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【Skill&Level ONLINE】  作者: 柊 紗那
第九章 『忘却の谷』での死闘
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『忘却の谷』の残酷な事実

「今日は忙しい中集まってもらってすまない」


ギルドメンバー全員にまずはそう告げる。

翌日、俺はギルドメンバー全員を会議室に集めていた。理由は、この大陸最後のフィールド、『忘却の谷』を攻略するにあたって話すことがあるからだ。


「いえ、それは構いません」


俺の隣に座るエミリアがそう言う。そう言ってもらえるとかなり助かるな。

一度だけエミリアの方を見ると、ゆっくりと立ち上がる。


「呼び出した要件はただ一つ。俺が『忘却の谷』を攻略している間、皆にはここで待っていてもらう」


きっぱりと言い切った俺の言葉に、ギルドメンバー全員が立ち上がった。


「なぜですか!?危険です!」


「今日、ギルド【イーストウッド】から連絡があった。『忘却の谷』のボスに倒され、死に戻りしたミレッシェの記憶がすっぱりなくなったらしい」


激昂したエミリアだが、突きつけられた衝撃の事実に思わず言葉を失った。


「ヘッドセットの不具合、運営のミスなどいろいろな記憶を失った原因が考えられるが、俺はこう考えている。前提として、『忘却の谷』のボスに負けたプレイヤーの記憶が失なわれる、と。これならフィールドの名前、『忘却』と一致するし、ミレッシェが記憶を失った時間とタイミングに辻褄が合う。勿論この仮説が間違っている可能性はあるが、かと言って実際に確かめるわけにもいかない」


俺の考えを喋っている間、誰も立ったまま動くことはなかった。俺より弱いとはいえ、仮にも有名ギルドのギルドマスター。実力は確かだ。それがやられたとなると、少なくともミレッシェよりも強いボスがいると言うことになる。


「俺は今話した仮説が本当のことと決めて行動する。俺は仮にもギルドマスターだ。ログアウト不可能となった今、ギルドマスターにはギルドメンバーの命を背負う責任がある。今までの記憶を失うということは、人格が失われる。人格が失われるということはつまり、一度、その人間は死んだことになる。ということはだ、『忘却の谷』はいわば死地。カヤに聞く。ギルドメンバーに死地へ向かえと言えるか?」


「それは……っ!……言えない」


勢いで反論しようとしたカヤだが、一度はギルドマスターをしただけあって責任はわかっているのか、すぐさま訂正した。


「ですが、ですが!カナが記憶を失ったら、私はどうすればっ!」


いつも冷静なエミリアが取り乱しながら俺に問う。そんなエミリアに、俺は笑った。


「このゲームをクリアするまで、俺は負けない。絶対にだ」


「っ!」


笑みを浮かべながらの言葉だったが、その裏の覚悟が伝わったようで、エミリアは息を飲んだ。


「俺にはまだ【限界突破】がある。少なくともこいつを使えば負けることはないだろう」


少なくとも、今はまだエルドランド以上に強い奴はいないだろう。それに、いざとなったら【半緑龍化】がある。


「ですが、万が一ということもありますし、誰かひとり連れて行ったらどうですか?」


今まで黙っていたフロートが最もな意見を言う。だが、正論がいつも曲がり通るとは限らない。


「じゃあフロート。こう考えて見てくれ。もしフロートがギルドマスターだったら、と。どうする?」


「…………」


「俺と同じことをするんじゃないか?いや、違うな。多分黙って出て行くだろう?」


「はい」


「それに比べたらまだ俺の方がマシじゃないか?」


俺とフロートを比べたら、フロートは口をつぐんだ。


「さて、じゃあそろそろ時間だ。俺は行く」


椅子から立ち上がり、扉へ向かう。そんな俺のまえに、エミリアが立ちふさがった。


「いかせません」


「はぁ…………エミリア、愛してるよ」


「あっ」


圧倒的なAGIでエミリアの横をすり抜ける。その間際に、エミリアの耳元で呟いた。エミリアが振り向いた時には、扉は開かれ、そして閉められていた。






















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