オケアヌスとの戦闘 後半
『湖の桟橋』のボス、オケアヌスとの戦闘は、ブラッテイベアのように部屋の中で戦うわけでは無い。そのため、オケアヌスとプレイヤーの戦闘を、他のプレイヤーが遠くから見ることが可能となっている。
元【妖精の気まぐれ】のギルドメンバーのリナは、カナがホームを出て行った時から、こっそりあとを着いてきていた。
「うわぁ………………これじゃどっちがボスかわからないよ」
リナの目の前では、化け物同士の壮絶な戦いが繰り広げられている。
リナの視線は、カナから外れることは無い。正直、ホームではああいったものの、まだ若干の不安があった。
しかし、これをみてしまえば、不安を抱けという方が無理だろう。まさにカナは化け物だ。脳の処理速度がまず異常。あの速度に思考が追いついているのはおかしすぎるのだ。そして、判断力、行動力共に異常。【激流葬】から逃れるため、咄嗟に判断し、【ダッシュ】から【ステップ】に切り替える。人の行動には、どうしても迷いがついてくる。その迷いが命取りになるのだが、カナには迷いなど一寸も無い。自分が危険だと感じたらその危険から逃れ、自分がいけると思ったら、とことん攻撃する。まるで獣だ。
実力やら身体能力やら、いろいろと異常だ。
そんなカナの姿を間近で見てしまえば、不安など抱けるはずも無い。
「頑張って」
懸命にオケアヌスと戦っているカナを、リナは密かに応援した。
【毒水弾】
「遅い!【風斬刃】」
あの野郎。【毒雨矢】の後から、積極的に毒らせるスキルを使ってきやがる。
【毒水弾】を避け、【大太刀:血染めの桜】を抜き放ち、【風斬り刃】を放つ。オケアヌスのHPは、三割削れた。さっきからずっと、【獣化】していて、満腹度がどんどんと減っている。隙を見ては満腹度を回復して【獣化】を保っている。【満腹度減少抑制・中】のお陰で、減少速度がかなり遅くなり、いちいち回復する手間が省けた。
「【ジャンプ】おぉらぁ!【ダブルクラッシュ】」
「キィィィィイ!」
オケアヌスの頭上に【ジャンプ】で飛び、【ダブルクラッシュ】で床に叩きつけ、四割削った。
「これであと一本!【断裂】!」
落下に身を任せ、【大太刀:血染めの桜】振り抜き、【断裂】を放つ。オケアヌスの頭を深く切りつけ、炎ダメージを与える。オケアヌスのHPを三割削り、残りのHPゲージは、あと一本。
「キィィィィイ!【薙ぎ払い】!」
「【ジャンプ】」
オケアヌスが起き上がり、翼で【薙ぎ払い】をかける。俺は、【ジャンプ】で後ろに飛び、危なげなく躱す。
【三連水弾】【三連毒水弾】
「ちっ、【ダッシュ】………【スラッシュ】」
【三連水弾】と【三連毒水弾】を【ダッシュ】で躱し、オケアヌスとすれ違いながら【スラッシュ】で切る。オケアヌスのHPを二割削る。
「キィィィ【激流葬】」
くっ!そこで【激流葬】か。
俺は、【ダッシュ】で【激流葬】を避け、オケアヌスから距離を取る。さっきまで俺のいた桟橋は、木っ端微塵に砕けていた。
オケアヌスの隙だらけな体に、【風斬刃】を放ち、HPを三割削る。
「キィィィィイッ!【毒雨矢】」
「またかよ!【ダッシュ】」
夥しい数の毒水の矢が、桟橋に降り注ぐ。俺は、【ダッシュ】を全力で使用し、なんとか避ける。
「ガラ空きだ!【風斬刃】!」
オケアヌスのHPを、【風斬刃】で三割削る。残りはあと二割。
「キィィィィィィィィイイイッ!!【ポイズン・デス・トラクション】」
トドメをさそうとした瞬間、オケアヌスが上を向き、甲高い咆哮をあげる。咆哮に合わせ、桟橋が大きく揺れ始めた。
「いやいやいやいや!!ちょっ!嘘だろ!」
なにか物凄い音がして、後ろを見ると、周り水が緑色に変色し、津波の如く桟橋を破壊しながら、桟橋を飲み込もうと、四方八方から向かってきていた。
これやばい!どうする!逃げ場なんかないぞ。いやマジどうするよ。
「っ!だぁぁぁあ!一か八かだ!【ダッシュ】ッ!」
オケアヌスに向かって、全力で【ダッシュ】を使用して、自分でも全力で駆ける。
「おぉぉぉぉぉぉッ!【ビーストクロウ】ッ!」
「キィィィィィィィィイイ!」
まだ咆哮をあげているオケアヌスの喉元に、【ビーストクロウ】を叩き込み、HPを全損させる。ちらっと後ろを見ると、もうすでに緑色の水が、あと数cmのところまできていた。
あっぶねえ。
オケアヌスがポリゴン片となって砕け散り、散々だった桟橋が、綺麗に元通りになって行く。
「ひとまず、終わった」
【獣化】を解除し、桟橋に四肢を投げ出して、ガッツポーズをした。
・ドロップ品
【湖竜の鱗】
【湖竜の爪】
【湖竜の毒翼】
【湖竜の心臓】
【湖竜の魂】
【湖竜の顎】