領地と十家
ーー『十家』。
それは、PMCに特別な権力を与えられた一族の総称だ。
一宮を筆頭とした、二宮、三宮、四宮、五宮、六宮、七宮、八宮、九宮、十宮がそれに該当する。
俺はその一宮の長男だ。
具体的な内容は、長男長女がPMCの社員として国の治安維持に協力するかわりに、家から半径5キロ県内の自治権を認める。というもの。
まあ簡潔に言えば、治安維持に協力すれば領地がもらえるということだ。
そんなもんで領地が与えられるのか! と突っ込みたくなるが、これには訳がある。
十家は由緒正しき魔術師の家系で、受け継がれてきた魔術の力は強大だ。
野放しにしておいたら、フェンリルなどの犯罪組織、諸外国に加えた第三勢力として日本を脅かしかねない。
そういうわけだから、領地を与えて治安維持をさせているということだ。
「この地区は一宮の管轄区域だったよね?」
「ああ、先代が斃れてからロクに管理してないけど……て、まさか?!」
「そう、今回の件はPMCとしてじゃなく、十家として動けばいいんだよ」
自治権を認める。ということは当然、領地の中では王様状態。条例も決められるし、税金も取れる。その上管轄内なら犯罪者を罰することもできる。
「けどさ、十家が動かないよう釘をさしてるだろ?」
こうなることも分かっての指示だろう。東堂に抜かりはない。
「いやいや、東堂さんも本部からの通達に不満があって、十家で動けって指示が出たんだよ」
「まじか」
「今晩作戦を練るから、御伽さんの警護が終わったら二宮の本家に来て」
「わかった」
話したい事はそれっきりで、俺たちはさっさと店を出た。一般の客に迷惑を掛けたくないしな。