2【今回のホストは彼女でございます】
2【今回のホストは彼女でございます】
王様登場とともに、レメラが素っ頓狂な悲鳴をあげて逃げ出した。
「ぬぬっ! なんだ、あのリアクションは! おい、チキン! あの小娘を捕らえろ」
「うわぁぁぁぁぁ! ついにやっちまったよ、この馬鹿キング!
普通に考えやがれ糞王! あんた裸なの! マッパ、全裸!!
通常法律によっちゃ猥褻物陳列罪で、おロープ頂戴の場面だっつの!」
「チキン、貴様、王に向かってその態度! それに、我こそが法!」
「その法律が間違ってりゃ、民の意見によって変更できんだよ! とりあえず、あの娘さんへの誤解を……
猫さん、馬さん! どうかお願いします」
「私、ケットシ〜だってぇばぁ〜」(爪きらり〜ん)
「……俺、馬頭鬼……いいけどさぁ」(やれやれ……)
なんだか、すごい人々です。頭が馬だったり、猫のような愛らしいお姉さんだったり、
……極めつけは、アレですけど……アレ……
「そこな娘、我に惚れたか?」
「違います、馬鹿陛下! っつか前隠せ、前! 腰みのからはみ出したら辞職しますからね」
「なぬ! なぜ我が穿いていないキャラだと見抜いた!」
「んなフラグ嬉しくねぇぇぇぇぇ!」
フラグってナンデスカァ〜?
理解不能です。
……わ、私別に、真ん中に視線なんかよせてませんよ? 下の方なんか、恥ずかしくって恥ずかしくって!
「……アリス、くねくねして気持ち悪い」
クリスが本当に嫌そうな声で言いました。はい――
「……狂勇者、ギルガメッシュ?」
とは、おじさま。誰ですか?
「そこなロマンスグレー、我を存じているのか? と言うか、狂勇者とは何ぞや?」
「ハンターズギルドの指名手配に乗っている。魔族と手を組んだ、勇者の面汚し、と。
だが、その罪過はギルドが下すには重過ぎる、精々山賊並の、殺戮は行わない、勇者像としては間違っていない人物でもあると。
ただ、手を組んだ魔族たちが、A級、S級と……その存在だけで危険とされているモノが多いと、ギルドが裁定を下している、だったか」
おじさまは、淡々と彼を――彼の周りの人々を見据えて――
「視線を合わせれば即死する、コッカトライスがいることまでは知っているが」
「あ、それは私のことですね」
と、突っ込み役立った執事さんが挙手――って、えぇぇぇぇぇ!
「それは俗称ですよ。魔眼なんて調節できなければ、役立たずじゃないですか――っつか、破られましたけどね」
んっふん! と胸を誇らしげに張る、裸キング。
「……正直、会えるとは思わなかったし、会いたくないと言えば言える人物だが」
おじさま、もう一度玄関口を見渡し――
「危険はないと、信じたいところだな」
「んっふっふっふ、我の偉大さが伝わっているようだな。我が名誉の前には、侮蔑すら賞賛に値されよう。
そこな下民ども、我は機嫌がよい。我が名において、そなたらの安全は保障しようではないか――」
「そうしてくれれば、助かる。……王よ――」
おじさまは躊躇いがちに、裸ン坊を王様と認めました。
「さて、故に怯える必要はないぞ――そこな――」
……え?
王の表情が一遍する。
私も、目を見開いた。
馬頭の人が――仰向けに寝転んで、
猫お姉さんが、泡を吹いて倒れてて――
「……小娘、何をした」
王の形相が、無邪気な笑みが消え、憤怒が溜め込まれ――
……レメラは、小さな悲鳴を上げて逃げ出そうとして――
「なんだ、この騒ぎは!」
白い一団が乱入した。
――セラフィスの回想――
そのとき僕らは、丁度問題のある屋敷へ辿りついたところだった。
かつて凋落した貴族、その原因は邪教団へのかかわり、それに伴った、『不死法』を隠匿した疑い。
無論、不死――なんて言葉、
もはや夢幻想ではなく、単なる残酷な地獄でしかないことは、大人になった者には、理解できよう。
だが、望む――それは『死にたくない』と言う、誰だって持ちえる願いでしかない。老人になれば、それが顕著になる、といえば、それは子供な僕の偏見だろうか?
屋敷の周囲に現れる、不死者――の話。
かつての邪法が暴かれたか、それとも新たに根城にした邪教団が現れたか――
そんな時、少女の悲鳴が屋敷から響いた。
「隊長ッ」
「うん、全員――」
旅装束で隠れ蓑をしていた僕らは、すぐに法衣に切り替わる。
本当は、秘匿捜査だったんだけど、問題ない。
問題は、目の前だ。
ローランとケルベクの二人が扉を開き、僕が飛び込むと――
――パンツがいた。
―――回想終了―――
体格の一番よい白い服の一団の人が叫び、白い服の少年が前に出る――
「僕らは教会の者です――一体何事ですか?」
よく見れば、衣服の朱が、他の人たちより若干、多い――この少年が隊長?
「失せろ――教会の犬。
我は今、そこな娘に――」
レメラはすでに――――逃げ?
吹き抜けの二階に駆け込んだレメラは、その吹き抜けから落下してきて。
「んなぁ!」
王様が素早く駆け込んで、レメラを抱きかかえたッ!
「な、なにごとぞ! 小娘――」
「……ひ、ひっく――ひっ――」
レメラの声は、まだ幼い童女のように怯えており――
「助けて! 姉さまぁぁぁぁぁ!」
助けは来なかった。
かわりに、恐怖がやってきた。
二階から飛び降りた、ワケが――ずるり、ずるり、と。
「不死者? ……しかもッ」
白い人たちが一斉に剣を抜く。
変な一団の人々も、物騒な武器や、おぞましい姿に変貌し――
「ま、魔物までッ!」
「違うッ! 彼らはあの裸の王の従者だ!」
おじ様が迅速に白い人たちに叫び、剣を抜き――
「あっ」
クリスは私の腕を掴んでその場から、白い人たちに向かって走り出す。
二階から降りてきたのは、死体でした。
全身がボロボロで、おぞましい中身を晒した、もしくは空っぽにした、死体が――
不意に、あの日死んだクリスのお父さんが――違う。そんなのとは違う――
震えてる、私――震えてる。
これ、怖いモノだ――
―――introduction―――
ふたつ目の悲鳴があがった刹那――それは現れた。
シリアスな展開のはずだが、何故かここで突っ込みを入れたい。
さっきまで夕方だったはずなのに、暗雲が立ち込めて、背後には稲光で、ようやく容貌が露になるとか。
どれだけミステリーで重要かって印象を与えたいんだって雰囲気で、ぶっちゃけ登場。
ようやく登場――本編のヒーローキャラ、主役級だって言うキャラ。
なのに、メイン登場人物の描写ばっかで、人気はなんだかギルガメッシュに奪われっぱなし。
どうするよオイ? って具合でようやく登場――
「ありゃ? ……レメラの? じゃないな――」
その髪は漆黒――肌は白く、そして瞳は黒く――
まるで、黒曜石のように、黒い鏡のように――雷光を逆に照らし出す。
「ふむ、眠い……」
両手にぶら下げた××××を引っさげて、彼女はやって来る。
第一級、災害指定魔族。本編の台風の目、ついでに言うなら引っ張りすぎ。
通称 Asriel。本名、ルルダ――
レメラの姉にして、蝶の異名を持つ人物。
【現世界最強】の【人間】。ようやく、読者を謎々へと導いていきます。