第24話 魔軍三傑の憂鬱part2 海のスローライフpart6
お待たせいたしました、連載再開です。
二週間と言っておきながら、三週間とちょっと経ってしまいました、申し訳ありません!
書き溜めもあまり出来てないし()
今後は、毎日十九時ごろに、一話更新ペースで行けるかなと。
書き溜め余裕が出来たら、土日とかに放出するかもしれません
――少し時はさかのぼり。
デスハイム城の会議部屋にて、魔軍三傑が顔を突き合わせている。
「くそっ。結局、元魔王の力を思い知らされるだけだったじゃねえか」
ログハウス前の決戦から魔王城に帰り着くなり、カールティックが呪詛を吐いた。
「やはり、侮ってはいかん相手だったな……
我々も日々、強くなるための努力は怠っていないつもりだったが」
ボウマンが両こぶしをガツンと打ち合わせ、ギリギリと全身の筋肉をみなぎらせる。
それを見たカールティックが、
「筋肉は違うだろ……
力ってのはただひたすらに、魔力、魔力、魔力! それだけだ!」
「何を言う。
肉体の力を向上させる魔法は皆使うが……
筋肉を鍛えればそのぶん魔力を節約できるのだぞ」
「そんなの微々たる量じゃねえか! それに量自体が増えるわけでもねえ!」
魔族にとっての強さとは、すなわち魔力の所有量である。
とにかく体内に保持している魔力の量で、魔族間の地位すら左右される。
彼ら魔軍三傑は、魔族の中でもトップクラスの魔力量を誇っていたため、その地位についたのだが……
「じ、尋常じゃない量でした。
魔王様……の魔力量、実際に戦って思い知りました」
「元をつけろよ陰キャ魔女。
……しかし、俺たち3人を合わせたのよりデケエとはちょっと想定外だったぜ」
カールティックは悔しそうに歯噛みした。
トリシュもいつも以上に暗い表情だ。
ボウマンが「参った」といった様子で両手を上げながら椅子に座り、
「あと、元魔王の傍らにいた勇者だ」
机に肘をついて顎を支えながら言った。
「あいつも、元魔王に匹敵する魔力量だ。
相変わらず俺の【威圧】に怯みもしなかったな」
「だから敵を褒めんな脳筋野郎。
そもそもなんで勇者が元魔王と一緒にいんだよ……」
「俺が知るところではないな」
ボウマンが顎をかきながら答える。
「勇者と元魔王を行動を共にしてるのなら……
ますます、人間領に攻め入って勝てる保証がなくなっちまった!」
「そ、それどころかこの戦争、勝てる確率は、も、もはやゼロです」
「勇者と元魔王が一緒という状況……今回の計画は最初から破綻してたみたいだな」
「……」
カールティックは悔しげに黙り込んだ。
「さ、3人でかかれば行けるとか、お、思いあがりも甚だしかったです」
「俺が悪かったってのかよ!」
トリシュの言葉に、思わず氷魔法を投げつけるカールティック。
しかし氷の槍はトリシュの体に当たる前に、空間に溶けるように消えていった。
「ち、【魔力吸収】のスキルか。それ、元魔王のやつに使えねーのか?」
「わ、私のスキルは、私より魔力量が格下の者……
または魔法単体にしか使えません」
ちらり、とカールティックの方にふさぎがちな視線をやりながら、
「あ、あなたもそうでしょう?」
「……」
魔族の中にも、勇者や魔王が持つ固有スキル持ちがたまに居る。
現在、スキルが発現しているのは、アシュリーを除けば魔軍三傑の三人のみ。
トリシュの【魔力吸収】、カールティックの【同化】、ボウマンの【威圧】だ。
魔力量の強いものに発現しやすいと言われている。
カールティックは一瞬黙ったのちに、
「ああそうさ。俺の【同化】もてめえと同じ、格下専用だ」
「……」
「だがしかしな。
このスキルでたとえ今この城にいる魔族全員を食らったとしても……
元魔王に並べるかというと、全然だがな」
「……」
カールティックの言葉に、用心深い視線を送るボウマンとトリシュ。
カールティックの【同化】は、取り込んだ対象の魔力や能力を自分に追加できるスキルだ。
「今まで同族に対して使ったことは無い、とんでもない重罪を犯して極刑が決まった奴以外にはな」と本人は言っているが、性格上、誰に対してもやりかねない……と他の二人は警戒心を持っている。
同化を使って万一カールティックが格上になれば、いつか自分が同化のスキルで取り込まれる対象になる……
魔族三傑はお互い切磋琢磨して能力を磨いているように見えるが、裏ではそういう思惑が動いているのだった。
「……なら、亜人軍のやつらならどうだ?」
ボウマンが冗談交じりで問いかけるが、
「けっ、脳筋もほどほどにしろ。
あんな雑魚どもにどんだけの魔力量がある。
何体食らおうが何の足しにもならねえ」
カールティックはそう吐き捨てるのだった。
「そ、それなら、もう私たちは……」
打つ手がない、現魔王軍の現状を変えることも出来ない。
そう言おうとしたトリシュだったが、
「……いや、雲をつかむような話だが……一つ、手がねえこともねえ」
「え……ええ?」
「なんだと?」
カールティックの思わぬ言葉に、他の二人が驚いた声を上げる。
有翼族は他の誰かに聞かれないか……と警戒の視線を周囲にやったのち。声を潜めて囁くように言った。
「無限の聖杯、って聞いたことあるか?」
▽
「ほい、朝食の、焼きパンと目玉焼き、海藻サラダだぞー」
「わーい!」
「良いですね」
食卓にどんと置かれた料理に、目を輝かせる二人。
ミルクも当然添えられている。
セイレーンのテレースさんから届けられた、魚肥という肥料のおかげで、パンが食べれるようになったのだ。
ログハウスに新たに隣接された、小麦畑から取れた小麦で作っている。
アシェリーが、四角いパンの上にあつあつの目玉焼きを乗せて、頬張る。
「ん-! んん! んっんー!」
「魔王様落ち着いてください。感想は、きちんと食べて、飲み下してから」
例によって、俺の【全体鼓舞】、魔王の【行動加速】が役に立った。
【全体鼓舞】で小麦自体の育ちを良くし、【行動加速】で好きな時に収穫できる。
それ以降はエリサさんの仕事だ。
収穫された小麦を、小麦粉に製粉。
卵やミルク、生イーストといった、素材を混ぜてこねていく。
いちど発酵させて、パンの形に切り分けてまた発酵。
それをかまどで焼いて、出来上がり。
「肥料にくわえて、イーストというのもテレースさんから貰えて。
助かったね!」
「それがないと、パンは良い感じに膨らまないらしいな……」
つくづく、例のシーサーペントを倒しておいてよかった。
そして、魚肥やイーストだけじゃなく、テレースさんから貰ったものは他にもある。
それが実に悪魔的な存在なのだ。
あらゆる肉・魚料理を引き立て、それがないと妙に物足りなく感じる、白い悪魔。
それは……お米だ。
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