『湖の桟橋』オケアヌスとの戦闘 前半
「はぁ、はぁ、はぁ。疲れた」
【妖精の気まぐれ】のホームを出てから、『湖の桟橋』の攻略に取り掛かった。汚泥のようにまとわりつく何かをふりはらうように突き進んだ。
「セーフティーエリアか」
なにも考えず、がむしゃらに進んだため、今自分がどこにいるかわからなかったが、いつの間にか、セーフティーエリアまで来て居たようだ。
どうやら、『湖の桟橋』のボスは、ブラッティベアのような部屋で戦うのではなく、円状になった真ん中に穴が空いた桟橋の上で戦うらしい。
俺が円状の桟橋に足を踏み入れた瞬間、桟橋が大きく揺れ始め、中央に空いた穴から、巨大な青い龍が飛び出して来た。緑色の半透明な翼を広げ、俺を睨みつけた。オケアヌスのLVは30。HPゲージは三本ある。
「キィィィィィィィイ!」
「喚くなよ。うるさい」
【ダッシュ】でオケアヌスに近づく。
「キィィイ!【激流葬】」
「くっ!【ステップ】」
【激流葬】って、リヴァイヌの【激流】の一つ上か!?
【ステップ】を全力で使用して、【激流葬】を避ける。オケアヌスの口から、触れるモノをすべて葬らんとする激流が吐き出され、俺の数cm横の桟橋を木っ端微塵に砕く。
これは、くらったら終わりだな。
「あぶねえな!【風斬刃】!」
「キィイッ!」
【双剣:雪桜】を抜き放ち、【風斬刃】をオケアヌスの頭に向けて放つ。オケアヌスは、体を捻り、【風斬刃】を躱した。が、体を捻ったことによって、半透明な翼に【風斬刃】があたり、深く切り込みを入れた。切り口が凍り、燃え、氷属性+炎属性ダメージをオケアヌスに与え、HPを二割削った。
VIT低いな。いや、リヴァイヌがあれだけ手ごわかったんだ。こいつも多分何かある。
「それがわかるまで遠距離攻撃だなッ。【風斬刃】」
「キィィィイ!」
よし、今度は頭に当たったな。HPを三割削りとった。
「ッ!やばいな。【半獣化】【ウオァァァァァァァァアア!】」
スキル【危険察知】、いわゆる第六感を増やすというスキルで、危険を察知すると、スキルをもっている人の頭の中に警報をならすのだが、俺の頭の中に、大警報がなり響いた。
「キィィィィィィィイッ!!【毒雨矢】」
「うおおおっ!【ダッシュ】ッ!」
オケアヌスの半透明な両翼から、夥しい数の緑色の水矢が雨の如く降り注ぐ。俺は【半獣化】での【ダッシュ】でなんとか避けられたが、降り注いだ桟橋は、ジュウと音を立てて溶けていた。
「酸、いや、毒か!?」
そう言うことか。特殊攻撃があるからステータスが低めなんだな。つっても、下手に高いより手強いぞこれ。
「早めにけりつけるか!【獣化】ゴァァァァァァァァアッ!【ターン】【ジャンプ】【ウルフショック】ッ!!」
【ターン】でオケアヌスの背後に回り、【ジャンプ】でオケアヌスの後頭部に乗り、オケアヌスの頭に、【ウルフショック】を叩き込んだ。
「キィァ」
物凄い勢いで、オケアヌスは桟橋に減り込み、呻き声を上げた。オケアヌスのHPを【ウルフショック】で四割削り、桟橋に叩きつけたことで、もう一割削る。
「まだまだぁ!【断ッ裂】ッ!」
寝ている場合じゃねえぜ!
オケアヌスの後頭部に、落下しながらの【大太刀:血染めの桜】を全力で振り抜き【断裂】。オケアヌスのHPを3割削った。
「キィィィィィィィイッ!!」
「【ゴァァァァァァァァア!!】」
すぐにバックステップで距離をとる。オケアヌスは起き上がり、咆哮を上げる。
俺も同じ【咆哮】で打ち消した。
「まだまだこれからだ」
通常のプレイヤーならば全身の筋肉が萎縮するほどの咆哮を受けても、不敵に笑う黒い化け物の姿が、そこにあった。