19 GW6日目
明け方、Mvanの中で目を覚ます。隣には弥生がというよりも、俺が抱き枕のように弥生を抱いていた。
弥生は、俺が起きるよりも早く目を覚ましていたのだろうか?顔は赤くなっている。
「お、おはよう、ございま、す」
「おはよう。ごめん、苦しかった?」
「嬉しいです。昨日は、いつの間にか先に寝ちゃったみたいで」
「可愛い寝顔だったよ」
「おはよーよういち、やよいもおはよー」
「おはよう」
「コロちゃんおはよぅ」
車から外へ出るとまだ薄暗い、朝日が出る前の様だ。
「散歩行こうか」
コロと弥生を連れ出し浜辺へ歩く。静かな波の音と鳥の囁く聲、微かに感じる風が気持ち良い。
海から太陽が覗かせる、立ち止まり眺めてると、横に弥生がやって来て腕を絡ませる。頭の上にはコロ、フル装備には片腕が寂しいな。なんて馬鹿な事を考えてると、何故か腕をつ練る弥生サン。
「戻って朝ごはんにしようか?」
話題を変え誤魔化す事にした。
「もう!」
顔に出てるのカナ?
『出てるよ』
コロにまで指摘されるんだ…。気をつけよう。
車に戻り朝食の準備だ。お湯を沸かし、コーヒーミルで、ゴリゴリゴリ………。
今日はパンなのでコーヒーを挽いてドリップする。
パンは竹原の町並み保存地区の入口付近の村上さんで、購入していたのでアイテムボックスから出しておく。
カレーパンは少し暖めたいので、ホットサンドに挟んでコンロにかける。少し焦げ目が付くくらいで取り出す、二つにすると中から芳ばしい香りと湯気だ。
「「「いただきます」」」
外で飲食するだけで、旨さは3割増しだな。
食後の片付けを終了したので、早速シーカヤックをレンタルすることにする。服装は作務衣のままだが、落ちなきゃ大丈夫だろう。ライフジャケットも義務で付けるので最悪塗れるだけだ。
「出発だ!」
「はーい」
「はい!」
二人を乗せ最初は押して、跳び乗る。ブレードを手に持ち漕いで見る。
「結構スピード出るもんだな」
「だよね!レベルアップのおかげかな?」
「それはあるかも」
「弥生も漕いでみなよ」
「うん!」
弥生が小柄で、俺は普通の中肉中背だが、弥生一人でも結構進むもんだな。俺も一緒になって漕ぐと結構なスピードになり沖に出てくる。
「余り遠くに行くと怒られるかな?」
「そうなの?」
そういえばコロは海水平気だった?」
「浮きやすいね」
海水に浮かんで見せては、ぴょんっと上って来る。
「よういち、やよい何か来るよ!」
「な!此処で」
「足場無いよね、少しでもリーチがある槍欲しいよぉ」
マップを確認すると。
「うお!多いぞ」
「コロ、GLOCKと刀だ!弥生は向かって来る敵だけで良いから無茶するなよ」
「うん!洋一さん」
コロがGLOCKと刀になり夫々の手に渡る。
「コロ、MP切れそうになったら早めにお言ってくれ!」
「りょーかい」
先ずは先制だな。指先に魔力を貯める。群れの大きな位置へMP8を使う気で放つ!!
〈経験値を獲得〉☓47
〈只野洋一 LV8〉
〈コロ丸 LV7〉
〈大善弥生 LV5〉
〈念話 LV2〉
〈NEWSKILL 付与LV1〉
〈大善弥生 LV6〉
「これで1/10位しか減って無いな」
「何やってるの洋一さん!またニュースに出るよぉー」
「あ!やってしまった…」
うん?赤点が逃げている。先程の一発で引いてくれたなら良いけど、他へ被害が出なければ。
「逃げてるね?!」
「よういちのうっかりが良かったの?」
「海の上は不利だから仕方がないな、放っておくか」
陸に戻るとするかな。シーカヤックで余り遊べ無かったが良しとするか。
「洋一さんの攻撃で終わったから、魔物の正体不明だよ」
「群れだからマーマンとかの半魚人じゃ無い?」
「洋一さんの一発で私もレベルアップしたし、新しいスキルも覚える事が出来たよ」
「そうなの!?見ても良い?」
「良いよ」
鑑定して見る。
付与LV1
武器、防具、道具に属性付与。効果時間1分。
「イイね!コロ武器に出来るか試してみなよ」
「そうだよね!やってみる」
エンチャント火MP-3
「コロちゃんが武器として認識されるのが複雑だよぉ。友達なのに…」
「そこは、ゲームみたいだと思いなよ。別に弥生がコロの事を道具扱いして無いのは、俺もコロも知ってるよ」
「うん。やよいは友達だよ」
「ありがと。二人とも大好き!」
「お客さーん大丈夫ですか?」
陸が近くなったので店員さんの声が聞こえてくる。
大丈夫だと返事をし、突然爆発したのだと告げておく。見えて無い人に説明しても電波君だと思われるからな。
濡れてしまったのでシャワー棟へ行って着替えてくるか。
当然、俺は待つよね。女の子仕度は男よりも長い。俺は別の作務衣に着替えてたけど、弥生はコロと一緒にシャワー室行ったから水分吸収係だな。道具扱いしてないよな?
その後チェックアウトを済ませ、大崎上島の市街地にやって来た。
車を走らせていると気になったので少し寄ってみる。
「ちょっと寄って良い?」
「私も気になったので」
車を止めて入って見る。秀ちゃんの農園らしい。此処では蜜柑狩りやいちご狩り体験が出来るそうなので、二人分でお願いして見る。
蜜柑ハウスの中へ入ってみると、シーズン終わりなので殆ど実がないがちらほら実ってる。因みに2月が旬だそうだ。
柑橘の女王せとか、らしい。広島に居ても知らなかった。一つ取って、そのままかぶりつく。低農薬らしいのでいけるかなと思ったが、驚かれた。
「え!そのままなの?」
「ははは、お兄さんは躊躇せんのんのぅ」
昔から合わなかったら直ぐ下って排泄するので気にした事ないので。
「皮が薄いし甘いなこれ、うまい!」
「ははは、彼女はちゃんと皮取ってからでも良いんじゃけぇ食べてみ」
「そうします。……おいしい」
「せとかってまだあります?お土産に欲しいので一箱下さい」
「ええよ。気にいっとんなら、もいで来るけぇぶらぶらしときんさい」
店員さんが見えなくなったので、コロにもお裾分けしておく。
「洋一さん、一箱って結構有るんじゃ無い?」
「お土産に、会社で配れば直ぐ無くなるよ。弥生も職場に持っていきなよ」
『これ甘くて少し酸っぱくておいしいね』
その後、農園を後にして市街地をブラつくが、昨日の南に側に比べて観光施設が少なかった。
「南側の古い町並みも行っとけば良かった」
「また今度、一緒にいこうね」
そうだな、また今度行こうと思う。買物も済んだので家路に向けて帰るとするか。