『忘却の谷』
ジャリ、ジャリと、砂を踏むことがやけに静寂な谷にこだまする。あたりは濃霧に包まれており、五m先も見渡せない状態だ。
俺は今、『忘却の谷』へやってきていた。
静かすぎてここには俺しかいないように錯覚する。
しかし、ふと、乱暴に地面を踏みしめる音が俺の耳に届いた。
「お出ましか」
無駄についた贅肉を垂らし、巨体を揺らしながら斧を振り上げこちらへ走ってくるモンスター。よくファンタジーに出てくるオークだ。【双剣:湖竜刀・水桜】を抜き放ち、腰を落として左右に構える。頭上に表示されているオークのレベルは40。ここにきて難易度が上がってきたか。
「はっ!」
振り下ろされた斧を身を翻して躱し、後ろへ回ってオークの首筋を切る。赤いエフェクトが飛び散り、オークが咆哮を上げる。
「【スラッシュ】」
こちらへ振り向こうとしたオークの首を【スラッシュ】で切り飛ばす。切り飛ばされた頭はポリゴン片となって砕け、数拍おいて胴体もポリゴン片となって砕け散った。
今の所は問題なく進めているな。ま、最初に問題があったらそれこそ問題だが。
「まあ、さっきの咆哮でモンスターが集まってきたみたいだがな」
シャカシャカと気持ち悪い音を立てながら濃霧の中から姿を現す巨大な蜘蛛。デスタランチュラ。硬さもさることながらなんと言っても猛毒をもつモンスターだ。
厄介なモンスターは遊んでないで速攻で倒す!
「【ダッシュ】【スラッシュ】」
糸を吐かれる前にデスタランチュラの右三本の足をすれ違いざまに切り飛ばし、すぐにUターンして残りの左三本の足を切り飛ばす。
「シャー」
足を切り飛ばされたデスタランチュラは胴体を地面に横たえる。
「【断裂】」
【大太刀:血吸いの禍太刀】に切り替え、【断裂】にてデスタランチュラを両断した。
「ふぅ、やれやれ」
オークの怪力にデスタランチュラの猛毒。本当厄介なモンスターばかりだ。
「っとと、ここから下りか」
真っ直ぐとした道から緩やかな下り坂へ変化した。下るっつーことは、ここからが本番ってことか。足場も悪くなるしな。
「ま、進もうか」
何が立ちふさがろうと、全て叩っ切るまでだ。




