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人生最高のワンゲーム

作者: 澤西雄二郎
掲載日:2026/05/03

ピピピピ ピピピピ


目覚まし時計と朝のほのかな眩しさにゆっくりと目を覚ます。

上体を起こし、腕をピンと伸ばす。

「~~~!」

言語化できないうなり声が出てしまう。

目をこすりながら階段を降りると娘たちが足に飛び込んでくる。

「「おはよ~パパ~~」」

「おはよう、マイ、オリーブ」

娘を一人づつ両手で抱え、おでこにキスをする。

「おはよう」

「おはよう、今日がいい天気でよかったよ」

「えぇ、そうね」

妻にもあいさつし、キスをする。

「今日はお出かけの日だよね?」

「どこ行くの?」

「今日はね、最初は少し退屈かもね、けどそれが終わったら一緒にピクニックだ~!」

「「やった~~~!」」

喜びのあまりぐるぐるとその場を回る娘たち

それをほほえましい表情で見る妻

あぁ、幸せだ

今日は5月の23日

約束の日

あれから十五年の月日が流れたが、それも今日で終わり

今日ですべてが終わる






10年前

俺は親友かつ同僚のジークズとよくポーカーやスロットなど、ギャンブルを楽しんでいた。

そんなある日、俺は調子が悪く負け続けていた。

そこで俺は一つ大きな『賭け』の約束を持ち掛けた。

「幸せだったほうが勝ち?」

「あぁ、これから先、十年先とか、幸せだったほうが勝ち、負けたほうが勝ったほうに10万$支払うっていうのはどうだ?」

「おいおい、俺がそんなの乗ると思うか?」

「どこが気に入らねぇんだ?」

「金と期間だよ、十年じゃ足りねぇ十五年は必要だ、それに10万$も甘い..........どうせ先長いんだ100万$とどうだ」

俺は正直震え上がった

ジークスには結婚しており、子供が一人、順調な人生を歩めば、俺に勝ち目はない

だからこそ勝負師の魂に火が付いたっていうもんだ。

「いいよ乗った」

約束として決定は第三者が行い、財産、精神的幸福度など総合的な要素を踏まえて優劣をつける。

十五年の5月23日

場所はこの廃工場跡

お互いに金属のネジを交換し合い、約束の時にお互い見せ合う

ネジがこの賭けへの参加チケットになる

必ずやってくる

これは金をかけた約束でもあり、男同士の熱く、硬い約束であった。

来月になると二人して会社を辞め、お互い全く道に歩みを進めた。




車に妻と子供を乗せ、一つ目の目的地に向かう。

「なんで教会に行くの~?」

「パパの友達に会いに行くんだ」

「どんな人?」

「そうだなぁ、何せ久しぶりだからな~」

今向かっているのは娘の言う通り、教会だ。

正確に言うと教会の『墓地』だ

ジークスはそこにいる




車を降りてジークスの墓地に花を手向ける。

「..........」

「ここにお友達がいるの?」

「あぁ、二人もママみたいにあいさつしてね」

「「はーい」」

妻のフレアは俺と結婚する前は、ジークスの妻だった。

娘が産まれてから忙しくて来れておれず、積もる話もあるのだろう。

墓石に向かってずっと手を合わせ、語りかけている。

「..........」

まだだ

まだだ..........

「ママー」

「........あ、ごめんね、パパお友達としゃべってたの」

「ママ話せたの?」

「まぁ、うん」

その顔はどこかすっきりとしたような、春の優しい風に似合った顔をしていた。




再び車に乗り込み、スーパーへ行き、妻と娘を下ろしてから、次の目的地へ向かった。

「約束の地........」

住んでいる都会からかなり離れた場所にある廃工場

妻にはそのままピクニック場に向かうように言ってある。

さびれた廃工場だが、なぜか駐車場は今なお健在である

車から降りて、ドアを開ける。

懐かしいこの感覚、15年ぶりだ

中野家s期はまるで時が止まったように、何も変わらない。

俺の頭の中にある思い出と全く変わらない。

少し先を行くと、ドラム缶が三つ並んだ場所を見つける。

「15年ぶり」

ドラム缶にネジを叩きつける。

そして大きく息を吸い、

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」

雄叫びを上げた。

だめだ

笑いが止まらない

腰が抜けてしい、地面に倒れこむ

それでもなお笑いはとどまることを知らない。

それどころか、この行動自体が面白くて仕方ない。

それから10分後ようやくひとしきり笑いの波が収まった。

実に滑稽、磔刑、無様、どんな罵詈雑言でも、今のあいつは何でも似合うだろうな

残念だったなぁ!

賭けの条件は第三者だったかな

俺は妻と娘二人、職も大手IT勤めで昇進も固い、順風満帆そのもの

なのに貴様はどうだ?

死んでる人間に幸せもみったくれもないわな!

それに俺の幸せの一部はお前を殺したことも含まれているしな







15年前のあの日

俺は心に誓った

『完全なる勝利』これを目標にすると

動機などない

『完全なる勝利』これただ一つ

恨みがあったとか、金に困っているとか、そんなしょーもない理由なんかじゃない

誇り高き『勝利』の前にはすべて同じよ

というわけで計画を開始した。

まずは自分自身の職を得ないといけない

というわけで大手ITに就職した

『勝利』のためならあんな問題や勉強など苦でもなんでもなかった。

そうして次にジークスの素性を丸洗いにする。

ITというのはすごいもんで、契約者の情報すべてが見れるのが一番驚いた

開く前にロックキーがあったが、簡単にすり抜けることができた。

「ビンゴ」

あった、『A・J・ジークズ』の名前が

まずはカード番号と口座の詳細を手に入れた。

次は家族の内輪だが、やつに妻と子供がいるのは知っている

妻はもともと腐れ縁だったが今はかかわりがあまりない、

対して子供のことは何もわからない。

そうしたら次にさらに詳細を調べていこう。

「A・J・ジークスさんですね」

区役所へ行き、ジークスの身元を調べる。

役所の職員には親戚の相続のための仲介人と噓をついた。

にしても、あんな粗雑な嘘でも通してくれるなんて、勝利の女神さまは俺についているみたいだ

「あった........」

しまった、もう奴は引っ越して、もうこの土地にいはいないことが分かった。

さっきの職員に一度聞いてみようか

「エスラン地方ですね、奥さんはあまり乗り気ではありませんでしたが」

なぜ奥さんの名前が?

と、そんなことはどうでもいい

気づけば一年が経とうとしている

急がなければ、とにかく二年目に入るまでにはエスラン近くに飛ばなければ

翌月

引っ越したのはエスランより少し南の都会「バラディラ」

この町はいい

街に活気があるだけではない

影がある

この町に引っ越してきて分かったのだが、この町には裏社会のドンがいる

おかげで警察は少し多いが、反社以外のもめごとや事件はめったに起きない

それがいい

そしてようやく見つけた。

ジークスを見つけた。

俺はそのままばれないよう慎重に尾行し、家を特定できた。

やはりやつは間抜けそのものだ。

よし、あとはあの女だけだ




「オルクス!?」

「えぇ!?フレア?」

俺は偶然を装い、フレア行きつけのbarに入った。

「えぇ!出張で...」

「はい、バラディラはいい場所ですね」

「いいなぁ、私もバラディラがよかった」

「今はここ?」

「うん、ジークスと息子のことを考えたんだけど、もう何もわからないや」

お酒が入っているせいか、少しいつもより弱気になっているフレア

「はい、水飲んですっきりしてください」

「ふぇ~ありがと~」

これはさっきより度数の大きいお酒だ

「今ジークスは何してるんだ?」

「う~ん、建設業だったかな~」

「そっか」

そのまま酔ったフレアを介抱して、ヤッた

フレアの性格についてはいろいろ知っている。

こいつはロマンのある、スリリングな男に無条件で惹かれるという特性を持っている。

たとえ自分が人妻だったとしてもだ

証拠はこの現状だ

朝になって、酔いがぬけても俺の胸板に頬を擦り付けてくる。

女というのは皆こうもちょろいのか?

いうわけないと思うが、一応俺が来ていることは言わないようにくぎを刺し、定期的にフレアと浮気デートをすることを約束した。

これで二年

最近エスラン東部では住宅強盗が相次いでいる。

そこで逮捕されるのは16歳から20歳の若い青年が大半で、ネット上のバイト募集から集めた青年に犯行をさせているようだ。

これは使える

早速エスランの防犯カメラにアクセスし、この住宅強盗について徹底的に調べた。

「これは..........なんとも馬鹿らしいな」

結果、強盗にあった家にはどれもマークが付けられていて、それをつけた人物もしっかりカメラに写っていた。

まると三角と四角、それとバツ印だ。

これにはある程度法則性があって、数字の次にこのマークが付けられている。


10  〇


これだと『10日に空いている』ということだろう

しかし、この家は18日の昼に強盗にあっている。

この事件が収束しないのは、もう一つ仕掛けがあるからだ。

家の北側の外壁に男が何か書き込んでいるのが防犯カメラに写っていた。

実際に強盗にあった家に訪れて、何かが書き込まれた場所にブルーライトを当ててみた。

「ビンゴ」

そこにはURLが書き込まれていた。

すぐさまURLを撮影し、家に帰ってから打ち込んだ。

出たのはこの国では違法とされているチャットアプリだった。

「これで指示を出しているんだな..........」

画面にはパスワードを打ち込むように促してくる。

そこで一度アプリをダウンロードしてから閉じた。

次はこれをどうにかして利用することだ。

指示グループはこのチャットアプリから強盗の指示を出しているに違いない

ということで、サイトに不正ログインした後、支持者とみられる男と接触した。

そうしたら、このアカウントを複製する。

この国では対応していないアプリケーションだったので、多少時間はかかってしまったが、それでも丸一日で済んだのはよかった。

仕事選びは大正解だな

次にどうやって実行犯をおびき寄せるかだが..........

まだ時間はある、

今すぐじゃなくてもいいだろう

次の休日に銃の練習をしよう。

明後日ほどには注文していたモノが届くだろう。





さて、応募を開始しよう

まず複数のアルバイト求人サイトに求人を複数出した。

目標は三人

こんな怪しさ満点のサイトに三人も応募してくれるなら万々歳だろう。

次にジークスの日々のルートを割り出し、偶然を装って遭遇する。

フレアから話を聞くことも出き、一週間のおおざっぱなルーティンは割り出せた。

割り出してから二日後、バイトの応募期間が終了したとの通知を受けた。

応募したのは三人..........

『来週、バラディラ南、S8番地のメモを見つけろ』

応募してくれた三人にメールを送る。

この住所は今、俺がメールを打っている場所

つまり俺の家だ。

一度様子見として俺の家で空き巣の練習をしてもらう。

一回目より、二回目のほうが慣れが生じて恐怖心がなくなるからだ。

『10月9日23時窓を割って入れ』

指示グループの変身を模倣したものなので、違和感はないだろう。

そして9日の深夜、窓ガラスが割れ、金品が盗まれた。

仮実験は成功だ。

盗難品は一度回収してから、少し多めの報酬を彼らに支払う。

これで準備は整った。

彼らにメールを送る。

そしてジークスがよく訪れるスーパーに入り、偶然を装って再開する。

それから家で飲むことに

そうして二人で酒を入れて昔の思い出や、お互いの現状についていろいろ話し込んでしまった。

が、それでいい

ジークスは机に突っ伏して寝ている。

幸せそうに寝息を立てながら

俺はジークスを椅子に縛り付け、覆面を被る。


パリン


二階の窓ガラスだ

彼らが来たのだ。

定刻より少し遅れているが、まぁいいだろう

彼らと合流し、金品のある場所を伝える。

三人は一目散に向かった。

俺はジークスを強く叩く。

椅子が倒れて、その衝撃で目を覚ます。

「おい!なんだよこれ、誰だよ!」

今こいつは、激しく混乱しているだろう。

「強盗だ」

「んだと!」

手足を縛られているというのにじたばたと身じろぐ

そして携帯を取り出し、一本の動画を彼の顔近くに置く

憤怒の表情はみるみる絶望に変わっていく

「..........」

口があいたまま涙を流している。

これが本物の絶望だ

あぁ久しく満たされているよ

そして最後に、

「..........は?」

覆面を脱ぎ、銃口をこめかみに突き立てる

ジークスの断末魔は夜中のこの町に似合っておらず、すぐに人が集まってきた。

覆面と銃を懐に隠したまま、肩で窓をたたき割る。

そして勢いそのままに助けを求めた。

なかの三人はうまく逃げ切れるだろう

あとからやってきた警察には、

ジークスとは昔からの親友で、久しぶりに会ったのでお互い酒を飲んで寝ていたが、強盗に入られて、俺だけ逃げ出すことができた。

とか、そこら辺の説明をした。

適当だろ?

その時の俺はドーパミンがすごかったんだ

許してほしいな

それにしてもあの顔は写真に残しておくべきだったな

いい絶望だ

あと10年は奪った幸せに浸って生きるとしようか












あー

笑った

何度思い返しても最高だ

フレアは簡単に俺に堕ちたし、子供も生まれた

あ、ここダブルミーニングね

事件当時は俺を疑う声もあったが、何とか乗り切った。

ITじゃなくて俳優の道でもよかったのかもしれないな。

「それで何の用かな?」

柱の後ろに見えたのは義理の息子、つまりフレアとジークスとの子供

俺とフレアが結婚した時に、進学がなんだとか言って、地方に行ったんだったっけ?

「お父さんを殺したのはお前か」

「..........はぁ」

なんだ、そんなことか

左手には銃が握られている

「もしそうだと言ったら?」

ゆっくりではあるが、確実に俺に近づき、銃口を向ける。

「殺す、絶対に」

「説得力がないな、手が震えてる、俺がジークスを殺したときは震えなかったのになぁ?」

「!」

「いいよ、俺を殺すといい」

銃口を胸に当てる

「だが、それでお前は俺と同様だぜ?」

「どういうことだ」

「俺もお前も、家族からパパを奪った、かけがえのない家族を奪った一生恨まれる存在になってしまうんだぞ?それでもいいなら殺すといい」

俺は天井を向き、大声で叫んだ

「正真正銘、最後の勝負だ!」

「こいつは俺を殺すのか!YESかNO!!」

そうして俺は持ち合わせた財布を叩きつけた。

「俺はNOだ」

すると奥の岩石がひとりでに動き出し、YESで止まった。

「そう来なくちゃ面白くない!さぁ!」



「「コール!!!!!!」」




「早くしろよ」

3分経っても何もアクションを起こさなかった。

「この勝負、俺の勝ちだな」

握られた銃を奪い、両手に二発ずつ打ち込んだ。

男はじめんにうずくまり、何か悶えながら言っている。

最後の最後にしらけることしてくれるぜ

何がともあれ、勝負に勝ったのは俺だ

しばらくは、この幸せを謳歌しよう

あぁ、俺は幸せだぞ

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