殺戮機械
さて、見たところ動きは鈍そうだが、注意は必要だな。【双剣:湖竜刀水桜】を背中から抜き、構える。所々回路や骨格がむき出しになっている身体。途切れた回路から火花が散っている。キャタピラーが擦り切れ、動きが鈍い。殺戮機械LV32。HPゲージは一本半か。
「ギロロ」
「っ!」
悪寒を感じ、【双剣:湖竜刀水桜】を振るう。
ぐっ、重っ!
「ふっ!」
振り抜き、何かを弾く。弾かれた何かは、石の天井にぶつかり、食い込んだ。
「円板、ですね」
弾いたのは、錆びた円板だった。石の天井に減り込むっていうことは、錆びてても切れ味がいいってことか。飛び道具か、厄介な。
「エミリア、俺が円板を全て引き受ける。その他の攻撃も全て。エミリアは遠距離から魔法で攻撃してくれ」
「わかりました」
「んじゃ、行くぜ。【ダッシュ】はっ!【ソリッドショット】」
「ギロオ」
殺戮機械に【ダッシュ】で肉迫し、【ソリッドショット】で蹴り飛ばす。HPが三割削れ、ガンッと鈍い音を立てて吹き飛び、壁にぶつかる。
「《アイス・バロック》」
「ギロ」
エミリアが、デカイ氷の塊を殺戮機械にぶつけ、HPを二割削る。殺戮機械の装甲がひしゃげ、右腕が潰れた。
「っと!」
体を捻り、円板を躱しす。が、すぐに弧を描いて戻ってくる。ちっ、戻ってくんのか。躱して駄目なら……
「たたっきる!【抜刀術・居合一閃】ッ!」
納刀状態から抜き放ち、【抜刀術・居合一閃】で真っ二つにする。そのまま【風斬刃】を放つ。
「ギロロ【レーザー・ビーム】」
殺戮機械の【レーザー・ビーム】と【風斬刃】がぶつかり、互いに霧散する。
「っ!……がっ」
いつの間に、円板飛ばしやがった!?しかもご丁寧に背中に当てやがって、腹立つな。
「いてぇ……なっ!」
独楽回転のように回り、流す。円板はそのまま殺戮機械へ向かっていく。
「お返しだ!」
【ジャンプ】で前方に飛び、円板に飛び蹴りをかます。円板を殺戮機械に押し付け、【納刀術・六連斬】を殺戮機械の身体に叩き込む。
「とどめ、頼んだ!」
「はい!《貫け。氷砲弾》」
エミリアは、少しの詠唱を必要とする中級魔法を放つ。《氷よ集え。集まり、凝固し、そして貫け。氷砲弾》というのが本来の詠唱だが、エミリアがとった初期スキル【詠唱短縮】のおかげで、二言発するだけで発動させることができる。
「ギ」
氷の砲弾は、殺戮機械の真ん中を貫き、HPを全損させる。そして、ポリゴン片となって砕け散った。
「ナイス」
「カナさんこそ」
激励し合いながら、消耗したHPとMPを、ポーションで回復させる。
「お、なんか動いたな」
部屋の壁が移動し、下へと続く階段が顔を出した。
「行くか」
「そうですね」
俺は、エミリアと一緒に階段へ向かった。