ブラッティベア前半戦
「違和感半端ないな」
俺の前にあるのは恐らくこの先がボス部屋で有ろうと思われる扉だ。高さは大体三m程か。その扉は崖のしたに作られていて、その扉だけが異質で、嫌な雰囲気を醸し出している。
「体力よし。回復アイテムよし。武器の切れ味よし。満腹度よし。さて、やりますか!」
威勢のいい声と共に、その扉を押し開ける。その奥はまるで熊の冬眠する穴のように広く丸い形をしていた。壁に幾つか松明がついており、【夜目】がなくとも戦えるようになっている。その穴の中心に黒い塊がいすわっている。恐らくアレがボスだろう。丸まっているだけなのに存在感が半端ない。俺が中に数歩進むと、ガタンッという音と共に扉が閉まる。扉が閉まると、丸まっていた黒い塊がむくりと起き上がる。体長はおよそ三m。ブラックベアより一回りでかい。ブラックベアとよく似たその熊は、俺を視界に捉えると、大きく咆哮をあげた。
「グォオオオオオオオオ!!!」
ブラックベアとは比べほどにならない程に大気を揺らす咆哮。その咆哮とともに熊の図上にボスの名前とLV。それからHPが映し出された。
「ブラッティベアか。流石ボスだ。HPゲージが一本半ありやがる。これは長期戦になりそうだな」
ちなみにブラッティベアのレベルは20。俺よりLV5高い。
「最初っから全力でいかせてもらうぜ!サモン:ゴーレム!」
「ゴーー」
俺がゴーレムを召喚すると同時にブラッティベアが俺に向かって突っ込んできた。
「ゴーレム!お前は好きに戦え!FA任せた!」
俺はゴーレムに指示を与え、【ステップ】でブラッティベアの後ろに回る。やっぱり思った通りだ!タゲが俺からゴーレムに移った。
さて、なぜ俺がゴーレムにFAを任せたというと、FAしたものにヘイトが溜まり、タゲがいきやすいからだ。ゴーレムは幸いHP、VITが高く、打たれ強いので、壁役にはぴったりだ。
「グォオオオオ!!」
「ゴー!」
ブラッティベアは咆哮と共にゴーレムに向かって腕を振るう。ゴーレムはその腕を受け止め、自身の右腕をブラッティベアの体に叩き込む。ブラッティベアはゴーレムの攻撃により、HPが二割削れ、受け止めたゴーレムもHPが三割削れる。
ーーゴーレムの高い防御力を持ってしても三割削れるのか。これはあまり長く戦わない方が良さそうだ!
「【半獣化】ウオァアアアア!!【ビーストクロウ】【ビーストファング】!」
半獣化して使えるようになったスキル。【ビーストクロウ】【ビーストファング】を連続で使う。ブラッティベアの後頭部に向かい、左腕で【ビーストクロウ】、右手でブラッティベアの腕を掴み、肩に【ビーストファング】で噛み付いた。
「グォオオオオオオオオ!!」
「ゴーー!」
【ビーストクロウ】と【ビーストファング】でブラッティベアのHPが三割削れたところに、ゴーレムがクリティカルポイントの頭を殴る。それによってブラッティベアのHPが三割削れ、イエローゾーンに突入する。
「グッオオオオオオオオ!」
「っ!」
危ねえ!飛び退いて良かった!
イエローゾーンに突入したブラッティベアは、腕を振り、ゴーレムを吹き飛ばす。ギリギリでかわした俺はダメージを喰らわなかったが、まともに食らったゴーレムのHPはイエローゾーンまで減っている。アレが俺だったら一発K.Oだろう。
「うおっ!よっ!とっ!はっ!」
タゲが俺に移り、イエローゾーンになって速度が上がった攻撃を俺に仕掛けてくる。その速度は、AGI特化である俺が一発よけれても、二発目はよけられない程の速度だ。しかし、半獣化した俺には軽くよけられる。
「おおおおおおりゃぁああ!」
ブラッティベアの腕を掴み、振り回して壁にぶつける。これによってブラッティベアのHPは三割削れ、レッドゾーンまで減る。
「よっと、飯食わないとな」
すぐさまブラッティベアから飛び退いて距離を取り、【半獣化】によってかなり減った満腹度を回復する。
のそりと起き上がったブラッティベアの体から赤いオーラが漂い、振り向いたブラッティベアの目は赤く充血している。
「ゴアァァァァァァァァァァア!!!!」
ハン!後半戦だ!