、押していこう!」


「ええ!」


 俺とアシェリーがコンビネーションで攻める。

 魔力の供給が無ければ、総合魔力量でこちらが勝る。


 攻め立て続ければ、弱っていくのはカールティックだ……!


「くそっ! バカな! こ、こんなはずでは……!


 おいっ! 聖女とやら! どこだ! 早く、俺に魔力を……!」


 徐々に傷を負いはじめ、動きが鈍っていく。

 【威圧】を繰り出すも一回目よりも威力はなく、余裕で耐えられるレベルになっていた。


「あと一息……!」


「いけるわ!」

 

 しかしその時、バリンと音が立てて俺の隣の空間が割れた。

 黒い破片を飛び散らせながら、飛び出してきたのは……


「リネット!?」


「神聖魔法、ホーリーヴァニッシュ……


 闇を払い、敵を殲滅。その威力は、空間を割ります」


 聖女による神聖魔法か……!


「よ、よし!」


 体勢を立て直したカールティックが、聖女の横に回り込み、その手の聖杯から魔力を再び吸収しはじめた。

 

「回復もだ!」


 カールティックが、また指を奇妙な形で動かし、リネットに合図を送る。


「はい」


 それを見たリネットが回復魔法で、カールティックの傷を完治させてしまった。

 くそ、振り出しにもどったか!


「うおおおおおおおおおおおおっ!」


 カールティックが再び吠えた。

 とたんに、俺もアシェリーも体の動きが止まってしまう。


「最大パワーの【威圧】だ! 


 もうさっきのように、無理やり硬直を解くことはできねえ!


 待ってろ、もう少し魔力を補給して、一瞬で貴様らを葬り去ってやる!」


 カールティックの言う通り、今度は完全に体が固まってしまっていた。

 一ミリも動かすことが出来ない……!

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