表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/19

7【では、お悩みください】

 7【では、お悩みください】

 

 怒号が響いたそのとき、それが現れた。

 セラフィスに命じられたケルベクら五人の前に、蒼い髪の少女が――

 

「……子供?」

 と、疑問を持ったのは一瞬、

 危機感を覚えたのは刹那――

 

 だが、少女が動いたのは、『無瞬』

 

「誰? お兄様を殺した人は?」

 ツインテールが軌道を描いた尾を引き、彼女が動いたことを教えた。

 もっとも、頚椎が握りつぶされており、ケルベク自身は気づけなかったのだが。

 

「け、ケルベク」

 その蒼い少女は、大柄な男を片手でつかみ上げ、放り投げると――

 

「コレじゃない。兄様を殺した化け物は」

 狭い廊下での遭遇ゆえに、ケルベクの体は窓を破り外へ打ち捨てられ、

「どこ? 兄様を殺した、糞ガキはッッッ!」

 

  

 

「うっさいわね――」

 号泣を遮る――静謐な、眠そうな声。

 初めて、アズリエルが感情を出したような気がした。

 ……気の、せい?

 

「別に人が死ぬのは初めてじゃないでしょう。貴方にも何体か、恨みがましい気配が漂ってるし」

「……黙れ」

「いいえ黙らない。この世界に勝者と敗者の二択しかないなら、貴方は間違いなく後者。私が前者。そうでしょう?」

「ならば、今この場で殺してくれよう!」

 残った左腕がアズリエルをくびり殺そうと伸びるが、彼女の方が上手い。

 その腕を軸に滑り込んで、王の背中を軽く蹴るだけで、王はあっさりと前につんのめり――

 アズリエルは、王妃の亡骸を――自分が作り出した、人の形した魔族を見据え――

 

 僕の勘が正しければ、アズリエルは、

 嫌な顔をしてたんじゃないかな?

 

「……ったく、わっかんないわねぇ」

 アズリエルは、右手に王の切り離した腕を――

人間(こんなニクタイ)の、どこがいいんだか」

 

 王妃の胸元に、ポンと放る。

 

 同時に――人の形が壊れ、王妃の、本来の【闇】が広がる。

 広がった闇は、そして一瞬にして、血色の魔方陣を描き上げ――


「な、何をしたぁぁぁ!」

動くな(・・・)

姉さま(・・・)傷つける(・・・・) なぁぁぁ!』

 

 王はまるで、壊れた人形のように前のめりに倒れた。

 

「……レメラ、私以外に喋りはしないんじゃ?」

「姉さんこそ――()をやっているんです?」

「感傷のままに行動しただけ」

 

 黒衣の姉妹は二人だけで言葉を交し合うと――

 

 妹のほうが嘆息を零す。


「姉さま――いずれ殺されちゃいますよ」

「それも一興――」

 

 二人は何事もなかったように、玄関へ向かい――

 魔物の群れと遭遇した。

 

「待たれよ」

「このまま逃がすと」

『邪魔――消え』

「消したら駄目」

『じゃあ、寝てなさい!』

 

 魔物の群れが、いっせいに崩れ落ちた。

「さ、さきほどの馬頭鬼とケットを落とした技ですか」

 

 射程圏外――と思しき場所にいた、チキン――王の側近は、しかし膝を折り――

『…貴方だけ、残しました。さっきのゾンビーに皆さん食べられたら、後味が悪いでしょう?』

 レメラは再び筆談に戻ると――アズリエルの腕の中に逃げ――

 

「これ以上、妹を傷つけるなら、全員ゾンビの餌にしてやる」

 

 それだけ言い放つと、玄関を蹴り壊して――

 

 

 そして、物語から、一時退出する。


――――――――

 

 ……夢、を見たんだと思う。

 だって、あれだけいた魔物たちが、ほぼ昏倒――

 

 あの、アズリエルって女が背後に立つだけでも恐怖だったのに、一緒にいた――あのレメラって娘だって、何者かには違いなかった。

 ……でも、いまだに何者なんだ?

 

 ただ喋るだけ(・・・・)で相手を無力化する――

 だから筆談(・・)……なんだろうけど。

 

「……あ、クリス? 玄関」

 ……あっ? そうだった。

 ぼ〜っとしてしまったけど、アズリエルたちがぶっ壊してくれた玄関のお陰で――脱出はできるんだ。

 こんな場所、さっさとおさらばしてしまおう。

 

「アリス、おじさん」

「そうだな――ここは危険だ」

 

「そうですね。そちら方は脱出を――もし、帝国領に行かれるのでしたら」

「目的地はそちらと同じだ。教会に言伝いたそう」

「感謝します……将軍」

 灰銀髪(アッシュ)の彼が、片腕のおじさんをそう呼ぶと――おじさんは少し驚いた後、僕とアリスを促し――

 

 

 落とし穴にはまった。

 

 

「な、なんでここでベタな!」

 灰銀髪(アッシュ)の彼が、泣きそうな声で、僕の隣で叫んだ――

 

 僕は、一瞬だけ――床の隙間に気づき――足踏みして助かった。が――

「おっさん! アリスッッッ!」

 

 ま、不味い不味い不味い不味い不味い――

 暗くてよく見えないが、悪くて下はゾンビーの群れ――

 

「飛び降ります。隊長――許可を!」

「三……いや五人一組で彼らを保護! ジョン、ユーイ、カインとジューディはメティが続いて!」

『了解ッ!』

「……あとは、俺たち五人だけですか」

 

「ローランたちが戻るまでの辛抱さ……? ……」

 

 俺は――とことん阿呆だな……

 気がついたら、騎士団が動く前に飛び降りようとして――

 

「ローランって、コレ?」

 

 ……あん?

 目の前に転がった――生首。

 

 だが、それがどうした。


「け、ケルベクッ!」

 

 ツインテールを靡かせた小娘に、俺は殴りかかっていた。

 

 

 ――――――――

 

 あいたたたた……

 

「……くぅ、それほど――深くは落ちてない筈だが」

 

 お、おじ様が下敷きになってくれたお陰で――なんとか。

 暗くて良く判らないけど――

 

 ……ピチャリ。

 

 頭に何かがこぼれて来た。

 なぜだか判らないけど、血だってわかった――

 

 ――――――――

 

「……あッ」

「どうした、レミィ」

「アリスちゃんたち忘れてきちゃった!」

「アリス? ……先ほどの小娘たちか?」

「うん、友達になったの――」

 

 廃墟の庭園――並び歩く黒衣の姉妹は廃屋を立ち去ろうとして、

「阿呆。二人は感情に流され安すぎる」

「姉さん――」

「でも、ルル姉は感情をなくすととことん、残虐になるから嫌」

「肯定。ルルはもう少し、自己を確立すればいいと思う」

 

 三人目の黒衣と合流した。

 

 同じ漆黒だが、こちらは旅装束の、襤褸いローブをまとった妙齢の女性。

 アズリエル…ルルダは黒衣を脱ぎ払うと、いつものエプロンドレスに戻り――

「はい姉さん。頼まれていた買い物」

「感謝。あと、なぜメイド服に戻る」

「これは家事専用作業着です。なんでもメイドメイドと呼ぶのは感心できません。社会の風潮に流されすぎです」

「嘆息。私が聞きたいのはメイド云々ではなく、あの館に戻らないのかと。戦う気はないのか?」

 

「私、喧嘩と殺し合いは好きじゃないんです。一方的な虐殺ほど、反吐がでるものはありません」

 

「然様。それは知っている。だが現に――お前に並ぶ実力者が、あの館におったのだぞ?」

 黒衣の姉君が、黒髪を風に靡かせ――告げる。


「あの洋館の中で、もっとも血臭の多い人間――お前に匹敵する【最強】であったぞえ?」

 

(……姉さんが、二文字、四文字、の枕詞を使わなかったわ)

 三女のレメラが、物珍しげに長女の顔を覗き込む。

 とても楽しそうな笑みを、久々に拝んでしまった。

 

すいません、だいぶ更新滞りまして…

単に、仕事と遊び(マテ と仕事とスランプ(痛切 と初音ミク(ぁ と色々やらかしたら、収集つかなくなってしまったしだいです、はいOTL


ボツボツ更新していくつもりが、前回のようにズダ〜っと一気に書いちゃったり、こんな風にズタボロ長く…今回は酷かったなOTL


うん、とりあえず、再開! だが、文字数少ない…

……ずだぁ〜っと行くか−−

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネット小説ランキング>異世界FTシリアス部門>「幻想魔蝶異端録」に投票 ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ