吾輩は猫という魔物である
初投稿です。
思いつきで書いたため、意味のわからない文章や誤字脱字があるかもしれませんが暖かい目で読んでいただけると幸いです。
吾輩は猫という魔物である
吾輩は猫である。いや、吾輩はネコという魔物である。
親は魔物を生み出す魔祖の木だ。
魔祖の木は生まれる前の俺に教えてくれた。
この世界の魔物は各地にある魔祖の木から生まれ、巣立っていく。
ネコという魔物は珍しく200年間生き続けた魔祖の木だけが生み出せる伝説の魔物で、魔力が他の魔物と桁違いだそうだ。
俺の母親の魔祖の木は誇らしげに言った。
……さあ、行きなさい我が子よ。その魔力で人間を混沌の世界へ引き摺り込むのです。
――――――
生まれた森から巣立った俺は息を吐く。
俺はネコ。鳴き声は恐ろしいほど低い。
可愛い容姿をしているのに声は低いんだ。ちょっと衝撃的だ。
俺は人がいるところを目指して歩く。
人の魔力と人間の魔力って違うから探しやすい。
魔力が僕は人間ですよ〜って言ってる。ウケる。
俺はネコの体を楽し見ながら進む。
木に登ってみたり、鳥の魔物に戯れてみたり。
楽しい!
この森にはどうやら魔物しかいないみたい。
意思疎通ができる魔物は魔力が高く、人語を話す魔物はもっと魔力が高いようだ。
要するに弱い魔物ほど自我がないと言うわけだ。
俺は魔力が強いから喧嘩を売られることはなく森を歩けた。
このあたりの魔物は意思疎通ができないな。
人里に近くなってるようだ。
それから少し歩くと村のようなところが見えてきた。
とても綺麗とは言えない貧しそうな村だ。
最初に出会う人間はどんな奴なんだろうな。
そう思って村を目指していた俺の耳は微かな声を拾った。
ん?何か泣いている?
微量だが人間の魔力を感じられた。
声に導かれて村とは逆は方向に向かう。
そこには魔木が子供を体の中に取り込んでる最中だった。
魔木はブルーツリーという名前で名の通り青い木だ。木の幹が青いため毒々しい外見をしているが、寂しがりやで人間や動物を自分に取り込んで安心を得ている。と言うのは嘘で、魔力を養分としている魔木だから普通に食事だろうな。
あいつは弱いから意志疎通はできない。
食事を邪魔するのも悪いか……と思って村へ向かおうとしたが、子供を見た瞬間気が変わった。
可愛いなあの子。
黄緑色の髪を右耳の下で1つにまとめられており、目は濃い緑。
縋ったような目で俺を見る。
というか、俺のこと気づいてたんか。
子供の口が助けてと動く。
仕方ない。助けよう。何しろ可愛いから。
俺はささっとブルーツリーの側によると爪に魔力を溜めて思いっきり引っ掻いた。
もちろん子供を避けて。
魔木はバラバラになり魔石を落として消えた。
まあ弱い魔物だしな。簡単なもんだ。
子供はポカーンとした後、俺を抱きしめ泣いた。
うん可愛い。
良かったね助かったねー。
子供は満足するまで泣くと「ありがとう」と笑った。
どういたしましてー。と気持ちを込めて鳴く。
「ふふっ変な声だね!」
そうだろー?俺もそう思うわー。
でも笑ってくれて良かった。
さあ暗くなる前に村に帰ろうか。
子供の前を歩いて村まで連れて行くと、村の入り口で揉めている集団がいた。
「ミリーを助けにいく!!」
ボロい服を着た若い男がそう叫び村から出ていこうとしているが、他の男たちが必死に止めている。
「無理だ!ミリーはもう魔木に吸収されちまってる!お前まで死ぬぞ!」
「離してくれ!ミリー!」
ミリーは多分この子だ。
そして彼は……「お父さん!」そうお父さんだ。
ミリーは走っていく。短い足で頑張って走ってるのが可愛い。
俺は静かに後ろで再会を見守る。
「ミリー!!」
「お父さん!!」
親子は泣きながら無事を喜びあっているが村人たちは混乱していた。
「どうやって助かったんだ……?」
村人には手に負えない魔物らしい。
「助けてもらったの!」
そう言ってこっちを向く。
俺も魔物なんだけどなー。
「な、なんだ、あの魔物はっ!」
見たことないぞ!と村人は騒ぎ出し、一気に警戒体制に入る。
村を引っ掻き回して遊ぼうと思って来たけど、ミリーがいる村はそっとしておいてあげたい。
ミリーは父親に引っ張られていく。
「ありがとーー!」
「なーぉ」
どういたしまして。
俺は返事をして笑ったミリーに背を向けて村から離れた。
――――――
それから何日か経ったが、まだ俺は森から出られない。
あれ?俺って方向音痴だったのか?
ここの近くだとあの村にしか辿り着けていないんだけど。
まあいっか。俺生まれたばっかりだし、焦る必要なんてないよな。
木の根元で休んでいると複数の人間が近づいてくる。
俺は相手をするつもりもないので目を瞑って無視した。
あの村より魔力が強い人間のようだが、俺に構ってきたら切り刻んでやる。
そう思ったが人間は息を殺して通り過ぎて行った。
しかし生臭い匂いがするなこいつら。
「あ、あれ……ネコじゃ……」
「な、そんなわけないだろっ……危険度⭐︎4の魔物がこんなところにいるわけ……」
「静かにしろっ、刺激するな。」
会話はバッチリ聞こえた。
残念だが危険度⭐︎4の魔物が俺だ。
悪かったなこんなところにいて。
俺だって、もっと面白いところに行きたいわ。
あ!あいつらについて行けば良いんじゃないか?
俺頭いいな。
っよしそうしよう。
俺は男たちにバレないように後ろをついて行こうと思ったが、彼らから血の匂いがしたのも気になった。
ここらじゃあの村しか知らないからミリーが心配だな。
魔物が人間を心配しても仕方ないけど、でも気になったから村の様子見に行ってこよう。
思い立ったが吉日ー。
俺は男たちじゃなく村へ向かった。
村に近づくに連れてどんどん血の匂いが強くなる。これはやばいかもしれない。
そう思い走って村へ入ると、男たちが倒れている。
血は流れているが死んでは無さそうだが、意識が無いものがほとんどだ。
俺はミリーの魔力を探すが、村の中にはいない。
まじか。ミリーどうしたんだ?
「アンナ……ミリー……。」
ミリーの父親の声だ。
「……君は……ミリーを助けてくれた魔物……?」
俺はこいつに話を聞くことにした。
さっきの男たちはきっとこの村を襲ったのだろう。
詳しい話が聞きたい。
初めて人間に意志疎通の魔法使うから緊張する。
『ミリーはどうした』
俺の声に驚いた顔をしたがすぐに真剣な顔になる。
「……お願いです、ミリーを私の妻と子供を助けてください。」
足と腕に大きな傷があるミリーの父は地面に倒れたまま涙を流しながら頭を下げた。
下げたというか、頭を地面に擦り付けた。
砂利に頭を擦りつけるから額にも傷ができる。
これを見たらミリーに泣かれてしまうじゃないか。
それは嫌だな。
ミリーの笑顔が可愛いんだ。
俺は体に魔力をためて、体の中で魔力を魔法に変えて口から放出した。
その魔法は目の前の男の体を包み光る。
俺がこの魔法を使えるようになったのは偶然だった。
遊んでいたら足を滑らせて崖の下に落ちた時に、誤って巻き込んでしまった可愛いシフォンバードという魔物に慌てて魔法を放出したらできてしまった。
回復魔法
ミリーの父親の傷はみるみるうちに消えていく。
痛みが消えていくことに驚いている彼にもう一度同じ質問をする。
『ミリーはどうした』
ミリーの父親はすぐに起き上がり説明しだす。
どうやらさっきの男達は人攫いらしい。
この村の女、子どもは全員攫われたようだ、
近くの街で奴隷商に売ると言っていたと血が出るほど拳を握りしめて唸る父親。
他のやつはどうでもいいが、ミリーに手を出したことを後悔させてやろう。
とりあえず俺の分身の黒いネコを20匹ほど作り出す。
何しろオレが一匹で探してたら絶対見つけ出せないだろう。
ミリーを探せ
命じて俺は父親に言う。
『心配だろうが、俺に任せろ。お前に何かあったらミリーが泣く。村から出るな。』
もし約束を破ったらミリーは俺がもらう。
そう脅すと、父親はお願いしますと頭を下げた。
俺が村を出ると、分身から報告がきた。早いな。
もう馬車に乗せられて街道に出るところらしい。思ったより動いている。
俺は分身に導かれるまま、ちょっと本気で走った。
街道に出るとちょうど馬車が目の前を走っていく。
あれか。
俺が追いかけようとした途端、地面がぐらついた。
地震のような揺れと地響きとともに強い魔力を感じた。
なんだ?
強い魔力は揺れた地面の中から感じる。
地の魔物か?
馬車は揺れに耐えられず倒れる。
馬車から数人の厳つい男達が出てきて、馬車を置いて走り始める。
「や、やべぇ!ジャイアントホーンだ!!」
「逃げろ!!」
動くものを追う習性があるのか、狙われたのは人攫いの男達だった。
地面から出ててきたジャイアントホーンはパッと見た感じサイだった。
巨大なサイ。灰色の皮はつるっとしていて硬そうに見える。
しかし男達を捕らえたのは長い細い舌だった。アリクイかな?
人攫いは次々と叫び声をあげてジャイアントホーンに食べられていく。
人間って美味しいのか?
そう疑問に思うぐらい美味しそうに食べている。
が、見てるだけじゃだめだ!
ミリーとミリーの母親を助けに来たんだろ俺。
俺はすぐに馬車に近づき荷台に入ると、女と子供が檻の中で泣きながら身を寄せ合ってる。
その中にミリーっを見つけた。
なーぉ
俺が鳴くと一気に視線を集まった。
「あ!魔物さん!助けに来てくれたの!?」
ミリーは泣き腫らした顔で目を輝かせた。
「そんなわけないでしょ!」
そう言ったのはミリーの母親でもない若い女。
魔物なのよ!?
うん、別にお前を助けに来たわけじゃない。
『俺が助けに来たのはミリーとその母親だけだ。』
そう言うと他の人間は息を呑む。
人間を助けて俺が得をするとは思えないし。
他を置いていけば、ミリーは簡単に助けられるだろう。
「皆、村の仲間なの!皆も助けて欲しいよ……。」
ミリーが悲しそうに言う。
ゔ……可愛いな……
魔力を込めた爪で鍵を壊し檻の扉を開ける。
鉄製なら難なく壊せるようだ。
『……俺はミリー優先だ。助かりたいなら勝手に乗れ。』
そう言って俺の分身達を1つの真っ黒で大きな馬車に変える。馬車を引き連れて走るのも俺の分身だ。
ミリーは母親の手を引っ張って馬車に乗り込むと、他の女や子供も怖々乗っていく。
リリーも合わせ全員で10人だ。小さい村だからな。
俺は全員乗ったのを確認すると、村へ届けたら俺のところへ帰って来るように言って馬車を出発させた。
馬車が森へ入っていくのを見送ると息を吐く。
俺の分身なら弱い魔物は来ないだろうし、無事村までつけるはずだ。
俺はそのままトンズラと言う訳にはいかない。魔力で俺がいることはジャイアントホーンも知っているだろうし。
『悪いな、食事の邪魔して。』
『いや、魔力の強い人間が目的だったからな。別にいぞよ。』
ぞよ?
『……そうか、そりゃありがたい。じゃあ俺ももう行くわ。』
『待て。久しぶりにネコを見たと思ったが……魔力の割に弱々しいネコだな。』
ジャイアントホーンの目が怪しく光る。うん、これは俺狙われたかな?
『まぁ、つい最近生まれたばっかりなんでね。』
『……そうか。ではお前の魔力をくらってやろうぞよ!』
やっぱこうなるよなっ!!
少し離れていたがすごい勢いで近づいてきて、長い舌を俺に伸ばす。
身軽な俺は上に避けて、爪に魔力を込めて背中を斬りつける。
っ!!
爪が弾かれる。硬いな。
もういっちょ!
やはり弾かれた。
まだ完璧に魔力を操れない俺はまだ部位強化と回復しかできないんだよな。
困った。見た感じ硬そうだとは思ったけど、思った以上に硬い皮膚だ。
さてどうするか。
俺は舌から逃げながら次の手を考える。
皮膚がだめなら体内か。いやあの口に入るのは嫌だな。
その前になんとかしたいなー。
『ちょこまかと小賢しい!』
地面に着地した瞬間、地面が揺れた。
地ならしをされてバランスを崩してしまう。
それを狙ったらしいジャイアントホーンは俺の足に長い舌を巻きつけた。
あ、やべっと思ったときにはもう宙ぶらりん状態だった。
そのまま口に運ばれて行く。
考えろ俺。とにかく皮が硬いなら中から攻撃した方がいいだろ?
口の中に直接攻撃するとするなら、何が効果的だ?
魔法、魔法で攻撃するとすると何がいい?
少し焦っていると自分の魔力が一気に回復したのがわかった。
ミリー達を無事に村まで送り届けたのだろう。俺の体に分身達の魔力が帰ってきたのだ。
考えながら体に魔力を溜めていく。
イメージは赤。ぐるぐると魔力を一つに大きく。
ジャイアントホーンの大きく開いた口が間近に迫ったとき、俺の体が開かれた口に対して正面を向いた。
俺はイメージして溜め込んだ赤い魔力をジャイアントホーンの口に放射する。
そう!イメージは炎!
俺の口から吐き出された魔力は赤い塊となって口に落ちていった。
え、あれ炎か?
と思った途端、ジャイアントホーンは苦しみだして俺の足に絡まっていた舌は外れた。
空中に投げ出されたが、体を捻りうまく着地する。
さすがネコ。素晴らしい体の作りだ。
ジャイアントホーンはその場に倒れて動かない。周りには焼け焦げた臭いが漂っている。
俺は興味本位で恐る恐る近づくと、ジャイアントホーンの体は赤い液体に半分以上飲み込まれれいた。
え、何これ。
飲み込まれたと言うより、焼け溶けている。
そしてそのままジャイアントホーンが全てとけた瞬間、赤い液体は黒く固まったのだ。
え、これマグマ?溶岩?
赤く強いイメージをしたら炎でなく溶岩だったらしい。
俺も驚愕案件だわ。
黒く固まった溶岩の上にはジャイアントホーンの魔石が一つ。
土属性だから琥珀色の魔石だ。飴っぽくて美味しそうだ。
とりあえず、固まった溶岩が熱くないか前足でちょんちょんと触り大丈夫なのを確認すると登って魔石を咥えた。
咥えたが取れない。
よく観察してみると、魔石の下が溶岩に埋まって取れなくなっていた。
じゃあ味見だけしよう。
溶岩に埋まってない部分だけ齧りとった。
あ、うまい。
俺は魔石でお腹いっぱいになった。
……なんとか倒せたし、魔石も食べて満足したし。
攻撃魔法みたいなのも使えるようになったし、街道に出る道もわかったし。
やっとこの森から抜けられる。
このまま街まで行こうかな。
……いや、ミリーの顔見て無事を確認してからにしよう。
最後にあの笑顔見たいし。
――――――
村に着くと、みんな忙しそうに動いていた。
その中にミリーもいる。タオルや包帯のような長い布を持って母親の後を追って怪我人の処置を手伝っている。
村人に何か言われては、笑顔を見せるミリー。
やっぱり可愛い子は笑顔が一番だな。
しかし俺が行ったところでどうするんだ。
所詮俺は魔物だ。村に入るわけにもいかない。
ミリーの笑顔が見れただけでよしとするか。
せっかくここまで来たが、挨拶せずに行くとしよう。
俺は村に背を向ける。
「魔物さーん!」
!!
心臓が止まるかと思った!
振り返ると村の入り口にミリーの両親が立っていて、ミリーはこっちに走ってくる。
「魔物さん!助けてくれてありがとう!」
そう言って笑って俺に抱きつくミリーに俺は感極まって擦り寄ってしまった。
癒される。
どういたしまして。
なーぉと鳴く。
ミリーはこれお礼よ、私が作ったの!と言って俺の首に小さな巾着をかけてくれた。
ん?少し重い。
ミリーは、中には村長が昔見つけた珍しい魔石が入ってるの!と教えてくれた。
いや誰だよ村長。会ってねえぞ。
どんなやつかもわからんが、ミリーが作ったという巾着は大事にしよう。
ありがとうの気持ちを込めてもう一度鳴くと、今度こそ村に背を向けた。
さあこれから何処に行こう。
まずは街道の先にある街へ行こうかな。
俺は可愛い容姿に低い鳴き声、魔力が多い危険度⭐︎4のネコだ。
今更言うのもあれだが、前世の記憶を持って生まれた人間びいきの魔物だ。
吾輩はネコという魔物であり、この世界で旅をする冒険者だ。
end
最後まで読んでいただきありがとうございました。