第五十六話 謎の交通手段
外に出ると深夜だからなのか、辺りは静まりかえっていた・・・
遠くの方で新聞屋の原付の音が微かに聞こえるくらいだ・・・
俺達はまずタクシーを呼ぶ事にした。
【瀬理奈】「あのな、瀬理奈やけど・・今すぐ来てや」
ピッ!
【プリン】「瀬理奈さん・・今のでタクシー来るんですか?」
【瀬理奈】「あ~大丈夫や!この辺りはみんなうちの事知ってるさかい」
【騎士】「いくら何でもそれだけで来るとは・・・」
ブーン・・・キキッ!
【騎士】「本当に来た!」
【瀬理奈】「ほらな!」
下を見ると道路にはタクシーが止まっている・・・
運転手が車から出てきた!
【運転手】「瀬理奈ちゃん!おまたせ、何処でも行ったるで!」
【瀬理奈】「ありがとな!下降りるからちょっと待っとって!」
俺達は瀬理奈さんについてアパートの階段を降り道路に止めてあるタクシーに乗っかった!
【プリン】「でも、この時間じゃ電車は動いて無いわよね・・・・」
【浩介】「そうだね・・他に交通手段を考えないと・・」
俺達が行き先を迷っていると、瀬理奈さんが運転手に行き先をコショコショ話で伝えた!
【運転手】「了解!しかし流石瀬理奈ちゃんやな~!
この時間じゃその方法が一番や!」
【瀬理奈】「へへ~!」
ブオン!ブブブブ・・・
タクシーは走り出した!
【騎士】「瀬理奈さん!何処に行くんですか?」
俺は不安まじりで答えた!
【瀬理奈】「大丈夫や!うちに任せとき」
【騎士】「はあ・・・・」
タクシーは街中を走って行く・・
プリンは窓の外を見ている・・
浩介さんは・・寝ている・・
海上は・・瀬理奈さんの肩にもたれて寝ている・・
瀬理奈さんは・・泣いている!
それはそうだろう・・産まれ育った場所をしばらく離れなければいけないのだから・・
きっと、かなり思い入れがあるんだろう・・・
タクシーは何処かを上がっている・・・
四斜線の広い道路だ!
成る程・・東名高速か!
でも何故東名高速なんだ?
まさかこのままタクシーで岡静まで行く気か?まさか・・
ブブブブブブブ・・キキッ
タクシーが止まった!
【運転手】「さあ、着いたで!」
【瀬理奈】「ありがとうな」
【運転手】「瀬理奈ちゃんの頼みを断ると、後が恐いやん!」
【瀬理奈】「あほ!当たり前や!」
俺は浩介さんを起こし海上を引きずりながら瀬理奈さんと、運転手の後に着いて歩いていった・・
プリンが叫んだ!
【プリン】「あっ!ここは!」
【瀬理奈】「そうや!バス停や!」
【騎士】「こんな所にバス停
・・・」
【瀬理奈】「騎士君知らんの?東名バスや!」
【騎士】「東名バス?」
【運転手】「東名高速を走ってるバスや!
これに乗れば遠くまで行けるで!」
【浩介】「そうだった!」
ブブブブ~ン・・・キッ!
バスが丁度やって来た!
普通のバスより大きめのバスだ!
見た目は観光バスの様な形をしている・・
【瀬理奈】「このバスはな・・トイレも付いとるんやで!」
【騎士】「ほほ~・・・」
俺達は運転手に見送られながらバスに乗車した・・
中は綺麗で大きめの座席が幾つもある・・・
観光バスまんまだ!
席に座ると同時に瀬理奈さんが窓を開けた!
ガチャガチャ・・ズズ・・
【瀬理奈】「じゃ!ありがとな、行って来るわ!」
【運転手】「なんか知らんけど頑張ってな、瀬理奈ちゃん!」
ブオン、ブブブブ・・・・・
バスが発進した!
運転手が手を振りながら見送っている・・
その運転手が小さくなって見えなくなった時、瀬理奈さんが口を開いた!
【瀬理奈】「あの運転手な、うちの前の彼氏のダチなんや」
【騎士】「そうだったんですか・・どおりで・・・・」
俺はさっきの運転手の風貌を思い出した・・・
頭はリーゼント、金のぶっといネックレスをしていて、薄い茶色のレンズの眼鏡を掛けていた・・・
凄くよく分かる!
俺は疲れていたのか、いつの間にか寝てしまった・・・