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フォレスト王国の太陽と月  作者: 葉月乃 寛
40/71

40 プロポーズ大作戦

昼過ぎまで、ドレス選びやお肌磨きをされ、ツヤツヤに生まれ変わったお姫様たちは、髪を結われ、化粧を施され、先ほど選んだドレスを着て昼食を出されていた。


「今日は、いったいなんなの?がっちりコルセットで締められて、紅茶も飲めないんだけど。」

「うーん、母上がここまで気合入れるって、どうしちゃったのかしら?」

「お茶会に特別なお客様がお見えになるの?」

「そんな話聞いてないし、お茶会も予定なかったと思うけどな。」


小鳥の餌くらいの昼食をとってから、サロンでゆっくりしていると城の入り口が賑わいだした。

「ねえ、ルイーズ姉様の声がしない?」

「そういえば、オスカー兄様とお爺様のお声も聞こえたような。」


サロンへ入る時にレベッカから、呼ばれるまで出てはいけないと言われていたので、様子を見に行くことができない。入り口のバタバタはレオナルド用の客室へ移動していったようだ。何やら机を叩く音まで聞こえてきた。この大きな城でここまで音が聞こえるということは、机は壊れたのではないだろうか?とエレナは考えている。すごーくまずいことが起こっているのか、レオナルドの怒鳴り声が城に響いている。


「許さーん!国王が決めただと?あの馬鹿息子、何を考えておるか!そんなこと、私を倒してから言え!」

「とにかく、決まったことなんです!フローラ様、そいつをさっさと連れて行ってください。」


三人の元へバタバタが近づいて来て、レベッカがドアを開ける。


「エレナ様、どうぞこちらへ。」

「はーい、私ね。爺様に怒られるようなことしたっけな?」


エレナは部屋に残される二人にヒラヒラと手を振って、心配ないよー。と出て行った。太陽の光を浴びて輝きを増しているエレナを、レベッカが急ぎ足でなぜか〈春の庭〉の奥へ案内していく。花の回廊を抜けるとガゼボがあり、そこには誰かが立っていた。紫紺の制服を着ているので一瞬ルイーズかと思ったが、それにしては背が高い。


(え!?リュカ?うそ。)


レベッカはガゼボまでエレナを連れて行くと、そそくさと城の方へはけてしまった。今日のエレナは女神さながらの美しさで、リュカは言葉を失いただ見つめるしかない。


「ちょっと、馬子にも衣装的な目で見ないでよ。無理矢理着せられている身にもなってよね。」

「い、いや、綺麗だ。この世の者とは思えないくらい綺麗だ。」


エレナはいつになく真剣な声で褒められ、顔が赤くなるのを隠そうと下を向く。しかし、リュカが近づいてそっと頬に触れ、美しい顔を上げさせる。


「そ、それより、なぜその制服なの?それに顔、切れてるじゃん。」


ルイーズとの試合でついた頬の傷にそっと触れて、エレナが心配そうに見つめてくる。


「その前に、改めて言わせて欲しい。エレナ、俺たちの未来にどんなことが待ち受けていても、君と共に戦うことを誓うよ。だから、俺と結婚して欲しい。」


リュカは膝をつき、エレナの手をとって真っ直ぐ見つめて返事を待つ。ガゼボの死角にはものすごいギャラリーが固唾を飲んで、プロポーズの行方を見守っている。レオナルドだけは殺意の炎を立ち上らせているが、オスカーが魔法陣で動けないようにしている。


「私、これからリバーへ行くのよ?帰ってこれないかもしれないじゃない。わざわざそんな女にしなくたって。」

「じゃあ、今すぐ二人で逃げようか?俺は君以外は考えられないし、ちゃんと昇級試験に合格して、国王にも婚約を承諾してもらったんだよ。」

「そんな、私がいない所で何勝手なことしてるのよ!ありえないわ!!」

「そうか、ダメなんだね。俺は早く君と一緒になりたくてブロッサムまで来たのに、休むことなくフォレストへ帰れと言うんだね。」


リュカは大袈裟なくらい肩を落とし、ため息をついて立ち上がると、エレナの手をあっけなく離しガゼボを後にしようとした。


「ちょっ!するわよ!結婚するったら!このまま帰したんじゃ喜ぶのは爺様だけじゃない。」


リュカはキラッキラの笑顔で振り返り、さっとエレナを抱き締めた。


「ありがとう、エレナ。君を一生愛することを誓うよ。」


真っ赤っかのエレナとホッとしたようなリュカへ、盛大な拍手が押し寄せてきた。

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