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フォレスト王国の太陽と月  作者: 葉月乃 寛
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1 エレナとソフィア

この世界は、〈光の泉〉を取り囲むように6つの陸地で形成されている。一番北に位置するチル氷山から時計回りにロック帝国、その支配下のマウンテン王国とリバー王国。そして独立国のブロッサム王国とフォレスト王国がそれぞれの陸地を治めている。〈光の泉〉を侵略すると、チル氷山が崩れ、全ての陸地は水の底に沈むと言われているので、泉を渡っての行き来はできない。泉といってもその規模は広大で、簡単に行き来できるわけではない。


エレナ・モンターニュと双子の姉ソフィアは、フォレスト王国を治めるモンターニュ王家のお姫様だ。

双子といえど性格は対照的で、姉のソフィアは穏やかで気配りのできる優しい子。母譲りのウェーブがかった銀色の髪はサイドを編み込んでハーフアップにし、今日は瞳と同じ青色のシンプルなドレスを着ている。

一方のエレナは明るく活発で物怖じしない正直な子。父譲りの輝く金髪で、性格と同じ真っ直ぐな髪は後ろできっちり一つに結んでいる。乗馬用の黒いパンツとブーツに白いシャツを合わせて、一般的なお姫様とは思えない格好をしているが、寛容な両親は髪型も服装も本人の好きにさせている。


そんなお姫様二人はこの国での成人式にあたる『誓いの儀』も済ませたにもかかわらず、国名になるくらい緑豊かな森に囲まれた城の庭で、穏やかなティータイムを過ごしていた。


「暇だねー。こんな暇でいいのかねー。誓いの儀が済んだらバリバリ働かされると思っていたのに、肩透かしだよ。」

「エレナ、お爺様やお父様のおかげで平和を維持できているのよ。そのことに感謝しなきゃ。今だって貢献先の準備期間として待機中なのよ。」

「待機中ねー。いつ戦争になっても大丈夫な戦力を整えているように見えるけど、これが平和と呼べるのかねー。」

「もしもの時に備えているのは、国民を守るためでしょ?」

「あー、それだけかな。。あの狸がそれだけのために私を訓練したとは思えないけど。」


フォレスト王国の国民は全員六歳で守護認定を受け、七歳から十二歳までは初等教育として王国の歴史を習い、守護について学び、守護の力をコントロールする術を身につける。初等科卒業の年に潜在能力の仮認定が行われ、次の三年間の中等教育へ進む。初年度は能力や成績に関係なくクラス分けされて基本的なことを学ぶが、二年目は能力ごとにクラス分けされ能力の専門性を高める教育がされる。最終学年では各能力の成績順に五つのクラスへ分けられる。そして卒業と共に守護と能力の正式認定がなされる。ここまでの教育費や医療費は、国によって無償化されている。

十六歳からの進路は自由選択で、さらに能力を高めるために高等教育へ進む者や、能力に応じた社会貢献先へ就職する者など様々だが、だいたい十六歳から十八歳で能力を発揮できるか試される。もちろん向き不向きもあるので、この三年間はいろいろな学問や就業場所を試すことができる。そして十八歳を成人とし、『誓いの儀』によって社会貢献先を決定する流れだ。

王族であっても遊んで暮らせる者はこの国にはいない。誰しもが国のために働かなければならない。そして一般国民が中等教育を受ける時期、王族だけは王都から離れた砦と呼ばれる前国王の領地で、王族の指針や戦闘における知識、護身術を習得する。


エレナは砦での訓練期間に祖父から護身術以上の戦闘技術を叩き込まれた。ソフィアは護身術とは別に、どんな場所・状況からでも脱出できる逃走技術を身につけさせられた。そんなソフィアはのんびりそうに見えて、かなり足が速い。訓練期間中は王都に戻ることも許されず、両親も誕生日にしか二人の顔を見ることはできなかった。


「エレナ!お爺様のことを狸だなんて、そのように呼んではいけませんよ。」

「はいはい。」


エレナは面倒くさそうに、テーブルのお菓子を弄んでる。


ソフィアの守護は【月】で能力は【聖女】、エレナの守護は【太陽】で能力は【勇者】と認定された。通常、一般的な『守護』は大きく分けて四つ【火・風・土・水】で、【月・太陽】は王族からしか生まれない。そのイレギュラー枠であるにも拘わらず、同時誕生は前代未聞だった。

そして、【聖女】の誕生は数百年ごとにしか現れないという。【聖女】は厄災を払い、平和を司るとされ、国宝として位置付けされる。

一方の【勇者】は王族から定期的に誕生してはいるが、女性での認定は初めてのことだった。【勇者】は国を平和に導くとされ、こちらも珍重される能力だ。

二人が守護を認定された後に開かれた緊急有識者会議では、月と太陽の影響力は強く、周りの守護に歪みが発生するのではないかと結論づけられ、然るべき時まで二人を国外へ出すことが禁じられた。そして、二人についてのそれ以降の情報は極秘扱いとなった。


それを知ってか知らずか、エレナが食べもしないお茶菓子のマカロンを手に取った。

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