<悪役令嬢からのラブレター>
お見舞いの時にシルヴィオに持って行った、ルチアの渾身のラブレターです。
夜に詩人気分でノリノリで書いたものの、朝になったら恥ずかしくなる類のものです。
抹消したいけれど、シルヴィオが大切に隠していてできない、ルチアの黒歴史。
私の希望、私の全て、愛そのものであるシルヴィオ様へ
時候のご挨拶は省略させて頂きますことをご了承くださいませ。
そんなことを申し上げたくて筆を取ったのではございませんの。
今はありのままの私だけを、偽りなくお見せしたいんですの。
シルヴィオ様、この度は私がどれだけあなたを想っているのか知って頂きたくて、こうしてお手紙にしたためることに致しました。
これまでなかなか素直になれないでいた私を、かわいくない女とお思いでしょうか。
どんなに強がっても、見栄を張ってみても、本当の私は、あなたに嫌われてしまうことが怖くて、眠りにつくまで毎夜ひとり、あなたを想って寝台で震えています。
そんな時いつも、あなたが私に触れてくださった僅かな感触を思い出して、その記憶に必死に縋るのです。
憐れとお思いでしたら、どうか今すぐ抱き締めに来てくださいませ…!
けれど、そんなことは私の我儘だということも、弁えておりますわ。
まだ約束でしかない二人の将来が現実になった暁には、どうか震える夜に怯えなくていいように、あなたの腕で私の全てを包み込んでくださいませ。
私はその日を心待ちにしております。
私には、あなたを愛おしく思わない時はありません。
いつだって、あなたの髪の銀河のような澄んだ輝きに焦がれ、その瞳の暖かな光に吸い寄せられていくように、あなたにどうしようもなく惹かれています。
あなたのお姿を拝見しないでは、一日と生きた心地が致しません。
私の後を追っていらっしゃるあなたのいじらしい足音が聞こえないと、溺れそうなほどの不安が渦を巻いて私を呑み込もうとするのです。
どうかいつものように、物陰から熱い視線を注いで私を救い出してくださいませ…!
あなたの目に映っていなければ、私は泡のように消えてしまいそうなのです。
私はいつだって、あなたの目を引くだけのために着飾り、姿勢を正しているのです。
あなたの前で常には笑顔でいられない私を、許してくださいますでしょうか。
私はあまりにあなたに夢中なために、ほんの些細なことでも、あなたのなさる全てのことに、私の世界は揺り動かされてしまうのです。
あなたは私の希望であり、不安であり、夢であり、時に絶望であり、愛そのものなのです。
わかって頂けますかしら?
あなたが私の全てなのです!
私を笑わせるのも、怒らせるのも、泣かせるのも、幸福で満たすのも、いつだってあなたなのです。
ですからどうか、あなたの全てを欲しがって、子供のように駄々をこねる私を、見捨てないでくださいませ。
あなたに捨てられてしまっては、私は生きてはいけません。
私を虜にしたまま捨ててしまうくらいなら、いっそ息の根を止めてくださいませ。
あなたを失ってしまえば、どのみち私は息ができないでしょう。
だからどうか、お傍に置いてください。
シルヴィオ様。
私の愛しいシルヴィオ様。
これから我儘を申し上げます。
何より尊いあなたを、私だけにください。
他の誰かに愛しいあなたを譲れるほど、私は心の広い女ではございませんの。
どうか私を、あなたが愛を注ぐ唯一の女にしてくださいませ。
私はこの身も心も、あなたでなければ委ねることができません。
どうかこの私の全てを受け取って、その代わりにあなたの全てを私にくださいませ。
私にはあなたでなければいけません。
この願いを叶えてくださるなら、どんなことだって致しますわ。
お身体を大切になさって、早く良くなってくださいませね。
そしてまた、私の落とし物をお集めになって、いつか私ごと拾ってくださいませ。
私をあなたのものにし尽くして頂ける時まで、私はあなただけを待っています。
あなたに全てを捧げるルチアより、冷めない情熱を込めて
番外編のラブレターをご覧くださり、ありがとうございます。
数話分はひとまず番外編を載せられたらと思いますので、ご興味の続く限りお付き合い頂けますと、とっても嬉しいです!
二章は、ヒロイン編入から卒業までの物語になる予定です。定期的に投稿していけるように一生懸命準備しておりますので、広い心でお待ちいただけましたら、とてもとても幸いです!




