諦めきれない想いll
「私も、初めてカナを好きになったときはすぐに諦めようと思いました。私じゃあの人とは吊り合わない。決して交じり合うことはないと言い聞かせて」
エミリアさんは、夜空を見上げながら言った。宵闇に包まれてエミリアさんの顔を窺い知ることはできない。だから、エミリアさんが今どんな顔をしているか、わからなかった。
「ホルン、貴女はこの世界ではじめてボスを倒したプレイヤーを知っていますか?」
「カナさん、ですよね?」
そう、はじめてボスを、ブラッティベアを倒したのはカナさんのはず。
「そうです。当時私は、この世界に閉じ込められたことを知り、すぐに宿に閉じこもりました。死にたくない。PKの対象になりたくない。街なら安全だ。と、そんな考えで」
「エミリアさんが、閉じこもった?」
いつも冷静沈着で落ち着きのあるエミリアさんが錯乱して閉じこもった?あり得ない。まずエミリアさんなら自分に何ができるか考えて行動するはず。そんなことを考えていたら、エミリアさんはあげていた顔を元に戻し、私を見つめた。
「普段の私からじゃ想像もつかないだろうけれど、本当に閉じこもっていたのよ。でも、カナさんは違った。閉じ込められたこ知ったカナさんはまず何をしたと思う?」
「なにを、したんですか?」
「閉じ込めた張本人に質問したのよ。錯乱するでもなく、泣き叫ぶのでもなく、まず、あの状況を一番よく理解している張本人に、聞いたのよ」
閉じ込めた張本人に、聞いた?質問したってこと!?
「なにを、聞いたんですか?」
恐る恐るといった感じの私の目から視線を外すことなく、エミリアさんは続けた。
「『お前はさっきこれはもう一つの現実だといった。それはどういう意味だ?』そう聞いたのよ。私もあとからこの言葉をカナさんから聞いたの。よくそこに気がついたと思った。 カナさんも多分少なからず混乱していたと思う。でもそんな中で、カナさんは自分が生き残るためにそう聞いた。自分が生き残るために閉じこもった私とは正反対」
「……っ」
エミリアさんに声をかけようと思った。でも、喉から出たのは掠れた声だけ。かける言葉が見つからなかった。
「カナさんが遺跡の下へ落ちて行った時、私はカナさんのことが好きだって気付いたの。でも、その時に、閉じ込もった私じゃカナさんに吊り合わないということにも気がついた。諦めようと思った。私じゃ吊り合わないと言い聞かせて」
でも、とエミリアさんは続ける。
「諦められなかった。言い聞かせれば言い聞かせるほど想いは強くなっていきました。だから、とでもいいましょうか。抑えきれなくなって、告白しました。てっきり断られると思っていましたが、受け入れてもらえました」
そういったときのエミリアさんの嬉しそうな顔をみて、私は下を向いてしまった。エミリアさんが悪いわけじゃないのに、少し、嫉妬してしまった。
「長々と喋ってしまいましたが、私は諦めることができなかった。ということです」
下を向いていた私のほおに白くて冷たい手が添えられた。恐る恐る上を向く。エミリアさんは、そんな私を見て微笑んでいた。




