約束
「いや、斧は使わんて」
FA・LAボーナスで入手した斧を見ながら溜息を付く。斧は装備したくないなぁ、ウロスに上げるか。装備しなけりゃまだ所有者不明だしな。
「ウロス、今いいか?」
『カナか。どうした?』
「お前に渡したい武器がある」
『武器、か?』
「【大斧:ダディランス】っつー武器なんだが」
『ダディランス?聞いたことないな。情報屋にも乗ってないんじゃないか?それをくれるってのか?』
「遠慮はするなよ?お前が弱けりゃ彼女が苦労すんだ。武器だけで何かが変わるってわけじゃないけど、持ってればなにかあるかも知れないだろ?」
『あーうん』
「どこで待ち合わせる?」
『第三の街、でいいんじゃないか?』
「へぇ、お前そこまで行ってるんだな」
『第三の街付近には湖があるからな。そこでホームを買って過ごそうかと思って』
「まあ、頑張れよ」
『おう!』
「んじゃ、明日の午後二時ってことで」
『了解』
「じゃあな」
『ああ』
ウロスと別れを交わし、念話を切った。さて、帰るか。
ミノタウロスを倒した翌日。諸々の書類を片付け、第三の街の広場へ向かった。広場には恋人などの関係となったプレイヤー達の姿があり、その中にウロスともう一人の少女が立っていた。
「よっ、久しぶりだな」
「久しぶ…………お前!!それどうした!」
「レッド、プレイヤー」
俺のマーカーが赤くなっていることに気づき、ウロスは俺の襟をを掴み上げ、少女は怯えたように後ずさった。
「まあ、な。色々とあったんだよ。聞いたことはないか?【蜜の溜まり場】がいつの間にかなくなってるってこと」
「それくらいは……ってまさか!?」
目を見開いたウロスの言葉に、俺は無言で頷く。ウロスは手を離し、悲しそうに顔を歪めた。
「お前、そのためだけに」
「俺は敵対したプレイヤーには容赦しない。危害を加えようってんなら尚更だ。あいつらは全員でエミリアとカヤを殺そうとした。だから俺が殺した。それだけだ」
「お前、変わったな」
「まあな」
そこまで話し、俺とウロスの間に鈍色の沈黙が走る。そんな沈黙を破ったのは後ずさった少女だった。
「あの、今の話は本当ですか?」
「お前、名前は?」
「エレナといいます。仲間を守るために【蜜の溜まり場】を潰したというのは、本当ですか?」
「ああ。そのおかげでレッドプレイヤーの仲間入りしちまったけどな」
皮肉を込めて首をやれやれと振る。エレナは首を振る俺を静かに眺めていた。
「さて、こんな話をしに来たんじゃない。早速送るぞ」
メニューからトレードを選択し、俺はダディランスを。ウロスは天国へのキップを選らんだ。
「これは?」
「『湖の桟橋』のボスのドロップ品だ。同じボスドロップだからつりあうと思ってな」
なんだ、そんなことを気にしてんのか。難儀なやつだ。
「よし、これで用事は済ませた。んじゃ、俺はいくな」
「死ぬなよ」
ウロスと別れ、ギルドホームへ帰還する。眠いし、寝るか。




