備えあれば憂いなし
「ギルドマスター。ちょっとお願いがあるんだけど、いい?」
「ん?なんだ?」
『黒の森』へ行くための準備をしている最中に、エレスが俺の部屋に入ってきていた。
「『黒の森』に行くんだよね?その、ついでにポイズンサーベントからドロップする【毒蛇の皮】をとってきて欲しいんだけど」
「別にいいけども、何に使うんだ?」
ポイズンサーベントの【毒蛇の皮】は防具に使うとしても対した防御力の強化にはならず、耐久力には期待出来ない。そんなものを何に使うか疑問に思うのは当然のことだろう。
「確かにポイズンサーベントのドロップ品で作られた装備は耐久力も防御力もないけど、夜間時の隠密性がかなり上がるんだ。ファルの第一職業は【暗殺者】だからかなり相性がいいと思って。それで装備を作ろうとしたんだけど、【毒蛇の皮】だけが後一個足りなかったの」
成る程ね。ということは必然的にオケアヌスには夜に挑むことになるのか。作ったはいいがお蔵入りになっていたポーションも役に立ちそうだな。
アイテムボックスから【毒蛇の皮】5個をエレスに渡し、倉庫から【中級HP暗視ポーション】240個を取り出して、ギルト機能の【配布】で16人全員に配る。ちなみにポーション系の所有上限は15個だ。
「あ、ありがとう。それで、これは?」
「ファルの装備作るんだったらオケアヌスと戦うのは夜になるんだろ?【夜目】持っている奴はいいが、持ってない奴もいるだろう。【魔術師】がライトなんかで照らすのもいいが、オケアヌスはMPを消費した状態で勝てる相手じゃない。なんならポーションを持って行った方がいいと思ったから渡したんだけども」
「いやいや、そういうことじゃなくてさ!今で回っているポーションでも、よくて下級HPポーションだよ!?しかも暗視ポーションなんて作られてもないって!それなのにギルドマスターは中級HPポーションと暗視ポーションが合わさった奴を240個も……出鱈目だよ、本当に」
おいおい、今の今まで閉じこもっていた奴らと一緒にされちゃ困るな。俺はお前らが出来るだけ死に戻りしないように頑張っただけなんだが。
「ま、いいじゃないか。言うだろ?念には念を。備えあれば憂いなしって」
「それにしては用意周到過ぎるよ」
素直に受け取ったエレスは、トボトボと部屋から出て行った。




