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フォレスト王国の太陽と月  作者: 葉月乃 寛
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2 兄・姉からも愛されているだと

「マカロンってやつは、見た目が可愛いからって優遇されすぎじゃない?作るのに手間がかかるというじゃない?そのくせ、たいして美味し〜!ってほどでもないし。みんな本当にこれが好きで食べてるわけ?マカロン食べてる自分も可愛いって思ってるんだろうけど、マカロンの見た目が可愛いいのと、食べてる人が可愛いのは別問題だと思うわけよ。可愛いと美味しいはイコールじゃないでしょ!!」


あまりの暇さに、世間のマカロン優遇派へ愚痴を言っている。


「うちの可愛いお姫様達がティータイムに何を話しているかと思えば、マカロンを冷遇しようキャンペーンかな?ちょうどよかった、エレナの好きなお菓子を持ってきたよ。」

「オリバー兄様!」


ソフィアの嬉しそうな顔を見て、『うちの妹マジ可愛い!最高!!』と心の中で叫んだのは、長男でオリバーの守護は【土】で能力は【指導者】だ。短めの金髪を後ろに流し、青い目の美男子は王太子にふさわしい出で立ちで、人を惹きつける魅力の持ち主だ。来年に控えた『婚姻の儀』を機に、父親から王位を引き継ぐ予定だ。そのため、忙しい日々を送っているオリバーは、最近ほとんど会えていない年の離れた妹たちをとても可愛がっていて、こうして会えるときはいつもお土産を持って来てくれる。


「ソフィア、エレナ、元気にしてたかい?」

「見ての通り、トラブルもおこさず、大人しくしているところよ。」

「ふふふ。エレナったら、昨日も誰にも言わずに遠乗りへ出かけて、イネスに怒られたばかりじゃない。今日は木に登って、皆を困らせていたわよね?」

「体が鈍ると困るから、準備運動してただけ。トラブルには入らないの。」

「エレナ様、周りに心配をかける方のことをトラブルメーカーと言うのですよ。」


侍女のイネスがオリバーに紅茶を入れながら、エレナを嗜める。


「イネスも苦労が絶えないね。いつも妹達を支えてくれてありがとう。」

「とんでもございません、オリバー様。私が至らないばかりに、エレナ様はいつまでも成人としての落ち着きがございません。」

「そうだねー。でも、そこがエレナの可愛いところなんだよ。たとえマカロンなんか食べなくても、十分可愛いからね。」


そう言って、エレナの頭を撫でてくれる。

エレナは恥ずかしがりながらも、おとなしく頭を撫でられている。

といっても、もうじきソフィアたちも十九歳。オリバーの婚約者とほとんど違わないのに甘やかし過ぎでないか?我が子の時はどうなるのかしら??とイネスは今から余計な心配をしている。


「それより兄様、今日はゆっくりできるんですか?最近はこちらにお戻りになることが少ないから、心配しておりましたわ。」


オリバーは視察や引き継ぎ、会議などで国内を飛び回っているので、城に戻ってもすぐに出て行ってしまうことがほとんどだ。


「相変わらずソフィアは優しいね。ちょっとお爺様の所に行っていたんだけど、二人に公務を頼まれてね。」

「まぁ、そうでしたの。兄様もお忙しいのに、お爺様ったらお手紙ではだめだったのかしら?」


祖父である前国王のレオナルドは砦に引っ込み、前王妃とひっそり暮らしているはずだ。なぜかオリバーが渋い顔をしてるが、レオナルドからの依頼がそうさせているのかもしれない。


「オリバー、ここからは私が話をするわ。」


よく通るはっきりとした声は二人の姉、ルイーズだ。エレナは厄介なことが起きると確信した。


オリバーの翌年生まれたルイーズは、女性でただ一人の騎士団長として、激務に追われている。十歳年上の騎士団の総長フィン・ジラールと四年前に結婚して城を出ている。ルイーズの守護は【風】で【戦士】と【女神】の能力を持っていたが、最終的に【戦士】の能力を優先するようになった。こうして二つの能力を持つ者も少なくないので、最終的に高める能力は本人の自由だ。レオナルド曰く、この国でトップレベルの戦闘スキルを持つと言われているが、とんでもなくエレガントで美しい見た目からは想像できない。それだけ強いと言われたら、オリバーにとっての妹は年の離れたソフィアとエレナだけというような接し方も仕方がないのかもしれない。


「ルイーズ姉様、御機嫌よう。今日も素敵でらっしゃいますわ。」


ルイーズは、銀色の髪をきちんと結い上げ、白い肌に赤い口紅を引き、背景いっぱいに花をしょって庭に出てきた。団長用の紫紺色の制服を着ているが、無駄なものを削ぎ落としたような格好は、余計にルイーズの凛とした美しさを引き立てている。この姿で馬に乗れば、女性であっても振り返って見惚れてしまうだろう。


「私のハミングバーズも元気そうね。エレナがのびのび育ってて安心したわ。こちらでの生活ですっかりつまらない籠の鳥になってはいなかと心配していたのよ。」


そう言いながら、引かれた椅子に優雅に座る。


「私を誰だと思っているのよ。つまらないニート生活に飽き飽きして脱走しそうだよ。」


苛立つエレナに、オリバーもソフィアも苦笑するしかない。ルイーズだけは満足げに微笑んでいる。


「それでは、勇者エレナ様に聖女ソフィア様、お爺様からの依頼を承っておりますので、しっかりとお聞きくださいね。」


ルイーズが少しでもエレナを楽しませるように話し始めた。


「今度、リバー王国の王太子が即位するにあたって戴冠式が行われるようなの。まぁ、うちとしては関係ないと言ってもいいんだけど、戴冠式への招待状が届いてしまったから知りませんとも言えないのよ。で、何を思ったかフォレスト王国の姫君を招待したいとあってね。もちろん会議になったんだけど、お爺様があなたたちを行かせればいいって言っちゃったわけ。私たちも止めたんだけど、長期的な不在が許されて、すぐに動けるのはあなたたちしかいないでしょ?だからね、ちょっと顔出してペコっと挨拶してくるだけだから。」


「私たちでお役に立てるのなら、全然かまいませんわよ。ねっ、エレナ。」


エレナは厄介ごとを持ち込んだ狸のしたり顔を想像していた。


「決定事項なんでしょ。ニートの私に拒否権はないよ。」


諦め半分で承諾する。


「そんで、なんでユーゴまで城に来てるの?しかも馬車で。」


エレナのアンテナに何か引っかかったようだ。

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