表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/48

第23話 海のスローライフpart5

申し訳ありませんが、ストックが尽きたのと、個人の都合などにより二週間ほど書き溜め期間に入ります。

ラストの展開とエンディングはもうざっくりとですが書いてあり、後はそれに繋がる山のスローライフ編を書くだけですので、ほぼ完結保証となっております。気長に待っていたければ幸いです


★連載再開しました。この前書きはこの話の更新当時のものです

「また置いてあるわ」


 朝に届く、謎の高級海産物入り宝箱。

 その後も連続で出現。今日で3品目だ。


 2日目はアワロニという高級貝。

 3日目はタラバキングという高級蟹。


 なんなんだ……この日替わりグルメギフト(海産物限定)。

 最高だけど、ちょっと怖い。目的が分からん。


「これは、届けられる現場を押さえたいな」


「美味しかったって、直接本人に言いたいしね」


 やや魔王はズレているが、ともかく犯人?は特定したい。ついでに目的も吐かせたい。

 よって、深夜から張り込みをすることにした。自宅の。


「よし! 今夜は徹夜ね! がんばろ!」


 アシェリーも気合十分だ。夜に備えて、水泳教室は今日はお休みだな。 



 ▽



「すやぁー……」


 日付が変わったころ、魔王はあっさりと陥落。

 俺にもたれかかって寝息を立てている。


「……魔王様はベッドに運んでおきます」

「よろしく……」


 エリサさんがアシェリーを抱えてログハウスに向かった。

 俺たちは海産物贈呈の現場を押さえるべく、少し離れた場所の岩陰からログハウス玄関を見張っていたのだが……


 気合十分だった見張り員の1人が、早々に失われてしまった。

 なんてことだ。


「敵もさるものだな……」


「誰も何もやってませんけどね」


 戻ってきたエリサさんの突っ込み。ありがとう。

 これからは2人態勢だ。


 ざざーん。

 聞こえるのは静かな波の音だけ。


「にしても何の変化も見られないな……」


「……いえ。何か、静かすぎる気がしませんか」


「……!」


 エリサさんの言葉に、緩みかけた気を引き締め、周囲を油断なく警戒する……


 ……


「……変わりなく思えるけど」


「まあ、そうですね。適当な事を言ってみただけです」


 ちくしょー!!



 そして。

 夜明けまで3時間くらい、という頃。

 ついに『やつ』が来た。我々が諦めかけたその時……!ってやつだ。


 海から黒い人影が立ち上がり、砂浜を音もたてずログハウスへと近づいていく。


 手には、大きな箱のようなものを抱えている……

 間違いない。


「犯人はあなたですね!!!」


「きゃー!?」


 いきなり岩陰から躍り出て、黒いシルエットの人物に指をびしっとさしてみた。

 すると犯人は箱を取り落とし、悲鳴を上げてその場に座り込んでしまった。


 あ、あれ?びっくりさせすぎた?


幻光ライト


 照明魔法を使って、照らしてみる。

 そこに居たのは、黒タイツ男、ではなく。


 見目麗しい女の人魚…セイレーンだった。



 ▽



「すいません。最初から説明をしておくべきでしたね……」


 セイレーンの女性は、テレースと名乗った。


 腰から下は例によって魚のものなのだが、それを器用に使って砂地に立っている。

 さっきも歩いてたしな。滑ると言った方が近いか。


 胸は貝殻で隠されている。……なんか、スゴイデカイ。


「つまりあの宝箱は、シーサーペント討伐のお礼、だったのね」


 テレースによると。


 海の底の国で、平和に暮らしていたセイレーンたち。

 しかし数年前……シーサーペントが急に現れ、ここら一帯を縄張りとした。


 セイレーンすらも時おり餌とするため、長らく怯え続ける生活だったという。

 戦うには強大すぎる相手……


 しかしセイレーンたちは、ここから離れる事は出来なかった。


「私どもは、この近海特有のサンゴが作り出す環境でしか、生きられないのです」


「なるほど……逃げたくても逃げられなかったわけか」


 そんな時、たまたまやってきた俺が、シーサーペントを退治してしまったというわけだ。


「おかげ様で、セイ連邦に平和が戻りました。


 民は皆あなた様に感謝しており……


 大恩に報いると言うにはあまりにもささやかではありますが。

 

 毎朝、贈り物を届けることにしたのです」


 セイ連邦。

 それがセイレーンの国の名前か、なんかシャレじみた名前だが……ここは突っ込まないでおこう。


 しかし、この海の底にセイレーンの国があったなんて。

 全く知らなかったな。


「あまりにも違いすぎる種族の交流は、争いの元ですからね……


 私たちは陸の方々には一切知られないよう、静かに暮らしているのです。


 なので……」


「分かってる。誰にも言わないよ、あなた方の事」


 エリサさんも頷く。アシェリーには報告するだろうが、彼女なら大丈夫だな。


「助かります。重ねて感謝、申し上げます」


 テレースはぺこりと頭を下げた。


「贈答品には、問題ありませんでしょうか……


 人間の口には、合わないとか……」


「いやいや全然! すごく美味しく頂いてますよ!」


「なら良かったです」


 ほっとした表情のテレース。


「今回の件、何か不満あってのことかと思い……


 その時はこの身を勇者様に捧げることも……考えておりました」


 え!?

 セイレーンを食べようとか思わないって!


「いや、そういう意味ではないかと」


 エリサさんが微ニヤリの表情だ。まさか。


「民を救った大英雄のあなた様になら、私の……」


 とか言って、テレースは胸の貝殻に手をやった。

 そして貝殻を取り外し……って待った待った!!


「大丈夫! 毎回おさかな美味しいです! 


 これからもよろしくお願いします!」


「そ、そうですか?しょぼん」


 何でちょっと残念そうなの!?


「あ、でも。ちょっと欲しいものがあるんだけど」


「なんなりと!」


 なんか食い気味のテレース。


「セイレーンの世界に、良い肥料ってないかな?」


「……肥料ですか。はあ、ありますが」


 テレースさん、意外な事を聞いたという感じでややぽかんとしている。


「今度、小麦とか農作物を育ててみようと思ってね。


 セイレーンの国に質のいい肥料があるなら、提供してくれるとありがたいなって」


「それなら……明日から海産物と一緒に、お届けにあがりましょう」


「助かる!」


 これで肥料問題は解決しそうだ。


 ということで。

 何故かやや残念そうな顔のテレースを、海へと送り出し……今回の件は全面解決とあいなった。


「とりあえず、何かの罠とかじゃなくて良かった」


 うーんと伸びをする。

 空が明るみ始めていた。もう朝か……貫徹しちゃったな。


「結局、原因は勇者様にあったのですね。人騒がせな」


「……エリサさんは今後、贈答品の恩恵を受けられません」


「ごめんなさい冗談です」


 エリサさんが即答するくらい、あの海産物は魅力的なようだ。


「しかし、良かったのですか? テレースを美味しく頂かなくて」


「そこまで見境なくないです!」


「どうやって成立させるのか、興味あったのですが」


「知らないよ……」


 とりあえず眠い。

 朝ごはんを食べたら、仮眠しよう。


 ……今日の水泳教室は、午後からだな。



 ▽



 そして水泳教室の時間。

 アシェリーの水着が何故か貝殻になっていた。


「こ、こういうのが趣味、と聞いて……」


 はみ出かねない危ない貝殻水着に、顔を真っ赤にした魔王がもじもじとつぶやいた。


 ……エリサさん、いったい何を言ったんだァー!?

お読みいただきありがとうございます!


下のほうにある☆☆☆☆☆への評価・ブックマークなどを頂ければ

大変な励みになりますので、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ