自分の気持ち
「どうぞ」
執務机で書類をまとめていた俺の耳に、控え目なノックの音が響いた。扉に呼びかけ、その呼びかけのあとに扉か開けられる。入って来たのはネグリジェ姿のエミリアだった。
「ど、どうした?」
初めて見るエミリアの寝間着姿に俺は少しうろたえながら問う。エミリアは俺の問いに答えず、俺の後ろへ周り、そのまま抱きついて来た。
「お、おまっ……「動かないで、ください」……」
耳元で囁かれ、抗議することすら出来ない。豊満な胸が背中で潰れ、ふにゃんふにゃんと形を変える。
なんなんだ?どうしたんだ?何かあったのか?など頭の中で渦巻くが、いくら考えて見ても答えは出ない。
「すぅ……すぅ……すぅ」
「は?」
混乱する俺の耳に聞こえて来たのは、それそれは安らかな寝息だった。こいつ……寝てやがる。
「どうする?部屋はノックして中にいる人が応えないと入ることは出来ない。エミリアの部屋には誰もいない。エミリアなら開けることは出来るが、これを起こすのは忍びない。とすると、ここでねかせるしかない、か」
エミリアには悪いが、今夜はここで寝てもらおう。羽ペンを置き、エミリアを抱きかかえ、ベッドへ寝かせる。
「お休み」
エミリアに一声かけ、俺は夜風を浴びにベランダへ出た。
「賑わってるな」
大通りには点々と光が灯り、人の話し声や呼び声などが聞こえてくる。
わざわざベランダへ出たことには理由がある。エルドランドとの戦いのあとから胸の内に渦巻くモヤモヤとしたもの。夜風を浴びなががらなら、答えが出ると思ったからだ。
そのモヤモヤは、決まってエミリアのことを考えると起こる。不快感ではなく、どちらかというと心地良いものだ。
なぜエミリア限定なのか、それがわからない。さっきみたいに俺以外のプレイヤーに、増してやカヤにも行わないスキンシップを取られると、胸が躍る。
エミリアのことを一度考えると、一日中考えてしまう。そして、エミリアがほかの男プレイヤーといるところを考えると、不快感を感じる。
……なるほど、これが嫉妬、というものか。
「俺が嫉妬するときが来るとはな」
あそこまで他人を拒絶していた俺が、ずいぶんと他人に心を許したものだ。ま、これが普通なんだろうけども。
嫉妬を感じるということは、俺はエミリアのことを好きなのか?
「わからないな」
わからない。そもそも好きというのはどういうものだ?考えても考えても考えてもわからない。
「だぁー!!わからん!!」
好きとはなんだ!?恋とはなんだ!?あぁぁあー!だめだ!わからない!
「そう、だな。カヤのところへ行くか」
カヤも女の子だ。どういうものか、答えを出してくれるだろう。
頭をかきながら、俺はカヤの部屋へ向かった。




