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第1話

しーんと静まり返った夕方の校舎。


時計が午後6時半を回り、完全下校時刻の放送が流れる。


日誌も書き終わり、特に何もすることがなくなった私は、ただぼんやり、放送室の一角で寝転がっていた。


ふと、昼間の出来事を考える。


自分を見つけるなり、目を輝かせ、鼻息を荒くし、捲したてるように喋る眼鏡の少女。


あれは一体何だったのだろうか。


物思いに耽りながら、そのまま目を閉じて寝ようとした____が。


「安藤さん____」


「ん___」


自分を呼ぶ声がし、そのまま現実へと引き戻された。


「岩清水君…?」


日常生活に支障はないが、視力が人並みより悪いことも相まって、寝ぼけた状態ではあまり人の判断がつかない。


自分が名前を呼んだ相手もそれをわかっているのか、笑いながら受け答えていた。


「ああ、そうだよ。岩清水だよ、俺」


「そう。それで、用件は?」


自分はあまり人当たりが良くない。それは自覚している。

岩清水君はまた笑って、


「ああ、校内の巡回をしてた時に、ずっと校門にたっている女の子がいてね。」


「……」


その言葉を聞いた瞬間、私は顔を歪めた。

いやな予感しかしない…


「何か、安藤さんに用事があるみたいだったから、呼びに来たんだよ」


「はあ…」


本当に、こういう時の勘はよく当たる。

ああ、面倒だ。


最後に岩清水君は、

「今校門で待ってもらってるから、早く行ったほうがいいよ」といって行ってしまった。


人が良いんだか、悪いんだか。


個人的な感想だが、

岩清水君は、良い人だけど、どこか腹黒い部分を感じる。

人の嫌がる事を何も分かっていないといった天然さで行動に移す事がある。分かっていてやっているんじゃないのかといつも思う。

そう思っている人はあまりいないので、誰にも言っていないが。


「はあ…」


昼間の出来事をまた思い出し、ため息を吐く。

あの子の相手をするの疲れるから嫌だな。


それは昼間、友達と購買に行こうとした時の事___。


凄いスピードで何かがやってくる音がした。

当然床の振動も物凄く、自分は勿論、クラスメイト達も困惑していた。

そして音が止まった時、クラスのドア付近に誰かが立っていた。

見慣れない顔…1年生だろうか…?

眼鏡を掛けた、下級生と思しき女の子。

眼鏡の女の子は暫くクラスを見渡した後、大きな声でこう言った。


「あのっ、すみません‼︎安藤先輩はいますか‼︎」


「えっ…」


眼鏡の子がそう言った瞬間、クラスが一気に此方を向いた。

向けてくる視線は様々だが、大半は面白がっている。


「……」


私はクラスメイト達を暫し睨んでから、眼鏡の女の子の元へと歩いた。

眼鏡の女の子は私の顔を見ると、何故か、目を輝かせ、興奮し、鼻息を荒くしていた。

勿論、引いた。


「あのっ‼︎2年A組出席番号3番の安藤、安藤美咲先輩ですよね‼︎私、1年C組の真宮里穂って言うんですけどっ‼︎」


この発言には更に引いた。

クラスメイト達の視線も若干痛い。


「今日は先輩にお話ししたい事があって来たんです‼︎」


「御断りします」


「何で⁉︎」


即答した。

これに関しては、自分は何も悪くないと思う。

理由は、そちらで察して欲しい。


「お願いします、大事な事なんです‼︎」


「御断りします」


「一生のお願いです‼︎」


「御断りします」


「学食なんでも奢りますから‼︎」


「御断りします」


「この通りっ‼︎」


「勘弁して下さい」


私と眼鏡の女の子…いや、真宮里穂さんとの攻防は、かれこれ20分続いた。最終的には、私の足にすがりつき懇願する真宮里穂さんに根負けし、話を聞くことになった。


今思えば、これが面倒事の始まりだったとも言える。


今ならば声を大にして言えただろう__この時の自分に。


「行くべきではない」と____。







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