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第20話 海のスローライフpart2

 ばちゃばちゃばちゃ……


 俺は今、アシェリーの両手を掴んで、バタ足の練習をしてもらっている。


 案の定というか知識で知ってるだけで、泳ぎの実践はさっぱりだった。


 なので足の着く程度の深さのところで、練習をしているわけだ。

 準備運動の大切さを教え、肩までつかってもらったり、顔を付ける練習、そしてバタ足のやり方と実践。


 しばしの練習を経て、ようやく形になってきたところだ。


「だいぶ上手くなってきた」


「ほんと! ぶくぶく」


 水飲まないようにな。


「そういや、エリサさんはなんで泳げるんだろ……それも相当の泳ぎ上手だったな」


 同じ魔界出身のはずなのに。


「ばあ、ばの子は運動神経ぶくぶく良いのよねぼこぼこ」


「泳ぎながら無理して喋らなくていいよ……」


 確かに、エリサさんの身体能力はずば抜けている。

 メイドのわりに、戦闘能力も結構あるだろう。


「あの子ば城のぶくぶく大浴場でぼ泳いだりしぼぼ。マナー違反ぶくぶく」


「喋ってる暇があるなら足動かして。もう一往復しようか」


「ぶくぶくー! つかれたー! 


 勇者ちゃんのオーガ! デーモン! あばばばば」


 ……まあ、初めての泳ぎだし。

 今回はここまででいいか。


「ふう……」


「おつかれさん」


 浜辺にいつの間にか用意されていたデッキチェアに体を横たえ、グッタリな様子の魔王。

 普段使わない筋肉を使ったり、初めて尽くしの海の経験でだいぶお疲れな模様。


 しかしエリサさん気がききすぎでしょ。チェアの横にはご丁寧にビーチパラソルまで立っている。

 いつ作った?どうやって?

 あの人、魔王のスキルがずっと発動しっぱなしになってるんじゃないの?


「しばらくひと眠りしたーい」


「わかった。俺はちょっと沖まで行って、魚とか食べられる海草を採ってくるよ」


「はあい」


「リルル、アシュリーを頼むぞ」


 リルルはひゃん、とひと鳴きして、アシュリーの傍にうずくまる。

 そのまま一緒に寝てしまいそうな気もしたが、まあ結界も張ってあることだし心配ないか。


(そもそも、魔王に手を出そうという人間も魔族もおるまい)


 例外はあの三傑だが、あいつらなら遠くからその存在を感じ取れるからな……

 それに不意打ちでも奴らにやられる魔王では、ないか。


 てことで安心してざぶんと海中に潜り、漁を始めることにした。



 ▽



(おお……)


 脳内で感嘆の声を上げる。


 ここの海は透明度が高いようだ。

 青い世界がかなり遠くまで見通せた。

 綺麗なサンゴ礁が広がり、魚の群れがそこかしこに見受けられる。


(海の中ってなんか癒されるよな)


 ゆらゆら漂うクラゲなどを眺めつつ、手ごろな海草をもぎ取ってアイテムボックスへと放り込む。


 息が苦しくなってきたら、逆にアイテムボックスから空気を取り出して補充。

 海へ潜る前に、あらかじめ入れておいたものだ。

 さらへ沖へと向かい、回遊している魚の群れへ近づく。


 アイテムボックスから細身の槍を取り出して投げ、そのうちの一匹を仕留めた。


(こいつはマージという魚だな。もう少し大物が欲しいな)


 クラマグラとか刺身にすると美味いんだが……めっちゃ高級魚だけど。

 海底を這っている8本足のオクトパクスを見かけたが、アレは海が初めてな魔王向けじゃないかも。


 しばらく海底を散策し、海草や貝などを確保して回った。


 ふと気づくと、周囲に居た魚の群れが軒並み居なくなっている。

 そして、自分の立つ海底の周辺がやや暗くなって……?


 上を見上げると、全長20mはありそうな巨大なシーサーペントが迫っていた。


(へびぃ!?)


 巨大な細長い口をかぱっと開け、こちらに食らいつくところをギリでかわす。

 さすがに海中は動きが鈍る……体勢を立て直そうとしたところ、水着の帯がシーサーペントの牙に引っかかり、


「ぐぼ!?」


 そのままシーサーペントの、のたうつままに海中を引き回された。

 シーサーペントは巨大なウミヘビのようなモンスターで、海中を時速30kmくらいで泳ぐことのできる海の怪物だ。


(この辺の海岸、良い漁港とかありそうなのに全く無いのって。


 こいつが出没するせいかもしれないな)


 ……などとのんきに考えてる場合ではない。


(エリサさんの水着が千切れるだろう、がっ!)


 アイテムボックスから愛剣を取り出す。

 そしてシーサーペントの首元に深く突き立て、掻っ切った。

 海の怪物は、首から先を半分切り裂かれた状態でもがいていたが、しばらくののち動きを止めた。


(ちょっと大物すぎるな。それ以前に、こいつは食えまい……)


 基本的にモンスターは、人間が食べられるようなものではない。

 シーサーペントは海へと還すことにした。

 こいつを魚が餌とするなら、また漁もはかどるってものだ。


(水着は無事だな。俺のが脱げても誰も得せんだろ)


 さて、もうあと一回りして、夕方になる前に帰るとするか。



 ▽



 日が傾きかけてきたころ。

 海から上がると、リルルがとてとて走り寄ってお迎えしてくれた。


「大漁だぞ。


 アイテムボックスに全部入ってるから全くそうは見えないだろうけど」


 頭を撫でつつそんな事を言ってると、リルルが何か黒いものを咥えているのに気が付いた。


「なんだいこれ。海草かな?」


 引っ張るとあっさり離してくれたので掲げてみると……

 血の気が引いた。


「アシェリーがつけてた、ビキニの、上だ……」


 と、トラブルの予感がする!

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