ギルドメンバー確保
「会議っていう会議でもないんだが、少し相談がある」
起床し朝食を済ませ、ギルドメンバー全員を会議室に呼び出した俺は、そう切り出した。
「まあ、別にこの人数でもいいんだが、俺は、もう少し増やした方がいいと思う。βテストの時はこの人数でも良かった。だけど、今は状況が違う。時期にPK達がギルドを立ち上げて、行動を起こすだろう。この人数じゃ、恐らく対処出来ない。被害にあってからじゃ、遅いんだ」
「カナさんが一時期犯罪プレイヤーだったこと、ですか?」
「ああそうだ。俺は、その時にPK三人を殺した」
ファルが、俺に問い、俺の答えに全員が息を飲む。掲示板、見てなかったのか?
「いや、別にな?そんなに増やそうとは思ってないんだ。あくまで少数精鋭で行くつもりなんだよ。増えてもせいぜい六〜七人なんだ」
「そうですか。それで、その、六〜七人の中に、カナさん以外の男性って、いますか?」
俺の言葉に全員が安堵する。統合したとはいえ、【妖精の気まぐれ】の形をあまり崩したくないらしい。それは俺も同じだ。
エミリアが、恐る恐る、と言った感じで俺に尋ねる。
「あ、ああ、三人程。といっても、入るかどうかわからないが」
「カナさんは、なぜ私達が女性限定ギルドを、【妖精の気まぐれ】を立ち上げたか……わかりますか?」
エミリアの端正な顔が、悲痛に歪む。
「無理に話さなくても……「にぃに、聞いてあげて。お願い」……あ、ああ」
「私達は、男性恐怖症なんです」
「なっ」
エミリアの告白に、俺は言葉を失った。男性恐怖症。聞いたことならある。だが、エミリアはそんなそぶりすら見せなかった。いや、俺がちゃんと見てなかっただけか。
「普通に、話したりするのは大丈夫なんです。でも、近づき過ぎたり、触られたりすると……体が震えるんです」
辺りを見回すと、カヤ以外の全員が、俯いていた。その顔は青い。
「きっかけは、カヤさんでした。私達は、現実でも知り合いで、βテストが始まってから、集まって一緒に怯えていました。そこに、カヤさんが声をかけてくれたんです。一緒にギルドを組もうって。男性恐怖症の私達を気遣って、女性限定ギルドを作ってくれたんです。男性には、少しづつ慣れて行けばいいとも言ってくれました。そのおかげで、βテストの時に、最大ギルドと言われるようになりました」
へえ、カヤはそんなことをしていたんだな。
「ん?じゃあ、俺と酒場で話し合った時に、エミリアはなんで何もなかったんだ?」
酒場での距離は、かなり近かったが、エミリアの体は震えていなかった。
「そ、それは……あまり、男性ぽくないっていうか、可愛いというか」
そうですか、そうですよね。そうなりますよねどう考えても。ちくしょうorz
「ま、まあ、多分大丈夫だと思うぞ。エミリアも知っている奴らだしな。んじゃ、行ってくるわ」
そう声をかけ、ギルドを出る。広場に出て、ポータルで第二の街へ転移し、酒場の中に入り、席につく。
お茶を頼み、ファミリア達に、話があるからと、酒場に呼び出した。
ファミリア達は、僅か五分程で酒場にやってきた。酒場の中を見渡し、俺の姿に気づくと、走り寄ってきた。
「カナ、お待たせ」
「いや、全然待ってねえよ」
たったの五分だったしな。
俺が読んだのは、ファミリア、エミー、ミリー、ウロス、ユロ、エーズ、エリゼの七人だ。
「はじめにごちゃごちゃいうのは好きじゃないから、単刀直入に言わせてもらう。俺がギルドを立ち上げたことは、知ってるか?」
「【妖精の気まぐれ】統合ギルド【死神の気まぐれ】でしょ?」
「ああ。それで、お前らには、【死神の気まぐれ】に入って欲しい」
そう言った途端、ファミリア達女性の顔が驚愕に染まり、ウロス達男性の顔が難しい顔になる。
「本当に!?本当にいいの!?」
「ああ、良ければ」
どうやらファミリア達は全員入るようだ。ウロス達はどうするんだ?
「ははっ、カナ、俺達ははいらねえぜ」
「そうか?」
「ああ、カナとは仲間じゃなく、ライバルでいたいからな」
ほかの二人を見ると、ウロスの言葉に同意の様だ。
「そうか。今日はありがとな」
「ああ、じゃあな」
ウロス達が、冷めたお茶を飲み干し、酒場をあとにする。
さて、四人を連れて帰るか。