恋の花が咲く
翌日、心ここにないままに一日を過ごし、夜七時ちょっと前にエミリアの部屋へ向かう。エミリアの部屋は俺の部屋の隣。五分も立たずに到着し、扉をノックする。
「どうぞ」
部屋の中から声が聞こえ、扉を開けて中へはいる。中にはネグリジェを着たエミリアがベッドの上に座っていた。
「カナさん、そんなところに立ってないで座ってください」
「いいのか?」
「ええ」
エミリアは俺の問いに自分の隣を叩いてそう答え、微笑んだ。エミリアの言葉に甘えて隣に腰掛ける。すると、エミリアが俺の右肩に頭を乗せた。
「どうした?」
「不思議ですよね。私は男性恐怖症のはずなのに、貴方のそばにいると安心します。貴方の匂いを嗅ぐとホッとします」
耳元でそんなことを囁かれて心臓が跳ねた。どうしたんだ?エミリアは。というか、なにが言いたい?
「ぐぁっ」
エミリアは呆気に取られてポカンとしている俺の首根っこを掴むとベッドに押し倒し、俺の体に跨った。
「お、おい、な、なにをしてるんだ?エミリア」
少し早口になりながらも俺は跨ったエミリアに尋ねるが、エミリアは俺の頭を挟むようにして手をおくだけだった。
「こ、こんなことはは……初めてなので気の利いた言葉は言えませんが、私は、貴方のことが好きです」
「はえ?」
今なんていった?エミリアが俺のことを好き?どういうことだ?
「私が貴方に注目し始めたのは、ブラッディベアが貴方に倒された時でした。全員が絶望し、閉じこもっていた時に、貴方はブラッディベアを倒しました。βテストの時にも聞いたことがないカナという名前のプレイヤーが、ブラッディベアを倒したことを聞き、私は励まされました。私は何をやっているのだろう。βテスターでもない一人のプレイヤーが頑張っているのに、私は何をやっているのだろうと。その時から私は貴方を目標にレベリングを重ねました。そして、掲示板で貴方と会えると聞き、お世話になったカヤさんの元へ行きました。そこで貴方と顔を合わせました。初めは可愛いとしか思いませんでした。しかし、貴方のそばにいるうちに、だんだんと惹かれていきました。貴方を好きになったきっかけは、やはりエルドランドの時です。貴方が死にそうになった時、胸が張り裂けそうでした。ああ、私はカナさんのことが好きなんだなと、その時初めて気づきました」
目を閉じ、安らかな顔で話すエミリアに、俺の目は釘付けになる。が、エミリアの次の言葉にはっとなった。
「私は、カナさんを貴方のことが、一人の男性として好きです。貴方は、私のことをどう思っていますか?」
「俺は…………」
俺はどう思っている?無表情だけど、時々見せる表情。笑顔が綺麗で、冷たい言葉をいうこともあるけど、とても優しい女の子。そばにいて安らぐ、そんなエミリアのことを、俺は…………。
「俺は、エミリアのことが、好きだ。大好きだ」
掠れる声を振り絞り、精一杯声を出す。俺の言葉を聞いたエミリアは、俺の胸に飛び込んできた。俺は、優しくエミリアを抱きしめる。
「良かったです。両思いで」
顔を上げたエミリアは、満面の笑みを浮かべていた。
そして、俺とエミリアの顔が近づいていき……………………二つの影が、重なった。




