表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結んで開いて黒魔術♪  作者: 秋夜スイ
3/12

お説教と仕事の依頼

「で……仕事でもないのに無断で発砲したというわけかい?」


あのあと芙佳に、きっついお仕置きをされ、その後学園長の執務室へと連行された。

山崎は三ヶ月の謹慎処分を言い渡され、今日は帰っていった。

帰り際に、俺が唯一使える北欧の魔術、"ガンド"で呪ってやった。多分あいつは一週間は熱でうなされるだろう。ざまあみろ。


「す……すみません……」

冷静な判断ができず、挑発に乗ったのは紛れもない自分なので、言い訳のしようがない。


「まったく……事後処理はわたしの仕事だというのに、面倒な事を……」

目の前の初老の女性……この学園の三代目の長である東堂サヨは、細長い煙草に火をつける。


「あー、お前が撃ったのを目撃した生徒には記憶を消させるから、お前は暫く学園に来るんじゃないよ」


記憶操作系統……"忘却"は、対象の出来事を忘れさせる魔術だ。完璧にその事を忘れさせるためには、少なくとも二週間はその対象の物から遠ざける必要がある。ふとした瞬間に思い出すのを防ぐためにだ。


「でも、あんたに二週間近くもなにもさせないのは癪だしねえ……じゃあ、大会の警備でもやってもらおうか」

紫煙を吐き出しながら、とんでもない事をのたまった。


「は?」


「いや、は? じゃないよ。警備をしろと言っているんだ」

灰皿に煙草を押しつけて消しながら、面倒臭そうに言う。


「いやいや、魔術が使えない俺が何で警備にあたらなきゃいけないんすか」

大会開催中は、選手を狙った誘拐や傷害事件も多発する。その為、警備をする際には高度な魔術が使えることが要求される。


「嫌かね?」


「当たり前っすよ! 何であんな戦場みたいな所に行かなきゃならないんすか!」


「なら、上司として命令させてもらおうかね。一宮徹、貴方に一ヶ月間の警備任務を命令するよ」


新たな煙草に火をつけ、ふんぞり返った。


「あっ! きたねぇぞババァ! もうそれなら断れねえじゃねえか!」


「なんとでも言えガキが。ほれ、腕章はうちの会社の物だ」

木製のやたらとデカイ机の引出しから取り出されたのは、PMCと書かれたロゴの入った腕章だった。


「時給は?」

ちゃっかりと金の話に持ち込む辺り、自分の器の小ささが伺い知れるが気にしたら負けだ。


「そんなもんあるわけないだろう」


「いやいやいや、すごい危険な仕事ですよ? タダ働きと言うわけにはいかないでしょう」


「もとはと言えば、あんたが挑発に乗らなければ良かった話だろ? 自業自得だよ」

東堂の目は、タダで人が使えてラッキー、と語っている。が、今朝の事を言われると耳が痛い。


「……わかりました。けどせめて、弁当代くらいは支給して下さい」

これがせめてもの願いだ。情けないなあ……。


「いいだろう。そうと決まればさっさと行くんだね」

東堂は虫を払うような手つきで俺を追い出した。


「しっかりと覚醒してくれよ……」


部屋を出るときに聞こえた声は、怒りに任せて閉めた扉の音でかき消されて聞こえなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ