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結んで開いて黒魔術♪  作者: 秋夜スイ
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コーヒーと魔術

初 投 稿です。

超ローペース投稿&存在感希薄をモットーに日々精進します。

科学と非科学の両方がまんべんなく出せるよう頑張ります。

タイトルの黒魔術も勿論出ますよ?

『はーい! 今年もやって参りました全国魔術大会予選。今年は誰が本大会に進むのかなー?!』


テレビからやたらとハイテンションな声が鳴り響く。ああ、朝からうるさいなぁ。

朝は静かに過ごしたい俺にとって、この一月は地獄だ。

"全国魔術大会"

俺の住む地域で行われる国家イベントだ。

端的に言えば、魔術を使える者同士で競い合わせ、トップを目指す。それだけだ。


科学と魔術が共存しているこの世界では、魔術に優れているものと、科学に精通しているものの二極ががトップに立つことが条理となっている。

この大会で優勝することは即ち、日本で最強の魔術師の一人ということになる。


最強の魔術師になる。それは、この国で政治的に発言力のある人間になれるというワケだ。だから全国の魔術師は皆、大会で優勝するためにしのぎを削り合うのだ。


『ではでは~今年の優勝候補の一人にインタビューしちゃいましょー!』


インタビュアーのお姉さんが、選手にマイクを向けた。


『どうも』

素っ気ない態度で、テレビに登場したのは……俺の通う学園の会長だった。


「ええー!?」

突然の出来事に、コーヒーをぶちまけてしまった。


「ちょっと兄貴! なにやってんの!」

テーブルいっぱいに黒い水溜まりをつくってしまい、妹の芙佳に怒られた。


「あ……すまん、ちょっと凄いことになってたから……今拭く」

妹に言い訳する俺情けないなー、と思いつつも、力こそ絶対!の世界では逆らえないのだ。


「別にいいよ」

芙佳は開いた右手を前に出し、ゆっくりと握りしめる動作をする。

するとさっきまでぶちまけられていたコーヒーの水溜まりは、まるで逆再生したかのようにコップの中へと戻っていった。


「兄貴もこれくらい使えるようになればいいんだけどねー」

そういって俺のコーヒーを流しに捨てた。こぼれていた場所はキレイになっており、染みひとつない。


……これが魔術だ。

芙佳がさっき使ったのは、"逆再生"。

魔術の素養がある者なら、三日で習得できる。初歩中の初歩だ。足し算引き算レベルだ。

数秒間前の事なら、パソコンのブラウザバックをするように戻す魔術、それだけ。


ただし、ぶちまけたという事実は変わらず、あのコーヒーにはテーブルの埃がたくさん入っているのであろう。うへぇ、気持ち悪い。


「凄いことって生徒会長? 兄貴知らなかったの? 会長、今年で五年目の出場だよ?」


テレビの画面では、生徒会長の経歴を説明していた。


「うちの学園の会長ってそんなに凄いのか?」

魔術とは無縁の生活をしている俺にとっては、十代のうちから魔術大会に出場してるくらいしか凄さが伝わらない。

予選大会であれ、この大会の出場平均年齢は三~四十代。歴戦の強者達だ。日本の魔術レベルは世界でも六位と言われている。

今や科学技術に続いて世界で名を轟かせている。


「凄いも何も……あのね兄貴。あんたが魔術を使えないのはよーく知ってるよ。けれどね、会長が五歳の時には既に"反転"が使えた事くらいは知ろうよ」

心底呆れたように、俺を見てくる。


マジか……その年で反転が使えたのか。

反転とは、触れた物質の情報を、その情報とは逆のモノに書き換える術だ。

例えば、硬い石ころだったらその硬度が書き換えられ柔らかくなったり、熱い炎だったら冷たい炎になったりと高等な技術が必要な魔術だ。


並の魔術師ならば、難し過ぎて死ぬまで会得できないのだが……それを五歳で……。


「あ、時間だ」

時計の針は七時と三十分を指そうとしていた。


「あれ、芙佳今日は早いんだな」

普段は八時過ぎに家を出ているので、珍しい。何かあるのだろうか?


「ん? 言ってなかったっけ、今日は生徒会役員は全員大会の警備に当たるよう言われてるんだ」

あー、そう言えばそういう話を聞いてたな。


芙佳は魔術師としての潜在的な能力が高いのだ。それで生徒会に入らないか誘われて入ったんだったな。


「そうか。お前も大変だな」

予選大会と本大会を一気に行うため、この時期は全国から見物目的で人が大量に集まる。警備の人数も足りないため、魔術師の卵とはいえ実力者揃いの生徒会に応援要請が入る。

この期間中役員は課外実習扱いになるんだったな。


「私の心配よりも自分の心配をしなよ。十六歳になっても逆再生が使えないんだから、いい笑い者だよ?」


妹と言えど、俺と芙佳は双子である。だから魔術がてんで使えない俺はよく芙佳と比べられる。

魔術の名門、一宮家の長男のクセにと。


「じゃ、行ってくるねー」

警備と書かれた腕章を着けて颯爽と出ていった。







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