閑話 緑龍エルドランド
ーー緑龍エルドランドは訝しんだ。
長い間『緑龍の守り湖』を住処としているが、侵入者など、今までに一度もなかった。まるで上から落ちて来たみたいな侵入の仕方に疑問をもったが、いつの間にかここの真上に、遺跡が作られたようで、遺跡ならば罠の一つや二つあっても不思議はないように思えた。故に、自分がすべきことは一つだけ。侵入者の排除だ。今までの平穏を脅かす異分子を排除するため、エルドランドは咆哮し、侵入者へと向かって行った。
ーー緑龍エルドランドは驚愕した。
僅かながらとはいえ、獣人が自分にダメージを与えて来たのだ。緑龍は、龍の中では最底辺に位置する。他の龍と比べ、ブレスの威力や飛行能力。STRやAGIにVIT。なによりHPが大きく劣っているため、単純な戦闘能力でいうと、ワイバーンと同じくらいかもしれない。なぜ、緑龍が、龍と呼ばれているか。それは、特殊能力が備わっているからである。他の龍にも特殊能力は存在するが、緑龍は、その特殊能力の強さが、他の龍の特殊能力とは比べほどにもならない。例えば、鉄をも溶かす王水よりも強力な毒だったり、受けた傷を癒す治癒能力などと、他にも強力な特殊能力をもっているからこそ、龍と呼ばれているのだ。
ーー緑龍エルドランドは恐怖した。
手っ取り早く排除しようと、『緑龍の息吹』で消し飛ばそうとしたのだが、見事に躱され、さらに反撃を食らった。しかも、微量なダメージではなく、HPゲージを丸ごともっていかれるような大ダメージを。そして、立て続けに受けた攻撃で、三割もHPをもっていかれた。
エルドランドは恐怖した。目の前にいる獣人が、自分の獲物や侵入者などではなく、自分を脅かす、自分を殺せるものだとわかったのだ。
ーー緑龍エルドランドは、密かに賞賛した。
エルドランドは、恐怖と同時に賞賛した。獣人といえど、人間よりも少し戦闘能力に長けているだけなのだ。自分達龍種と比べれば、道端に落ちている石と大差ない。だが、目の前にいる獣人は違う。獣人は、自分を脅かすほどのダメージを、着々と与えて来ている。どんな鍛え方をしたのかはしらないが、並大抵じゃない、それこそ死ぬ気で鍛えたことは、理解できる。故に賞賛した。旗からみれば滑稽かもしれない。決して届かぬ高みへと、死ぬのも恐れず、てを伸ばし続けたのだから。だが、無理などというのは、やりもしない人間達の言い訳だ。愚行とも思えることに心血を注ぎ続けたからこそ、この獣人は、決して届かぬ高みへ、手を届かせたのだから。
ーー緑龍エルドランドは訂正した。
獲物や侵入者など、このものを愚弄する考え方を改め、エルドランドは、目の前にいる獣人を、自らを脅かす敵と認めた。
そして、このものに敬意を払うべく、本気を出すことにした。久しく見ぬ強き者、カナという獣人へ。
カナとの戦いを、楽しむために。
ぶっちゃけ、この緑龍さん。ただの龍よりも厄介です。




