『黒の森』
「おいおい、どんよりしてんじゃねえか」
俺は、『黒の森』というフィールドに来ている。その名の通り、生い茂った木々により、日光は届かず、暗い闇に閉ざされている。というより、これ【夜目】が無ければクリアするの、無理じゃね?真っ暗って程じゃないけど、【夜目】がなければうっっすらとしか見えないぞこれ。
「お?早速お出ましか?」
木の影から出て来たのは体長二m程の熊らしきモンスター。
「ブラックベアLV16…………ってシビア過ぎんだろ!このゲーム!」
【夜目】がなければまともに見ることさえできず、しかもLVがめちゃくちゃ上がってやがるってどんなクソゲーだよこの野郎!レベルが高い俺ならいいけど引きこもっている奴らからしたらマゾゲーだぞ!
「グォォォオオオオオ!」
「【ステップ】ちっ!なかなか早え」
ブラックベアが俺に向かって腕を振ってくる。俺は【ステップ】を使い腕を避ける。
ズカァァァン!
と轟音を立て、ブラックベアの腕は木にぶつかり、ベキベキと嫌な音を立てて木が倒れた。
「っておい!どんな威力だよ。まともに食らったらHP全部持ってかれるんじゃねえのか?」
距離をとった俺は背中にある双剣を抜き、構える。
「グォォォオオオオオ!【ビーストクロウ】」
「嘘だろ!?お前もスキル使うのかよ!ってやべえ!」
さっきと比べほどにもならない速度で腕を俺に向けて振り下ろす。俺は全力で【ステップ】を使い、【ステップ】だけではなく、自分でも全力で飛び退く。
ドッゴオオオオン!
「危ねえ!」
振り下ろされた腕をなんとか避けることができた。だが、振り下ろされた腕は、地面に食い込み、なかなか離れない。
「威力が高いだけあってその後の隙もでかいな!【ダブルスラッシュ】!」
俺はその腕を駆け上がり、ブラックベアの頭を向かって二刀流剣術スキル【ダブルスラッシュ】を発動させる。【ダブルスラッシュ】は、ブラックベアのクリティカルポイントに当たり、一撃でブラックベアのHPを全損させる。
「首飛んだ!!なにそれ怖いわ!」
流石に血は出なかったが、ブラックベアの首が双剣によって首が飛んだ。いらなくねそれ!血が出ないって逆に怖いわ!見る人がみたら失神するんじゃねえの?
「まあ、面白いからいいか。お、レベルアップか」
ポーンと音がなり、レベルが上がったことを知らせる。
『称号【一匹狼】を取得しました。剣士のLVが5になりました。剣術系のスキルの威力がアップしました。召喚師のLVが5になりました。新しい召喚獣と契約できます。ブラックベアと契約することができます』
と俺のLV15がなったあと、そんなメッセージが流れた。【一匹狼】ってなんだ?ちょっと見てみるか。メニューを開き、称号を見る。
new!【一匹狼】獲得条件:種族が狼であり、ソロでLV15になる。効果:ソロの時にAGIとSTRが1.5倍になる。逆に、パーティの時は、全ステータスが減少する。
…………うん。使えるけど、パーティは組まない方がいいなこれ。てか、さっきから目の前にあるこれなによ?なになに?
『ブラックベアと契約しますか?yes/no』
おお!するする。yesと。
『ブラックベアと契約しました』
これってモンスター倒す毎に契約出来るのか?それともなんか条件があるのか?そういえばヘルプってあったよな。お、あったあった。
『はい。ナビゲーターのヒユリです。ご用件はなんでしょうか?』
「さっき倒したブラックベアっていうモンスターと契約したんだけどさ、これって召喚師
になっている人だけができるのか?」
『はい。そうなります』
「契約するには何か条件があったりするのか?」
『………………質問に質問を返すようで申し訳ありません。一つお聞きしてもよろしいですか?』
「なんだ?」
『なぜ貴方はそんなにも冷静でいられるのですか?他のプレイヤーはまだ、阿鼻叫喚している最中だというのに、なぜ貴方はそんなにも冷静で、着々とレベルをあげることができるのでしょうか?』
ああなんだ、そんなこと。
「まぁ確かにこんなことになって俺も焦ったし混乱したよ。だけどさ、俺は生き残りたいんだ。なのに街に篭ったり、焦ったりばっかしてたら、意味ないだろ?だから俺はLVをあげるんだ。生き残るために。そのためには冷静でなくてはいけない。今はなにすべきか。どう行動するべきか考えるためにな」
俺の答えにヒユリが少し沈黙する。
『…………ありがとうございました。すみません、質問にお答えします。カナさんの言うとおり、倒したモンスターと契約するには何かの条件があります。カナさんが契約したブラックベアの条件は、攻撃を一度も受けないこと。それからブラックベアを一撃で倒すことの二つです』
俺はラッキーだったってことだな。
「ありがとう。あと、もう一つ」
『?』
「GMに伝えてくれ。俺は絶対にこのゲームを生きてクリアする。ってな」
『……………はい。わかりました』
あれ?なんかちょっと声色が柔らかくなったような………ま、いいか。
そういやLVUPしたんだったな。ポイント割り振っとくか。じゃあ、AGIに全部と。
よし!これでいいか。
お?もう夜だな。
「宿とって寝るか」
俺はレナレスに戻り、宿の中に入った。
「女将さん。一泊頼む」
「あいよ!45Gだよ。ご飯はいるかい?」
「いんや。いらない」
45G取り出し、女将に渡す。
「いい夢みなよ?」
「ありがとな」
そういって俺は自分の部屋に行き、鍵をしめ、ベッドへと倒れ込む。
「なかなか寝心地いいなぁ」
そういえばこのゲーム。部屋の鍵さえかければ、中の人しかあけれなくなるんだっけ。そこは助かったな。
とそんなことを考えながら俺は意識を手放した。
名前:カナ
LV15
称号:new!【一匹狼】
第一職業:剣士 LV5
第二職業:召喚師 LV5
召喚獣:ゴーレムLV3 new!ブラックベアLV1
ステータス
HP:123
MP:95
STR:43
AGI:64+5
DEX:50
INT:39
MDF:38
VIT:46
LUK:39