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【Skill&Level ONLINE】  作者: 柊 紗那
第六章 機械仕掛けの虹の女神
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連行

「カナ、さん……!カナさんっ!」


頬に落ちる、冷たい雫の感触に俺はうっすらと目を開けた。長い時間目を瞑っていたせいか、ぼやける視界に目を凝らすと、涙を流していたのは整った顔をぐちゃぐちゃにして泣く、エミリアだった。


「エミ……リア」


エミリアを安心させようと名前を呼ぼうと思ったが、喉から出たのは、自分でも驚くほど弱々しく、そして掠れた声だった。


「カナさん!よかった。本当によかった」


だけど、それでもエミリアには聞こえたようで、涙を拭い、満面の笑みを浮かべた。


「何で、エミリアがここに?」


エミリアに問いながら、ゆっくりと上体を起こす。体が軋み、脳髄を突き抜ける激痛に顔をしかめる。


「あのあと、集まってきたモンスターを一掃したんです。そしたら、下へ続く階段が現れて、階段を下って見たら、ここにカナさんが倒れていたんです。HPが1の状態で…………。ほんとに、死んでしまったかと、そう思いました……っ」


そう、か。それは申し訳ないことをした。というか、守るべき人を悲しませてしまったら、本末転倒じゃないか。とは言っても、あそこで生き延びるための手段はあれしかなかったのだから仕方が無い。いや、もしかしたら他にあったのかもしれないが、俺はこれしか思いつかなかった。

取り敢えずエミリアが泣き止むまで、痛む体に鞭を打ち、エミリアの頭を撫で続けた。





「そういえば、毛色がさらに黒くなっているのですけど、なにか、あったんですか?」


落ち着いたエミリアは、開口一番そう俺に聞いた。まあ、隠していても仕方が無いので、エルドラドとの戦いのすべてをエミリアに話し始めた。


「何と言いますか、いろいろとぶっ飛んでいますね」


「ああ、我ながら、ユニークスキルと種族変化をするなんて思ってもなかった」


話を淡々と受け入れたエミリアは、話し終わった途端ため息をつき、呆れたように零した。


「とにかく、無事で、よかったです」


そう言って、エミリアは俺の体を抱き締める。今現在痛みに堪えている体を。


「いっだだだだ!エミリア!痛い!ちょっ、離してくれ!」


「ごめんなさい!大丈夫ですか?」


悲鳴を上げた俺を慌てて離す。エミリアという支えを失った俺は、そのまま地面に力なく倒れた。やばいな。これが【限界突破】の副作用か。思ったより、きっついな。


「エミリア。新しいスキルの副作用みたいなもので、俺、丸三日動けないんだわ。たはは」


あっけらかんと言う俺を見て、エミリアは難しそうな顔をする。そして、何秒間か考えたあと、かなり黒い笑みを浮かべた。


「あの、えっと、エミリアさん?なにを企んでいらっしゃいますか?」


「ふ、ふふふ。別に、動けないカナさんの毛をもふもふしたりくんかくんかしたり、看病という口実に私の部屋へ連れて行こうとなんて、考えていませんよ?」


思いっきり考えていらっしゃるっ!てか、わざと教えて俺の反応を楽しむ気だ、こいつ……っ!


『はは、よかったな。モテモテじゃねえか』


笑い事か!お前はどうなんだよ。なあ黒。お前がこうなったとして、今みたいに笑えんのか?


『…………いや、笑えねえな。動けないから、されるがまま。そんな状態で貞操の危機っつーのは、笑い話にもならん』


だろうよ。


『でもよ、お前がそうなるのは、見てて楽しいぜ?』


人の不幸は見てて楽しいってか?そうかよ。ああそうかよ!畜生!


「それでは、カナさん。運びますね?」


そう笑ったエミリアは、俺の背中に右手を差し込み、左手を膝裏に当て、抱き上げた。


「ふふっ、やっぱりカナさん、もふもふしてますね」


いや、まて、この状態はまさか。


『お姫様抱っこ、だな』


言うな!頼むからやめてくれ!男としての自尊心が木っ端微塵に砕け散りそうなんだよ!


「さて、行きましょうか」


「ああ、もう、勝手にしてくれ」


「はい♪」


自棄になった俺を抱きかかえ、鼻歌を歌いながらエミリアは階段をのぼっていく。途中で襲いかかるモンスターを蹴散らしながら。














あのあと、俺はエミリアの部屋に連行されていた。エミリアの部屋は若草色を基調にした、落ち着いた色合いの壁や天井、そして意外にも女性らしい内装の部屋だった。部屋に入ったときから、女性特有の甘い匂いがただよっており、心臓が早鐘のように鳴り響く。うるさく鳴り響く心臓を抑え、落ち着こうと深呼吸を繰り返すが、収まる気配はない。結果としてエミリアと俺は密着しているわけで、それはどういうことかすべてがエミリアに伝わっているわけで。俺が今どうなっているか理解したエミリアはさらに密着して、それなりに大きな胸を右腕に押し付けてきており、右腕から伝わるふにゃふにゃとした柔らかさと、エミリアから香る甘い匂いに、もうどうにかなってしまいそうだった。


「ふふふ。ねえ、カナさん?ちゃんと、寝ててくださいね?」


ベッドへ寝かされ、さらに強まった甘い匂いと、耳元で囁かれた言葉にゾクゾクした。

くそ、人が動けないのをいいことに好きかってやりやがって。


「はぁ〜〜〜。これから、どうしようか」


というか、誰か助けて。


















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