18 GW5日目
無事?に大崎上島の白水港着くと、誘導に従いフェリーから車を出す。
車の窓を全開して、肌で風を感じる。
「良い天気だ」
「………」
「気持ちいいね」
弥生はテンション下がっちゃたか、勢いとはいえオッサンと接吻したからとか?嫌だった?調子に乗ってスマン。
『やよい元気無いの?』
『恥ずかしくて洋一さんの顔見れないよ!どうしようコロちゃん』
『嫌だったの?よういちの事、嫌いになった?』
『船の上でキス。初めて好きになった人に、私の初めてのキスだし、変な顔になって無かったかな?いっぱい冷やかされたけど、嫌味じゃくて微笑ましく思われたのが恥ずかしかっただけだし。嫌じゃないし、大好きだもん!』
『良く分からないけど、元気な顔見せて上げないと、よういちが落ち込むよ』
「そうだよね!ありがとコロちゃん」
「うん。皆、仲良くね」
「ごめん洋一さん!もう大丈夫。私のファーストキス貰ってくれてありがと」
「え!ごめん。こんなオッサンと初めてを申し訳無い」
「謝らないで、洋一さんだからあげたの!もう、ほんと鈍いんだから」
「最初からよういちって、そうなんだよ」
「やっぱりそうなんだね」
「私は、洋一さんの事好きです。絶対離れません!振り向かせるし、好きになって貰うもん」
「物好きだな、まあ〜あれだ、がんばれ」
年の差あるし、そのうち冷めるかな?
「何で他人事なの!?もう、洋一さんらしいよ」
車は途中曲がり、島の南側に向けて国道358号線を南下して行く。帰りはこっち通らないから景色を堪能しないとな。
景色が良い場所で停まっては、スマホで撮影したり現地の人に頼んでツーショットを撮りつつ、人目が無い場所ではコロが写真を撮ってくれる。
相変わらず仕組みは知らんが、コロだけはレンズに写らないのが寂しい。それから目的地の大串のキャンプ場へ。
「受付け終わったよ」
「素敵な景色に洋一さんと、夕日を見ながら…。キャー!」
トリップ中だったのでそっとしておく。
隣にトリップ中の弥生を乗せ、そのまま車を移動し本日泊まる場所まで。
場所が決まり停車する。GW一般はもう後半なので人が少ないのはラッキーだな。
このMvanにはサイドタープを付けて無いので、防水のレジャーシートをルーフラックに取付けポールを立てる。ポールの先端にロープを固定し、地面に刺したペグにロープを掛けテンション張りで完了。日除に簾も掛けておく、和風な趣きが好きなので、ついでに作務衣に着替えれば終了だな。
「洋一さん、いつの間にか着替えてる!」
トリップからご帰還だ。
「こっちの方が楽なんだよ」
「私も着る!小さいサイズ無いの?」
Sサイズが間違って届いたのが有るけどまあいっか。
「ほい、色はこれだけど良かった?」
「お揃いだからカーキでも気にしないよ、今度私も買っとこっと!」
車の中で着替えるので窓にシェイドをして一旦出ておく。
「おまたせ」
弥生は小柄だから、Sサイズでも少し大きいけど問題なさそうだ。
「うん、似合ってるな」
「相変わらずのセリフ、有り難うございました」
もう少し褒め言葉勉強しとこうかな?
「明日はシーカヤックに乗るからな。予約もバッチリだ」
「まだ寒く無いですか?」
「水温はまだ冷たいから落ちるなよ!落ちなきゃ外は温かいから大丈夫だ」
「落ちないよぉ」
少し早いが夕飯の仕度でもするかな?食材を持って炊事棟へ向かう。二人で料理をしといってもメインは弥生だな。
沢山有るが余ってもコロが食べてくれるから大丈夫だ。
「「「いただきます」」」
早速、ハマチの刺身に手を付ける。山葵を少しのっけて醤油も少しつけ、頂く。
…うまい。脂のノリは控え目だったので、しつこく無くさっぱりだ。
そこへ、竹原の道の駅で購入した竹鶴秘傳を流す。竹鶴の定番酒なのでリーズナブルな価格だが、昔ながらの味わい深い一本筋の入った軽快な酸味が食欲を沸き立たせる。
弥生にも御酌する。
「晩酌に良いですけど、また飲み過ぎそうだね」
勿論コロにも注ぐ。
パエリアの具材に蛤を使ってるので、それも肴にする。車海老と牡蠣はカセットコンロの上で弱火でじっくり焼きながら頂く。本日は魚介ばかりのメニューだがそれが良い酒が進む。
空を見上げると、オレンジの日が海に沈んでいく様が見える。酒の肴には良いが、先程、弥生がトリップしていたムードとは程遠いだろうな。
悪酔いする前に、今日は、呑むのを止めようかなと思うが…。弥生が出来上がってたりしていた。
「洋一さ〜ん、チューしてー」
弥生は甘えん坊になるのか。自分が座ってるローチェアは、胡座が出来るタイプなのだ。釣りをする時にも愛用している。
今は胡座の上に、弥生が座りながら呑んでいる。
「コロ、悪いが後は全部食べて綺麗にしてもらえる?」
「そうだね、やよい酔ってるから片付けできないね」
弥生の頭を撫でながら、星空を観る。周りに光が少ないので良く見えるな。
綺麗になった食器等をアイテムボックスに納めると、弥生をお姫様抱っこして浜辺まで歩く。
腰を下ろし、波の音を聴きながら緩い時間を楽しむ。暫くすると抱っこしてた弥生の寝息が聞こえる。
「やよい寝ちゃったね」
「そうだな、昼間ははしゃいでたしな」
「泣かしちゃだめだよ」
「努力はするが、長男と歳がかわん無いんだよな」
「関係ないよ」
一人の女性として見るには、まだ時間が足りないだけなのか。
子ども扱いしてるのがいけないのか、それとも……。時折ギュっと抱き付いてくる弥生の頭を撫でながら夜が深ける。