新たな世界の幕開け
夢を見た。
それはあまりにも突発的に、衝動的に、爆発させる勢いで。
閑散とした風景に鮮やかな彩りが、全くない殺風景な景色。
色は白色。
立体的空間。
辺りを見渡しても何もない。
本当に何もない空間。
灯りすらここにはない。
なのに。
この空間は白く輝いている。
何故だろうと思考を凝らしてみても全く見当もつかない。
無機質に。
無感触なこの立方体に。
誰もいない。
自分を含めた一人しかいない。
この空間が孤独で支配される中にーーーそいつはいた。
「さて、深い眠りについている皆さん。突然のお邪魔失礼しますーーーよっと‼︎」
目の前にいる人物に目が釘付けになる。
それは、自分が見てきたどの世界にも属していない。
風貌はどこと無く自分に似ているのに。
全く同じと感じさせないその姿に。
思わず見惚れてしまう。
銀髪の長い髪を翻して目の前にいる人物が言う。
「驚かせて申し訳ないね」
物静かに片手には本を握りしめ、こちらを見つめてくる。
ページが捲られる音が耳に聞こえてくる。
「だけど、こうすることでしか僕は出られないからね。故に君達に僕を認識させたのさ」
開いていた本を閉じた彼は、ふかふかの雲の上から降りて見せた。
そして、ひたすらに狭い空間の中を浮遊していた。
「とまぁ、僕がどうしてここにいるのかはさておいて。はい注〜目‼︎ここで私から一つ質問をします。いいですか?ちゃんと聞いてくださいよ?何、大した質問ではないですよ。簡単な質問です……では、いきます。貴方は。いえ、貴方方は今の日常に満足していますか?」
そうしてようやく目の前の人物が男であったと分かった。
本を片手に彼は問いかけてくる。
そのまま遠ざかるように自分とは反対側に向かって。
「え?退屈している?つまらない?楽しくない?えぇ、えぇ、退屈していないという方もいれば、退屈もしくは満足していないという方もいらっしゃるかもしれません」
饒舌な口調でくるりと翻してこちらを見つめてくる。
その瞳は何処までも飲み込んでいきそうなほど深淵の頂に至らんとするほどに……。
「そんな貴方方に朗報です‼︎」
突然の強い口調。
ビシッと決めた彼の手がこちらを指してくる。
「もし‼︎もしもですよ‼︎いや、まぁ、可能性の話なんですけどね?ある日、突然目を覚ましたら、全くの別世界になっていたら—―—面白いと思いませんか?」
その問いかけに答える者はいなかったはずなのに、目の前の男は心底楽しそうに笑いながら言った。
「そうですよね‼︎楽しそうですよねッ⁉︎」
興奮してるのか鼻を鳴らしている。
一人で勝手に盛り上がってる彼はこちらの気なんか気にしてない素振りで話を続ける。
「そんな貴方方の夢を私が叶えてあげましょう‼︎私の名前は新世界。貴方方に夢を見せる者ーーー」
彼がそう伝えた瞬間、視界が暗転して元の暗がりに戻っていったーーー。